表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
letter to you  作者: そうな
本編
7/11

これは悲恋の恋愛小説ではないはずなのに

急展開…?

サブタイトルは決して作者の心情ではありません……!(?)


「元也っ!?」

 酷く狼狽した声が聞こえる。

 声を出せずにいると、焦った様子の章は突然俺を抱きしめてきた。

 小さい頃と同じように、頭を撫でてくる。

 多分、章もパニックなんだろうな、と泣きながらぼんやりと思った。こんなに迷惑をかけているのに、俺のことを考えるなんて。


「章…どおしてぇ?」

 もう、訳がわからなくて焦った顔をしている章の顔を見た。

 まるで子どもに戻ったみたいに泣きじゃくっていた。

 もう、自分が何を言おうとしているのか分からない。


「あきらぁ…」

「元也、大丈夫だから落ち着け!」

「ちがうぅ!なんで近づかないっていうのぉ…!」

 喚いて、俺が叩いてもびくともしない胸をそれでも叩いた。

 ぎゅっと服のすそを掴むと、白川の香水の匂いがした。

 あの綺麗な女も、章にこうやって抱きしめられたの?

「元也……」

「ぅう…なんでぇっ!

 章の近くにいたかったの!あたま、わるくてもっ…いたかったのぉっ」

 自分が危険なことを言っているのは頭の片隅で理解していた。

 止めなきゃ。

 だけどやめたくない。

 やめたら、こんな気持ちは一生外には出せないだろうから。

 片思い。初恋。淡いものだという初恋は、不思議なくらいに思い出に残るというから。

 思いを伝えられないままじゃ、きっとこれから先章のそばにはいられない。こんな苦しい気持ちのままじゃ。

「元也…ごめんな」

「どぉして謝るの…?」

 謝られたことが悲しくて章をじっと見つめると、章はなぜかとても切なそうな顔をした。

 笑ってほしい。俺が最初に惚れたのは、章の笑顔だったから。

「気づかなかった。お前の気持ちにも、俺の気持ちにも」

「やなの…?俺が近くにいちゃ」

 俺の気持ちって何だろう、本心ではずっと離れてほしかったのかな。

 怖くてたまらない。

 そんな俺の気持ちを、章はしっかりと見抜いていた。

 優しい顔つきに戻って、俺を抱きしめなおしてくれる。


 そして、囁くように言った。


「お前の、泣いてる顔見るのは嫌だ。



 こんなに、お前に惚れてたなんて、気づかなかった」


 嘘、だろう?

 きっと冗談だ。すぐに「嘘だけどな」って付け足すに違いない。

「本当はこんなにお前に惚れてたのに、あんな…お前を傷つける奴と付き合ってたなんて最悪だな。

 …なぁ、もう、泣くなよ…」

 その声は酷く切なげだった。

 思いが、つながった。 純粋にそう思えるのに。思えるはずなのに。

 どうして、こんなに切なくなるんだろう。

 まるで、お互いに気持ちがすれ違い続ける、バッドエンドにちかい恋愛小説を読んでいる気分だ。


 その恋愛小説は、きっと結ばれない。


「あき、ら…?」

 不意に俺を引き剥がした章の顔が見えない。

 何を思っているんだろう。心臓がバクバクと鼓動を早める。

「こんな……お前を傷つけた奴が、お前を幸せにできるとは思えないんだ…」

 切ない声が、そんな台詞をのせて俺の耳に届く。

 離れてしまうの?嫌だっていったでしょ?

 離れてしまうといったから、俺は泣いているんでしょう?



「うそだぁっ!!!」


 気づけば、そう叫んでいた。

 目を見開いている章は、それでもやっぱり何かをこらえているような顔つきで首を横に振った。

「うそだよ…!

 章は、そうやって逃げるの?」

 俺は今、とても好きな人を傷つけているんだろう。

 だって、見たことが無いくらいに悲しそうな顔をしている。

 きっと、今日一日のことを章は、俺たちは忘れられないだろうな。

「お前に…幸せになってほしい」

「幸せ?

 俺は…章がいてくれればそれでいいのに?」

 思いが届かなくても良かった。

 章が仮に白川と思いを遂げて結婚していたとしても近くで「幼馴染」としていられれば満足できた。

「俺はっ!お前を傷つけたんだ…!」

「うん。俺が「そうじゃない、章は悪くない」って言っても章は頷かないでしょう?だけど…だけど、そうなら離れた方がいいなんて思わないでよ!俺の…気持ち、馬鹿にすんな……!」

 最後の方は、もうほとんど泣き声のようなものだった。 

「元也…俺で、いいのか?」

 どうして、ここまで言っても尚不安そうに俺に尋ねてくるのだろう?

 俺は章をにらみつけた。

「このばかっ!普通は『責任持って幸せにしてやるよ』で終わらせろよ!」

 その言葉に、章はまた目を見開いて、それから今度は笑った。

 あぁ、俺の好きな不敵な笑顔だ。



「元也…お前を傷つけた罪は俺にもある。

 だから


 責任持って幸せにしてやるよ」


「……うん」


 これは、悲恋の恋愛小説とは違うから。

 だから、こんな結ばれ方でもいいだろうか。


 傷のなめあい。

 罪の意識とそれを利用した束縛。

 どんな言われ方をしてもいいんだ。結ばれるなら。

 俺たちがいつか幸せになれるなら。

お読みくださりありがとうございました。

よろしければご意見・ご感想等およせください。


2000字越えませんでした…というか超展開ですね。

まだ完結じゃないですー。いじめの顛末とかも書かねば。

風紀委員の先輩も名前を出してあげなければかわいそうでしょうし、色々とそちらのほうも考えています。

ただ、そろそろ完結間近というのは本当ですので、そこまでどうかお付き合いください^^


あと、18歳以上の方になりますが「Wings for」もよろしければごらんください。こちらは第一章完結しました^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ