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お狐様、まかりとおる!! ~転生妖狐の異世界漫遊記~  作者: 九巻はるか
第1章 大森海の世界樹とお狐様
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その5 お狐様、リアルロリババアもイケると確信する!

わらわは生命の根源・世界樹のアティラじゃ。この世界で一番大きく、そして一番古い生命じゃな。御年、2億4千万年とんで6歳じゃ。この姿は……まあ、妾の化身といったところかの」


 推定6歳の幼女改め、自称2億4千万年とんで6歳のロリババア、世界樹のアティラが尊大に言った。そんなアティラを見て、


 ……図体は小さいくせに態度は大きいようだ。いやむしろ、体が小さいからこそ虚勢を張って態度が大きいのか!


 などと舐めた考察する伊織だった。

 どうやらアティラの正体が天を突くような大樹であることは既に忘れているらしい。


「あ。僕……じゃなかった、私は伊織です。よろしく……って、一番古いって事はやっぱりロリババアじゃないですか!」


 空気を読めない伊織が吼えた。ロリなババアに過敏に反応したのだ。なぜなら伊織にはロリなババアにトラウマがあったからだ(嫌いとは言っていない。むしろ大好物であるし、百合もイケる)。

 なお、その理由ワケは語れば長くなるが長い割にたいした理由では無かったりするのでここでは割愛だ。


「んむ? 汝の言うてる意味が良くわからんのじゃが……」

「コン! ロリババアがわからないなんてあり得ない! はっ! もしや言葉が通じていない!?」


 伊織は頭を大げさに抱えた。ロリババアをごく一般的な用語だと思っていたのだ。否、思っていたかったのだ。これはあくまで市民権を得た言葉だと。

 一方、アティラは伊織の謎の勢いに軽くヒキながら答えた。


「いや、明らかに通じていると思うが……」

「うん、まあ通じていますよね。ロリババア以外は」

「なら何故確認した!?」

「ここってもしかして日本だったりします?」

「汝、よくマイペースだと言われるじゃろ? ここは大森海と呼ばれている森じゃ。ニホン? とやらはとんと聞いたことが無いのう」

「そうですかー。やっぱり異世界ですかー。ううむ、じゃあなんでだろう?」


 伊織は首を傾げた。ロリババアのアティラと普通に会話出来ていることを疑問に思ったのだ。すると、アティラがさも当然かのように言い放った。


「そもそも言葉なんて世界トリニスティニアに一つしかないじゃろうが。ああ、もしや方言とやらか? 地方によっては同じものでも呼び名が違ったりするらしいからのう」

「方言ではないですよー。ああ、そうか、ここってバベルの塔現存世界だったのかー(棒)」

「バベル? まあ、ようわからんが多分そういうことじゃ」


 なるほど。多少の方言はあるが基本言語が一つしかないから、自分は日本語を話しているつもりでも自動的にこの世界の言語に変換されているのだろうと一人納得の伊織であった。

 まったく、通訳業者もあがったりな世界である。ご都合主義も甚だしい。


「で、このお家はアティラさんが住むお家なんですか?」

「妾が住む家では無いな。妾の中じゃしのう」

「コン! そうだった! むしろ大家さんだった!」


 伊織、安定の鳥頭ぶりである。だが、そんなことでめげる伊織では無い。すぐに立ち直り、怪しい言葉遣いと揉み手でアティラに擦り寄った。


「今、誰か住んでいます? ますます?」

「いや。今は無人じゃ。誰も住んでおらん」


 伊織はしめしめとほくそ笑んだ。誰も住んでいないのなら障害は何も無い。目の前のロリババアを丸め込めば今日からここが自分の家だ。


「実は私、記憶も行くところも無くて困っていたんです。ここに住まわせて貰ってもいいですか?」


 伊織はいかにも困っている風を装ってお願いした。するとアティラは伊織の体を上から下までなめ回すように凝視したかと思うと、急に何かに耐えるようにうずうずしだした。

 そして、何を思ったかいきなり奇声をあげて伊織のふさふさした尾に飛びついた。


「うおーっ! もふもふっ! もふもふじゃ! たまらんのう!」


 尾に顔を埋め一心不乱にモフりだすアティラ。

 一方。伊織はと言うと、アティラの突然の行動に全く反応できず硬直したまま尾をなで回され、


「ひゃあっ! くすぐったい! ちょっ! ぅあっ! やめて下さぃぃぃぃ!」


 と、ただ未知なる感覚に襲われ悶絶するばかりであった。


「嫌よ嫌よも好きのうちよのう!」

「それってセクハラする側の論理ですからっ! って、あぁあぁぁぁぅぅぅーーーー! ひゃあぁぁぁぁぁ!!」


そうしてアティラが満足するまで延々とモフられ続ける伊織だった。



――――――――――――――――――――――――――



「うう、ロリババアに穢された……」


 伊織は横座りのまま、よよよと泣く真似をしながら怨みがましい視線をアティラに向けた。

 一方、アティラはかんばせを上気させ、尾の感触の余韻に満足そうに浸っており完全に伊織の言葉や視線なぞ何処吹く風の勢いだ。

 そんなアティラを見て追求を諦めた伊織は溜息を一つついたあと、さっと乱れた衣服を正し、当初の目的を達成するべく再び口を開いた。


「お願いです。どうかここに住まわせて下さい」


 そう言って頭を下げる伊織。アティラは小首を少し傾げ何か考えを巡らしながら「……しっぽ……まな……し放題……」と胡乱なセリフをぶつぶつと呟きつつちろり舌舐めずり。


「何も遠慮はいらん。今日からここが汝の住処じゃ!」


 と、満面の笑みを浮かべ伊織の願いを快諾した。


「……ここは蟻地獄だったんだ……。憐れな私はこのロリババアに好きなように穢されて飽きたら捨てられるんだ……オワタ人生……」


 アティラの不可解な行動の意味を悟った伊織は身を両腕でぎゅっと抱き、諦めたような口ぶりで己の行く末を哀れんだ。

 するとアティラは慌てて伊織の言葉を否定する。


「な、何を勘違いしているか分からんが、一連の行動は汝のマナの量を見ただけで他意など無い! 本当じゃ!」

「……本当に?」

「本当に本当! なにせ、ここは住んでいるだけで体内のマナを消費するでのう!」

「信じて良いんですね?」

「もちのろんじゃ! いやー、妾も一人は寂しかったから汝が来てくれて助かったわい!」


 あははと白々しい笑い声を上げるアティラをしばらく半眼で見咎めていた伊織だったが、他に宛があるわけでは無い。深い森で彷徨うよりはましかと自身を納得させ頭を下げた。


「ふつつかものですが、どうかよろしくお願いします」

「うむ! 妾のことをアティと呼ぶことを特別に許してやろう! それにこれからは好誼の証しにじっくりねっとりかわいがってやるから安心せよ♪ デュフフフフ……」


 全く安心できない伊織だった。



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