第六章 我が手の先に不死鳥の炎を!
突然、冒険者が話に割って入ってきた。
どうやら自分たちの利益になりそうな話に飛びついてきたようだった。
その話に勇者一行は顔を見合わせ少し相談した後カシスが代表して問題点を伝える。
「……魔法の水苦すぎて勇者が吐いた」
簡潔だが、問題点がよくわかる。
それと、水の苦さ度合いも。
「おいおい、いくら非常時とはいえそんなの与えて大丈夫か?見たところ勇者さんはいいとこのお嬢さんっぽいし」
冒険者は少しおろおろしながらアムレットの様子をうかがう。
「わ、わたくしはこう見えても貴族の男爵家の出でしてよ」
少し格好をつけるアムレットに仲間たちは噴き出した
「ぷ、ぷぷぷ。なんですか?でしてよ?てへっ じゃないですよ」
「アムレット。私に罰を与えるような勇者は貴族じゃない」
腹を抱えて笑う二人に、冒険者は少しあきれながらも脱線した話を戻そうと奮起していた。
「まぁそれは置いといてほしいんだが…。この話(井戸水強奪事件)には続きがあるんだ。ここから東の湖の洞窟にサラマンダーがいるっていうんだ。」
その瞬間、カシスの目が光った。
「サラマンダー?それって炎の精霊ですよね。湖の洞くつで生きられるとは思えないですけど…」
シャーロットが首をかしげて疑問を口に出すと、
「サラマンダーは炎と熱を操る精霊…あれって多量の水をかければ死ぬんじゃ…あーなるほどね」
何やらうなずいて、わかったようなカシス。
「おい、カシスなんかわかったのか?あたしはさっぱり」
困ったようにつぶやくソフィアに、不承不承といったように説明を試みるカシス。
「――あくまでも仮説だけど、そのサラマンダーは、魔王軍の契約精霊だと思う。」
聞き覚えのない単語に僧侶が小首をかしげて、
「契約精霊?なんですかそれ」
とカシスに聞いていた。
カシスは一息分間を開けてから、
「契約精霊とは召喚者の命令をきく術式を施された召喚獣のこと。
精霊はいわゆる異空間にいて、召喚魔法を使うことで呼び出せるんです。
多分度の商人がその精霊の召喚者だと思う」
仮説だからか少し不安そうに一息で話すと得意げに胸を張って見せた。
「流石魔法使いカシス!頭いいですねー。私にはさっぱり…」
シャーロットはカシスをほめる反面、力になれない自分に微妙な表情をしていた。
それに気が付いたカシスは、静かに、
「ただ私の得意分野だったってだけ。神聖魔法はシャーロットのほうが詳しいだろうし、実践はソフィアのほうが強いに決まってる。」
とフォローを入れる。
するとシャーロットは嬉しそうに、
「確かに神聖魔法は私の得意分野です。でも戦闘となると物理攻撃の強いソフィアの領分です」
と、ソフィアを立てる。
「おいおい、言っちゃあれだが、それだとアムレットは何が得意になるんだ?」
すると慌てて今さっき回復したばかりのアムレットが、
「私⁉私得意なこととかないよ。
一応簡単な魔法ぐらいは使えるけど…」
そう謙遜を絡めながら(本音九割)苦笑するアムレットに、カシスが目を輝かせて。
「ちょっとやってみて」
と、カシスが、魔法の先生みたいな鋭い視線で言った。
「頑張ってください。」
シャーロットも楽しそうに応援してくれるから、あきれながらアムレットは魔法を使おうと覚えたばかりの魔法の呪文を唱える。
「えっと…凍てつく大地をも暖め、光となりすべての生物に恩恵を与える炎よ。
わが手の先に不死鳥の炎を。 ファイアボール」
勇者がそうつぶやいたとたん、小さな火球が手元に現れ、――消えた。
「消えちゃいました…」
少し残念そうにつぶやくシャーロット。
「うーん、それなりに素養はあるみたいですけど実践にはとても…(クスクス)」
カシスが小さく笑うと、アムレットの眉が寄った。
「わ、笑わないでよっ」
真っ赤になってうつむくアムレットを慰めるようにシャーロットが、
「ま、まぁできるってわかっただけで大収穫じゃないですか!」
と、励ます。
アムレットはむくれながらも、
「まぁそうかもしれないけど」
と納得したように、そして少ししょげたように言って一息間を置くと、
「ま、そういうことでサラマンダー攻略行きますか」
「切り替え早くないですか⁈」
シャーロットが何か言ったようだがアムレットは気にしない。
そうしてなんとなく締まらないまま、一行は準備を整え、冒険に出かけたのだった。




