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「――昔の話です。今は対テロリストの養成学校の一生徒ですよ」
何かを振り切るように首を振りながら出た答え。
田仲にとって最も替え難い記憶を呼び起こす。
「そうね。でも、もうすぐ時がくる。そうなった時、【月墜】の副団長が勤まるのは貴方だけよ」
その言葉を聞いて顔面蒼白になる田仲。
「馬鹿な!!早過ぎる!!」
「そう。だから私たちも焦っているわ。今回は警告よ」
釘を刺す野良猫。
「次に来る時まで選びなさい。古巣に戻るか、朽ち果てるか」
「次に来る時がわからないから確約はできない」
その言葉に唖然とする野良猫。
「……ふ、ふふふ。何だ、変わったとばかり思っていたけどそんなに変わってないじゃない」
「人間、そんな簡単に変われるものじゃないですよ。変わりたくもないし…」
田仲の言葉は尻すぼみになり、フェードアウトした。
ニヤリ、と表現するのが適切な笑みを野良猫が浮かべたからだ。
「そう。変わってないのね?」
「――何が言いたい?」
「貴方が貴方たる所以。殺人衝動もかわっていないのだろうと思って。随分と苦しいでしょうに」
面白そうにクスクスと笑う野良猫。
「もはや慣れましたよ。今更蒸し返されてどうこうとかはないです」
しかし、冷静に返した田仲の言葉に笑みを消す。
「嘘吐き。それもまた貴方ではあるものの……不快だわ」
「テロリストごときに何と言われようと構いません」
暫く睨み合う。
先に目を逸らしたのは野良猫だった。
「まぁいいわ。要件はそれだけ。確かに伝えたわ」
そう言って、野良猫は消えた。