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それから1ヶ月。
田仲は昔の伝手を使って準備を進めた。
撃退の準備を。
しかし、世の中の常。
準備が整ってから厄介ごとがくるはずがない。
今回も、足りなかった。
武装面ではなく、精神面――田仲朋也の覚悟――という面でだが。
いきなり、教室の扉が開いた。
今は授業中。
教師も既に教卓に。
つまり、侵入者だ。
その侵入者は、躊躇いをもたずに教師の鳩尾、こめかみを的確に殴打する。
「動かないでちょうだい。私は【月墜】の副団長、鷹ノ大和を拾いに来ただけ。貴方方に危害を及ぼすつもりはないわ」
その言葉に周りは騒然となる。
それは田仲にとっても同じだ。
結果、出遅れた。
さらに間の悪いことに、彼の片思い相手の席は、最前列中央だった。
何が起こるかと言えば、人質にされたのだ。
「鷹ノ大和、出てきなさい。殺すわよ」
主語のない命令。
片思い相手を人質に取られ、逃げ道の無くなった田仲のとった道は、決して褒められることではなかった。
来るべき時、来るべき相手に向けるはずだった――少なくとも人に向ける気はなかった――武装を、使ってしまった。
――龍牙――アギト――轟龍――群龍。
次々と連結されるワイヤーと持ち手のない短剣。
そのすべてが右手との連結が完了した刹那、複雑怪奇に蠢く。
その剣身は余す事なく野良猫に突き刺さる、致命傷と成り得る場所を避けて。
その事実に頓着することなく、自分の背後――自分の影――から現れた少年に肘鉄をかまし、鼻を圧し折る。
そのまま肘を基点に空から振り下ろされた太刀の腹を横に蹴り、さらにその脇腹を蹴りぬく。
と、同時に手を伸ばすことで頭を狙っていた銃弾を躱す。
およそ人間離れした、それこそテロリストの動きをクラスメイトの前で晒してしまったのだ。