登校に
こちらは年内で書き上げるつもりのお話です。
しょっぱなから頭の中の構想からかけ離れてくれました(笑)
もう一つの連載のほうもしっかりと更新するつもりですので、よろしければそちらのほうもお読みください^^
「おはよう」
それだけが書かれたメールを見て、俺は思わず笑っていた。
後ろを振り返れば、メガネを掛けた背の高い黒い髪をした彼がいるのだろう。
それでも振り返れはしなかったから俺もメールを打った。
「おはよう、章」
俺は章のことが好きだ。それは高校に入る前に気がついた。
『どうして実力よりもかなり高い高校を目指したんだ?』
と、俺を嫌っていた担任は不思議そうに言っていた。…そう、俺は実力よりも偏差値がかなり高い高校を目指して勉強漬けの日々を送った。おかげで、体を壊して卒業式直前まで休んだくらい。
でも、その理由は悟られるわけにはいかなかった。
男が男を好きになるのは……いけないこと。恥ずかしいこと。
そう、思っていたから。
ううん。俺は男同士の恋愛に何か偏見を持っているわけじゃない。それでもマイノリティーに属しているという自覚はあるわけで。
実は、俺の通っていた中学校にはゲイの男の子がいたんだ。彼は、自分がゲイだと周りに知られても下を向いたりはしなかったけど。だけど周りが豹変した。俺はその様子を良く覚えている。
昨日まで、笑いあっていたはずの彼らがもう「他人ですから」って顔をして背中を向けている場面を見て、「男を好きになったら駄目なんだ」と思った。
それでも幼馴染の章をいつからか『特別』カテゴリに入れていたのは、時の流れのせいもあるけど止められなかった。
「うーっす」
「おはよ、河野。」
途中で会ったもう一人の幼馴染が、俺を見て声をかけてくる。返事をした俺の横に並び、
「なぁ元也、お前と章いつになったら仲直りすんの?」
と聞いてくる。こいつは、俺と章が不自然な距離を持って登校しつづけるのを喧嘩したせいだと思い込んでいる。…ま、そっちのほうがありがたいけど。
「んー?でも俺と章が仲直りしたところで一緒に登校する訳じゃねえし」
「ほぼ一緒じゃねえか」
「…でもさ、章は……」
そう言った所で、通り過ぎた所の家の扉が開いてうちの学校の女子生徒が飛び出してくる。
後ろで、ゆっくりと章が止まった気配がした。
「…ま、カップルの中に入るのは俺もきついからわかるけどさ…」
河野は苦笑いしている。俺もちょっとだけ笑ってる振りをしながら、ちくりと痛んだ胸を無視する。
章は、その高いルックスに相応しい学年一の美少女と付き合っている。それも中学のときから。
それでも中学の間は俺も一緒に登校してたけど、高校はいってからはあいつは彼女と登校するようになってしまったから本当に一緒にならない。
そして、俺の気持ちはそのうち消える。
いや、消さなきゃならない。
「だろ?あんなリア充な雰囲気してやがる野郎に近づくかっつーの」
「……おい、ガチであいつら倦怠期こねぇかな朝から…」
こっそり囁かれたことの意味を理解して、思わず足が止まる。
すると後ろのカップルが一瞬動きを止めた気がする。
それでも振り返るわけにはいかなくて、俺は急いで河野の背中を押した。
「やべっ、今日俺日直!」
「はっ!?マジかよ」
河野は単純だからか騙されてくれて慌てて走り出してくれた。
後ろで、カップルが何をシてるのか知りたくなくて。
「急げーっ!!!」
なんてふざけてる振りをしながら走り出した。
いつもどおりの朝。
いつもどおりに痛い胸。この痛みが消える日が来ることはあるのだろうか。
「おい、元也、腹でも痛いんか?眉間にしわよってる」
後ろを振り返った河野にそういわれて、慌ててそこに手をやった。
「やっべ、消えなくなんじゃん!」
そんな風におどけていても、胸が痛むのはなくならないけど。
それでも幾分マシな気がして、俺は急いで走り去った。
お読みくださりありがとうございました。まだまだ未熟ですので、上達のためにも感想などをいただけると幸いです。これからもよろしくお願いします。