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letter to you  作者: そうな
本編
4/11

倉庫に

今日から6日くらいで完結まで持って行きます!

もう一度更新するとしたら夜8時以降に更新するのでよろしければご確認ください^^

ちょっと不道徳描写(いじめ描写)入ります。

 何の前触れも見つけれらずにいじめが始まって二週間がたつ。

「学校…行きたくねぇ……」

 それでも行かなければあのおせっかいたちが家に押しかけてくるだろう。それだけは何とか避けたい。

 何より、一度休んでしまえばもうあそこに戻れる気がしない。

「ちょっと元也、大丈夫?

 最近顔色悪いわよ…?」

 母さんの心配したような表情に俺はいつもと同じ笑顔で「ちょっと疲れてるんだよ、テスト近いし!」と答えておく。

 俺は母さんと二人家族だから、母さんに迷惑は掛けたくないんだ。



 なんとか家から出ても、数歩歩けば気が重くなってくる。

 服装違反者チェックのために朝早くから門のところに立つということで河野はここ3日ほど一緒ではない。

 意識的にあのカップルからも遠ざかろうとしているからその二人とも登校時間は重ならない。

 こういうことを積み重ねれば、俺はあのいじめから抜け出せるのか…?



 それが甘い考えだと知ったのは、その日の6時間目のことだった。


「うそ、だろぉ……?」

 俺は体育の用具片づけを押し付けられるかたちで倉庫内にいた。埃っぽい倉庫にハードルなどを入れていると、後ろで物音がした。

 がちゃ、という音。それから、「さっさと行くぞ!」という声。


 閉められた。


 慌てて扉を開けようとしても外側からしか鍵がかからないからかびくともしない。だがそれだけじゃない。

「先生まで…?」

 ここは、数年前に不良の溜まり場になってタバコの火でボヤ騒ぎが起きて以来、先生しか鍵を扱えない。コピーできないタイプの鍵を使っているとも聞いた。

 いままで、先生は「誰もいないかー」といって必ず中を点検していた。それなのに今日は絶対にしていない。

「…忘れた、だけだよな……」

 体育教師には、実はそれとなく今起きていることを相談していた。だって一人で乗り切るには大きすぎる問題で、彼は生活指導の担当教師だから。

「かばんが、あるし…」

 気づいても、助けに来てくれるだろうか?

 チリ、と胸が痛くなる。きっとクラスの奴らは知らん振りするだろう。そしたら河野たちが迎えに来て…?

「無理、だ…」

 そうだ、今日は河野、委員会だから先に帰ってろって言ってた…。

「ちくしょー、なんであいつ風紀委員なんか…」

 思わず八つ当たりをしてしまう。

 章は、今日、あの可愛い彼女の誕生日だといっていた気がする。もしそれが本当だったら今日ばかりは一緒に帰ってるだろうし。

 誰も助けに来てくれない。

 そんな絶望が俺を取り巻いていく。



 バサバサッ


 大きなマットの裏で音がして、思わず「ひっ!」と言ってしまった。ビクつきながらそっと顔を覗かせてみる。

「え……」

 血の気が引く、とはこのことだろうか。

 高い位置にだが格子窓があった、ということに安堵を覚えるとかよりも先に、落とされてきた紙の内容にめまいがしてくる。

「なんだよ、これ…」

 それは、俺の個人情報をゲイ専用の出会い系サイトや怪しい掲示板に載せられているものを印刷したものだった。

 俺の顔写真に、反応している奴らの言葉、俺を騙っているやつの言葉、会話に吐き気すら催す。

 『マワそうよ』『ぜひお願いします!無理やり系好きだなぁ』

 『変態なの?』『ふふ、一度会ってみますか?ナニしてくれても僕嬉しいです』

 何がしたい?

 こんなことをして、メールアドレスまでのせて。

 迷惑メールが急増した理由が分かった。

「それに、これ…」

 この顔写真は、限られた奴しか持ってないはずのもの。

 その人物を思い浮かべて嫌な予感がしてくる。

「章…?河野…?」

 三人で遊んだときに撮った写真。

 章と河野しか持っていないはずの写真が、どうして載せられているんだろう。

 嫌な想像はさらに加速していく。

「おれ、迷惑…」

 その言葉が零れ落ちれば、それ以外に真実はない気すらしてしまう。なんの取りえもない俺が迷惑だったから、河野と章が仕掛けたいじめなんじゃないのか。盲目的に崇拝しているように見える俺のクラスの連中は、その指示に従っているんじゃないのか。

「俺、馬鹿だ……」

 なんで、いじめの理由が分かってもあの二人から離れなかったんだろう。離れていれば、よかったんだ。「あの二人に問い詰められたら面倒だし…」なんて思い込もうとしていた自分が馬鹿みたいだ。

 はなれていれば、俺は最初からいなかったものとしていじめられなくなっただろうに……。

 涙が、止まらなかった。この二週間、一度も泣かずにきたのに。

 それでも、流れる涙を止めることは出来なかった。




 どれくらい、時間が過ぎただろう?

 助けを求める声を上げる気がしなくてしばらく呆然としていたらもう日が暮れかかっている。

 母さんは心配するだろう。遅くに家に帰ったのに一人息子がどこにもいないなんてことになれば。

「あ、今日金曜じゃん…」

 明日は授業はない。なにより日曜が祝日だから来週の月曜は振り替え休日ではなかっただろうか。

 ということはこの倉庫を開けてもらえるのは火曜日か。

 絶望的に近い状況だとは分かっているのに、これ以上絶望する気がしないのはなぜだろう。

 あと数日は開かないのだろうと気づいた扉の方を見つめ、俺はしばらく座り込んでいた。

お読みくださりありがとうございました。

よろしければご意見・ご感想等お寄せください。

今回はぎりぎり2000字越え…次の話以降も2000字いくようにします。

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