生徒会室
昨日更新できず。書くの難しいですね。
行き当たりばったりだけどうまくかけてるかな
橘に連れられ着いた部屋のプレートには、生徒会室と書いてあった。
俺は中学生の頃を思い出していた。なにを隠そうこの俺は、クラス委員と一、二を争うほど人気のない役職である生徒会役員だったのだ。自ら立候補した…わけではなく、じゃんけんで負けたからだが。
それからは生徒会の仕事とは別の面倒くさい仕事までなぜかクラス委員そっちのけで「よろしく生徒会!」と押し付けられることも多く、パシリのようで思えば辛い日々だった。もし高校でも生徒会役員になっていたら…と思うとなぜか笑いがこみあげてきた。
「着いたよ!ってどうして笑ってるの、なにかいいことあった?」
「あははは!生徒会役員の仕事楽しみだなー!」
今の俺には怖いものなんてないぞ、生徒会でもなんでもかかってきやがれ。
「なんか気持ち悪いし、多分また勘違いしてるよ?」
橘は少し引いてるようだった。そんな目で俺を見ないでくれ、泣きたくなる。というか勘違い?なんのことだ。
「なんのことだ?お前が女なのはもうわかってるぞ」
「いやそっちじゃなくてさ、葵クンは生徒会役員じゃないよ?」
「え、そうなの?」
「うん」
俺の早とちりだったようだ。ともあれ高校入学初日から憂鬱にはならなくてすみそうだ。安心したところで、ついでに俺の委員会も聞いておこう。
「じゃあ俺は何委員なんだ?」
「ボクと二人でクラス委員だよ!頑張ろうね」
「ええ…」
大して変わらなかった。生徒会よりは楽そうだが、友達のいない俺に果たしてクラスをまとめることが出来るだろうか、そして仕事をきちんとこなせるだろうかと不安の種は尽きない。まあいざとなれば橘に仕事を押し付けることにしよう。などとゲスな考えが頭に浮かんできたところで、俺のすぐ後ろから女の子の声がした。
「あの、そこに立っていられると邪魔なのです!」
振り返るとそこには茶色がかった髪を耳の上あたりで編み込み、幼いながらもどこか凛とした雰囲気を醸し出す幼女がムスッとした顔で立っていた。なぜこんなところに可愛らしい幼女が?と思いつつも紳士な俺は優しく声をかける。
「君、こんなところでどうしたの?迷ったとか?」
制服のことには触れないでおく。おそらく姉が学校に在籍していて、予備などを着てきたに違いない。しかしまだ小さいだろうに茶髪に髪を染めているなんて、大人に憧れているのかな?子供らしい可愛さというのもあるのに。それにしても可愛いな。
「違うのです。…今なにか失礼なこと考えてたです?」
どうやらこの子は俺の心が読めるようだ。俺は断じてロリコンではないが、ロリも悪くないなと思えるほど可愛いほうが悪い。
幼女に視線を合わせるように少し屈み、再び問う。
「考えてないよ、それで、誰か探してたりするの?」
「そういうわけでもないのです!とりあえず早くどくのです」
「人探しでもない?となると落とし物拾ったとか?」
「…どくのですー!」
「わ、わかったよ、ほら」
ぷりぷりした顔の幼女は可愛かった。しかし俺の予想はどれも違ったようで、幼女のものとは思えないほどのプレッシャーに気圧されて道をあける。このプレッシャーはなんだ?!
幼女が生徒会室に入ろうとしたところで、橘が声をかけた。
「唯姉、無視しないでよ~!」
「迷子とか色々言われてる私を見て笑ってるのが悪いのです!」
確かに俺がこの幼女に話しかけているとき橘は会話に参加してこなかった。姉だったのか。誰が?この幼女がだ!
「この幼女、本当に橘のお姉さんなのか?」
「幼女とはなんですかー!私は橘唯という名前がありますし、三年だから先輩なのですよー!」
「すっすみません!てっきり子供かと思ってしまって…」
「まあまあ唯姉、許してあげてよ。知らなかったら誰でも同じように間違えるって」
「間違えられるこっちの身にもなってほしいのです…」
そう言いため息をつくと、彼女は生徒会室に入った。続いて部屋に入りながら橘に少し小声で話しかける。
「橘のお姉さんも生徒会室に用があったのか。もしかして役員なのか?大変だろうなー」
「そういえば言ってなかったね!唯姉は生徒会長なんだよ」
「…は?」
「あと麻雀部唯一の部員で、部長だよ」
「はあぁ?!」
驚きの連続コンボだ。生徒会長といえば校内の生徒のトップのようなものである。それをあんなに小さい人に…いや身長はどうでもいいな。そういえば入学式のときのしっかりとした進行は生徒会長だったはずだ。姿が見えないので舞台袖にでもいるのかと思っていたが、小さくて見えなかっただけかと変に納得してしまった。
おまけに麻雀部の部員?部長?橘だけでなく橘さんも麻雀をするのか。橘家では麻雀が家族内で浸透していたりするのかな。
橘の言っていたことは本当らしく、橘さんは〈会長〉と書かれた札の置かれた席に座った。橘が扉を閉め、橘さんに話しかけた。
「唯姉、入学おめでとうとか言ってもいいんだよ?」
「朝も言ったのですよ…それで、そこの失礼な人は誰なのです?」
うっ、失礼な人か…確かに見た目だけで人を判断してしまった。目の前で幼女呼ばわりまでしてしまったのだし、言い逃れはできない。
「うん、彼は片桐葵クン。麻雀部に入部したいんだって!だからボクと二人分、入部届け受け取ってくれる?」
初耳である。適当に麻雀に興味があると言っただけなんだが、ツケを払うときがきたようだ。それにしても入部届けだと?
「おい橘、入部届けなんて俺書いてないし、入るつもりもないんだが」
すると橘は待ってましたとばかりにこちらを向き口を開いた。
「今ここにはボクと唯姉がいるから橘だけじゃどっちが呼ばれたのかわかんないでしょ?だから、これからはボクのことは楓って呼んでね」
してやられた。入部届け云々はこの話に持っていくための餌にすぎなかったようだ。確かに橘という言葉が頭の中でこんがらがりそうですでに若干面倒くさかった。が、入学初日から女の子を名前呼びするのはそれ以上にこっ恥ずかしいので遠慮したいところである。周りからチャラ男と思われても仕方がないし、そうなると友達ができないビジョンしか見えない。
ただこの名前呼びを拒否することも出来ない。橘の策士っぷりからして、俺が折れるまであの手この手で麻雀部に入部させようとしてくるだろう。いつまでもつきまとわれるよりは要求はすんなり呑んでしまうのも一つの手か?
「結局なんなのですか…」
考えていたら橘さんが胡乱気な目でこちらを見ていた。橘さんからしたら面倒くさいことこのうえないよな。入学式の進行をやり、後片づけもあっただろうし疲れているのか若干眠たげに目をこすっている。どうでもいいから早く話を終わらせてくれとでも思っているに違いない。
「わかったよ。これからは楓って呼べばいいんだろ」
「うん!唯姉のことも唯でいいからね?」
「え、いやそれはさすがに…」
「私は構わないのです。楓のお友達みたいですし、さっきの失礼なことも忘れてあげるのです」
「えっはい、ありがとうございます…?」
同級生だけではなく先輩、それも生徒会長を名前で呼ぶことになってしまった。今後も会う関係でなければ名前で呼ぶ必要はないはずなんだが、もしかしなくてもこれって入部することになっているような。
「じゃあこれ入部届けなのです。ハンコは押してあるので名前とか必要事項を記入するのです」
俺もエスパーなのかもしれん。この人の考えていることがわかる、わかるぞ!
しかしこれはまずい。楓だけでなく唯にまで…いややっぱり敬称はつけよう。唯さんにまで入部を勧められると断れる気がしない。知っているかもしれないが俺は今日で女性にはめっぽう弱くなったのだ。とにかくここは「迷惑かけちゃうし」とかネガティブな感じで切り抜けよう。
「俺麻雀とかやったことないですしルールも知らないんですよ。楓はいいんですが唯さんにも負担かけちゃうかもしr」
「その点は問題ないのです!」
「いやホント、上手くなる気もしないし不安n」
「大丈夫だよ!」
二人が食い気味にグイグイくる。なんだなんだなんなんだ。そこまでして俺を部に入れたいのはなぜなんだ。
「さっきも言ったけど、今麻雀部に所属してるのは唯姉だけなんだよね。新入部員がたくさん入るならそれに越したことはないんだけど」
「入るかもしれないじゃん、入学式の挨拶でも第一声があれだったし、声かけられることもあるだろ。あと心読むな」
「読んでないよ!…それがさ、ボク今日誰にも話しかけられなかったんだよね」
「だからって俺に執着されても。楓から誰かに話しかければいいだけの話だろ」
「それはそうなんだけどさ…」
いける。この調子なら断れるぞ!と調子に乗り始めたところで
「…入ってくれないんです?」
といつのまにかこちらに近づいていた唯さんに上目遣いでお願いされてしまった。
「少しやってみて、ダメだったら辞めてもいいのです。だから入ってもらえないです?」
「ボクからも改めてお願い。絶対楽しんでもらえるようにボク達も頑張るから!」
これはズルいだろ。断れない。こんな可愛い&美人な二人にお願いされてしまったらもう無理だ。諦めて入部するしかないか…と思ったとときであった。
「麻雀部の部長さんいらっしゃいますか?生徒会長さんだと聞いてきたのですが」
控えめなノックとともにそう言いつつ部屋に入ってきたのは、姫守苺だった。
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読んでくださりありがとうございました!