始まった
急展開気味です、ごめんなさい!
文字数少ないです。明日以降も更新する予定なのでそちらのほうは2000字は越えられるように気をつけます
クラスの連中の様子がおかしい。
そのことに気づいてしまえば、そのあとはまるで斜面を滑り落ちる球のように加速していった。
それでも、急な加速はしなかったからだれも気づかなかったんだろう。
すぐに変わったことは、俺がクラスの誰とも話さなくなったこと、弁当を持っていかなくなったこと、あとは河野たちの視線がちょっと変わってきたことくらいだろうか。
だけどそれから暫くすれば他のクラスの一部の連中の視線も変わってきたような気がしていた。…きっと、被害妄想だ。
昼休み。俺はいつものように章と河野とともに昼食を食べていた。今日も何日めになるかわからないパン。最近は購買の常連になっている気がする。
「…なぁ」
河野の視線が俺のもつパンに突き刺さっている。
「なに?欲しいって言われてもやんねぇけど」
「んなこというか!
そうじゃなくて…なんでお前最近弁当じゃねぇの?」
横の章も厳しい視線で俺の方を見ている気がする。
…おかしい。気づかれてないはずなのに。
「いやー、面倒になっちゃって…」
「は?相変わらず夕飯はしっかり作ってんのにか?」
章がすぐさま言ってくる。こういうとき、近所に住んでいると迷惑だと思う。だって余ったら「おすそ分けしてきなさいよー」と母親に言われてしまうから。
母親は料理が素晴らしく下手だから俺が必然的に作っていることになってしまうのだ。
「…いや、その…パンの旨さに目覚めて」
「……なんだ、そのくだらない言い訳…」
くそっ、言い返しづらい。
一人焦っていると、河野はいつも調子よくへらへらと笑っている顔を真剣にしてまた口を開いた。
「な、お前のクラス最近様子変だし……やっぱなんかあったんじゃないのか?」
「あ?河野、それどういうことだ?」
ちょっと離れたクラスにいる章は俺のクラスの微妙な空気をやっぱり知らないらしい。それはそれで助かるけど。
内申目的(らしいけど本心は分からない)で風紀委員になったという河野はやっぱり「いじめ」防止のためとか言って色んなクラスに目を光らせている。
ばれないよな……?
不安になる心を押し隠して俺はパンを詰め込んだ。
「……」
やばい。これは異常だ。
俺は教室から少しの間離れたことを後悔していた。
目の前には、見るに耐えない罵詈雑言を書き連ねられたノートが散乱している。
「…あ」
その文字を見て少しだけ硬直する。…記憶の中に、この字体の人がいた気がしてしまう。
気のせいだ、と言い聞かせつつノートを拾っていると、近くで俺を覚めた目で見つめていた女子達の会話が耳に入ってきた。
「…ほんとに汚い」
「ねぇ、なんで崎野くんと河野君、あんな趣味悪い奴と一緒にいるんだろうねぇ」
「引き立て?」
「むしろそれ以外に用途ないでしょ」
…あぁ、確かに俺は章と河野のように美形なわけでも特別何か長所があるわけでもない。
それでも幼馴染だからって言う理由だけで今まで一緒にいたのに、それが不釣合いだったのか。それが気に入らないのか、女子達は。
「わけ、わかんね…」
ぐっと眉間に力を入れてノートを拾う作業だけに没頭した。
そうじゃなきゃ、涙が零れ落ちてしまう気がして。
何が、悪いんだろう。
別にあの日何かがあったわけじゃないだろう?
いきなり、みんなの様子が急変したのは一体なぜだ。俺はどこで対応を間違えた?
意味のない、ぐるぐるとした悩みが吐き気につながっていく。
「よしゅう…」
机の上に放り出した、落書きだらけの教科書を開く気がしない。
家でしっかりと勉強をしなければ俺は確実にこの学校でついていけないのに。
「も、いっかな…」
意味がなかった気がする。
だって、好きな奴には恋人がいるし、そいつの近くに居たらそれが気に入らない子たちもいるし。勉強にもついていけない。
悩みを打ち明けるのも難しい気がした。
俺は、訳がわからなくなって。家に帰ってからずっと、母親が鍵を開けて帰ってくるまで泣いていた。
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年内に本編完結を目指していますのでよろしければお付き合いください^^