period 14
「俺達が今から挑むのは、初めてのレイドボスだ! βテストを初めての3週間と少し、漸くグランドクエストの第一章が終わる! 皆、行くぞぉー!」
俺達を集めたレイドパーティーのリーダー、ユラマが声を張り上げる。
俺達は今レイドバトルの開始地点にいる。
βテストが始まってゲーム内時間で大体7週間、詰まり1ヶ月と半分たった。
俺も少なからず貢献したグランドクエストの情報集めにキークエスト解放等を見つけるまでに時間がかかり、第一章のストーリの最後、ここまで来るのには他のプレイヤーも予想し得なかったほど時間が消費された。
最初のキークエスト、障気溜まり発生から始まり上位魔物の魔族化、巫女の誕生と神託、そして最後の障気の渦の発生と魔王誕生。
ここまで来るのには沢山のプレイヤーと交流し、立ち上げたクランに人を誘い、自らのレベルと技術を磨いてきた。
そして、遂に第一章の最終話の開始を告げる扉の音が鳴り響いた。
『『『『ウオォォォー!』』』』
連合を組んだ4つのクランが一斉に動き出す!
ここでレイドに参加しているクランの紹介をしておこう。
まず1つ目、レイドのリーダーがマスターの『魔法騎士団』
総勢300人ほどの大規模クランでゲーム内序列2位のクランだ。
そして二つ目は攻撃魔法に特化したメンバー構成の『魔術結社』
100人ほどの中規模クランだがその火力は侮れないことになっている。火力バカの巣窟。ハルカも此処に勧誘されたことがあるがハルカ1人で幹部6人を蹂躙していた記憶がある。
ゲーム内序列は4位だったはずだ。
三つ目は回復メインの『巡る神の癒し』
は加入条件に治療系のスキル持ちと言うのが入っているクランで下位プレイヤーの支援もしている通称お助けクランだ。
構成人数は大体200人と結構大きいクランでゲーム内序列は3位。
そしてゲーム内序列一位でこのレイドの4番目のクランが俺達が設立した『頂天(the highest)』
構成人数50人にして最強のクランだ。
俺とハルカとアンナを抜いても他の2人の幹部が居れば3つのクランに張り合える程度には強い下位メンバー。
この4つのクランで第一章、クリアを目指す!
レイドエリアの最奥に待ち構える魔王を倒すため、入った先で待ち構えていたのは一体の赤黒い1体のバーンドミノタウロスとミノタウロス、ケンタウロス、スレイプニル等の魔物の大群だった。
『魔法騎士団は前に出て盾を構えろ! 1体足りとも後ろへ抜かせるな! ヒールやバフが使えるなら仲間にもかけてやれ!
デッドリーオーガロードの攻撃はスイッチを使って凌いでくれ!
魔術結社は後ろからMPを切らさない程度に攻撃だ。この後もあることを忘れるなよ!?』
レイドの参謀役、我らがオルトメアが指示を出す。
俺達の役割は遊撃、巡る神の癒しは回復を担当で各自臨機応変にと言う指示が出ている。
と言う俺らはもう好きにやって来れと諦められてた。
まぁ俺らが指示道理に動くわけがないしな!
『しっ!』
スキル[影縫い]や[暗殺]、[忍術][短刀二刀流]などを駆使して俺は次々に魔物を屠って行く。ここでMP消費の多いスキルはなるべく使用は控える。
『らあっ! ふっ!』
首や眉間に鋭い投げナイフを食らったミノタウロスどもが一撃で体をポリゴンへンに変える。
『流石オウヤだね! 私も負けないよっ!
其全てを凪払う嵐也、其雷で敵を焼く! サンダーストーム!』
風魔法の上位スキルの特殊進化で手に入れた雷魔法を使ってハルカが魔物の群れに甚大な被害を与える。
『お前の方が火力高いだろ!? 欲張んなよ!』
『ぶーぶー! そんなことないよ、オウヤ大体一撃で倒しちゃうじゃん!』
確かに称号やらスキルやらでクリティカルのダメージ倍率や即死の確率が上がってるからそうなんだが……
その間にもアンナが[双剣]、[属性剣]、[疾風][魔眼]を使って辛うじて HPが残った魔物や襲いかかってくる魔物を切り刻んでいく。
『ちょっ! オウヤさんもハルカさんもアンナさんも殺りすぎだって! 僕達の分も残しといて下さいよ!?』
俺達に大半を持っていかれて慌てて残りの魔物を倒していくクランの下位メンバー諸々……
『はっ! 遅れる方が悪いな!』
『くっ……昇華三柱の3人に付いてけって方が無理あるんだよっ!』
『ならここまで上がってこい! よし、アンナ、ハルカ、あのデカ物のとこ行こうぜ?』
『『勿論!』』
デッドリーオーガロードも俺のバックアタックと影縫い、アンナの神速、縮地を使った双剣と部位破壊、ハルカのバ火力魔法による援護で一気に優勢になり大体20分ほどで片付いた。
魔物の軍勢とデッドリーオーガロードは1体残らずHPを消し飛ばされた。
そしてそれらのドロップしたアイテムの確認も早々に俺達はエリアをどんどん進んでいく。
◇
『レベルが上がった人はポイントは振ったか!?』
おうっ!
『アイテム整理、確認はできたか!?』
勿論!
『次が最後だ! 油断しないで行くぞ。それじゃあ、全員進めぇ!』
おおぉぉぉ!
ユラマの合図にレイドメンバーが叫び返し、魔王の待つ障気溜まりがあるエリアへ突っ込む!
『オルトメアさんの指示って確か俺達は最初雑魚の掃討ですよね? 何れくらい居るんでしょうかね……』
『なんでだ? ムートラン、んなもん数百でも数千でも殺し尽くせば良いだろ?』
もう一人の幹部が俺たちのもとに来て笑える質問をして来たのでそう答える。
全く、全部倒さなきゃいけないのには変わりはねぇのに……お前は罠師何だから早く罠を張ってこい!
『はいはい、それじゃあ行ってきますよ~』
『おう、こっちは確り殲滅しとく。だからお前は罠で魔物の動きを制限しろ』
『はぁ……簡単にいってくれますね。それじゃあ頑張っちゃいますか……!』
内心小躍りしそうなのを隠しながらムートランが歩いていく。
さぁ、こっちも始めるぞ!
「グルアァァー!」
一際強いオーラを放っている魔物……あれはドラゴン種だな。
『おい、あれはレッドクリスタルドレイクだ! 火抵抗が120%だ。火系統の魔法を吸収してHPを回復するから魔法使いは注意しろ!』
狩人眼と鑑定を使い得た情報をレイド全体に通達する!
行動のアドバイスを出したらそこで俺の仕事は終わり。この距離で鑑定ができるのはここにいるメンバーでは俺しかいないからな。
『戦いの指揮、オウヤさんが執れば良いと思うんだ、俺……』
『奇遇だね、オルトメア。俺も同じ様なこと考えてた……』
リーダーと参謀が呟いてるけど無視だ無視! 戦術とか指揮とかずっとやってると疲れるんだよな。
指示を出すだけ出したら俺達は雑魚の掃討に走り出す。
既にあと百メートルほどまで迫ってきている魔物達、鷹の目で確認した限り1000は下らないな。
楽しくなってきたな! 早く終わらせて龍の方の援護に行かないといけないしな!
『はあっ!』
『いけっ!』
『えいっ!』
『うおおぉぉぉ!』
そして俺達は魔王の軍勢と衝突した。