表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

第8話『精霊の湖杜絵』


湖の奥深く、ドルフィンの背に乗って、森林から吹く風が気持ちいい。


ーーーきゅー!!


ドルフィンが鳴き声を上げて、振動の波紋の中には、こちらを招くように、小さな光が複数飛び交う。


森林を抜けると強い光が反射する。


『うわ、眩しい!』


目を開けると色とりどりの花たち、それと同じくらいある色の小さな光たちが、ほわほわと花のように舞う。


まるで、お祖母様が教えてくれた


「蛍みたいだ。」


あちこちの木には、果実がなっていて。この場所の豊かさがわかる。


自然と明るい気持ちになるな。


『あ、見て!あそこに何かいるよ!』


大きな体格なのに、オカリナのような、繊細な鳴き声が耳に心地良い。


「カナリア、だったと思う。図鑑で見たことある」


海の動物だけでなく、蝶々が飛んでいると、本当に夢のように思えてしまうな。


ーーーきゅーーい!


ドルフィンがまた鳴いた。


「こんにちわ。私は中精霊のアカリよ、よろしくね!」


「私はグレイリィ。こっちはルゥだ。」


『これでも氷珀竜なんだよ!』


「ふふ。わかっているわ!これでも中精霊だもの!」


精霊は予知能力があると聞いたことある。


「女王様である、ソルフェージュ様までの道中を、私が案内するように言われているの!


ドルフィーナ、頼むわね!」


ドルフィンは返事するかのように、尾鰭で水面を叩いた。


『冷たい、水が跳ねたよ。ドルフィン。』


「ふふ。さぁ、案内するわ!こっちよ!」


少し先に進むと、広い水場では数多くのドルフィンが、飛んだり跳ねたりする、水飛沫が太陽に反射して、キラキラと七色の光も相まっている。


『すごーい!歓迎してくれてるのかな?』


「えぇ、そうよ!もし、歓迎されてなかったら、このドルフィーナも攻撃するもの」


「そうなんだな。」


歓迎されるというのは、嬉しいものだな。


『ボク、ちょっと遊んでくる!』


肩に乗っていた、ルゥはテンション上がって、ドルフィンの群れに飛び回って行った。


「あまり遠くいくなよ!」


『わかってる!』


ドルフィンと戯れている、ルゥいいな。


「ひらひらと舞う、水の華。


赤や黄色の暖かい色。


桃色やオレンジ可愛い色。


青色、緑色が心を落ち着かせ。


紫は不思議な雰囲気にさせ。


黒は白を支え、白は黒を作り出す。


さまざまな色が、あなたたちを彩る

素敵な日が、明日訪れると願って光り輝く。」


水の精霊女王である、ソルフェージュの

美しく響き、オタリアとドルフィンの共鳴が

とても心に響く。


『…さすが、ソルの歌声だ。』


さっきまで、遊んでいた。ルゥも私も、彼女の歌に聞き入っていた。


精霊女王の固有スキル。

"人々の愛と癒し"が染み渡るな。


「あなたを歓迎するわ。グレイリィ・ヴィラン」


「ソルフェージュ様、歓迎の言葉と歌声。痛みいます。」


7歳の時は、知らなかったけど。家で古い書物を見つけて呼んだら、そこには海の神殿で、ウンディーネのご加護を与えてくださるのは、ソルフェージュ様だと、書かれていた。


「蒼白竜よ、あなたも元気そうね。」


『ソルも元気そうで嬉しいよ。』


見た目に反して、3万年もの時を生きている、ルゥがソルフェージュと私より先に会っていてもおかしくない。


「神殿を除くと、20年前の精霊灯篭の水送り祭、以来かしらね?」


『そうかもね!』


「精霊灯篭の水送り祭?」


『20年に一度、精霊の街、スピリットで行われるんだよ!とても綺麗なんだよ!』


「それが今年に開催するのよ。」


おぉ、なんて絶妙なタイミングなんだ!


「あと1週間後よ!」


『わぁ〜、久しぶりに見たいな!グレイリィいいかな?』


「そうだな、私も見てみたいな。」


ルゥは嬉しいのか、くるくると飛んでいた。


「ゆるりと滞在されよ、アカリ。2人の世話を頼んだわよ」


「はい!ソルフェージュ様!」


『よろしくね!アカリ!』


「はい、スピリットを満喫してもらうように、精一杯頑張りますね!」


頼もしい笑顔のアカリに、宿まで案内してもらう。


『ベッドふかふかだ〜!』


「ルゥ、お行儀悪いぞ。」


「旅の疲れもあるだろうから、夕方まで休憩してて!夕方担ったら、お風呂に案内するわね!」


「ありがとう、アカリ殿」


襖を閉めると、アカリが灯る光が遠ざかるのを見送った。


軽く荷解きをするが、そこまで荷物が多くないから、少し必要な物を出すくらいだ。


『ぷー。ぷー。』


ルゥは鼻に泡を浮かべて、寝息を立てていた。


私は少しスピリットを散策したいなと思い至り、必要なものを魔法鞄に詰めて、宿を抜け出した。



少し出るとやはり花がたくさん咲いているのが特徴的だ。蝶々が私を歓迎してくれているのか、私の前をひらひらと飛んでいる。


「ほんと、不思議な街だな。」


蝶々と別れて、歩いて行くと小さな精霊たちが、私を擽るように集まる。


さらに進むと氷柱が少し飾られている池を見つけた。


「水を見ると落ち着くな。」


感情に敏感な精霊たちが、何かを感じたのか、そよそよと風が吹いた。


「あなたが、グレイリィさん。ですか?」


華やかしい声に振り向く


「これは…風の精霊女王、リンハン様。」


「頭をあげてください。そういう意味で話しかけたのではありません。」


謙虚な姿勢が、美と感じてしまうな。



このスピリットには、水の精霊女王ソルフェージュ様と風の精霊女王リンハン様の他に、あと炎、光、闇の3人居るらしい。


風が吹くと目の前が、ふわりと光の珠が、見てるだけで、なにか満たされる感覚がする。


「あなたから、まだ癒えてない心底が見えます」


後ろには、ふわりという言葉が似合う、柔らかい笑みの光の精霊女王"ホウメイ"様の姿が。


「温かな光に癒しの恵みを」


「なりません、ホウメイ!!」


天使のような笑みと声のはずなのに、少し怖いと感じた。温かいなにかに包まれているのに、なぜか目の前が暗くなる時。


『グレイリィー!!』


ルゥの声が聞こえた気がした。


『起きてよ。グレイリィ。』



グレイリィに出会ったのは、いつだったかな。


ボクが誕生してから、長い年月を重ねて。


静かな場所で退屈ではあったけど、愛しい時間を見ていた。ボクはグレイリィの父親である、サファールよりも前のサファールのお父さんだったかな?


そのくらいから、ヴィラン家とは長い付き合いで、仲が良かったんだ。


サファールが、リズという街の偉い王になるまで、サファールの手助けをしていた。手助けと言っても、大したことないものばかりだ。


サファールはハクレイと結婚した。ボクは睡蓮と青薔薇の花束を送った。2人に似合うと思って、ボクの住んでいる洞窟の庭にあるのを集めてきたんだよ!


そしたら、アカバネが生まれたんだ。


活発で、パーティとかでも人目置くような子だったな。まさに赤が似合うと言ってもいい。


次に、シレッド。


シレッドは、アカバネとは正反対で大人しい子だった。誰かにからかわれては、サファールにも隠れて泣いていた。


アカバネは気づいていた、みたいだけど。ボクを抱きしめる姿を見てから、ボクに任せることにしたらしい。


それでシレッドが救われるなら、構わなかった。


シレッドはね、知識への探究心が凄かったんだ。なにかを産む姿や、難しくてボクには、解らなかったけど、楽しく話す姿が好きだった。


アカバネもシレッド、サファール、ハクレイもそれぞれが輝く姿を見てきた。


これが、もしかしたら、愛していた。ということなのかもしれない。


『そして、君が生まれたんだよ。


グレイリィ…。』




久しぶりに聴いた、誕生の声は、くすぐったい感じだったかな。


なんだか、今までと違う。心を掴まれたような感覚がしたんだ。


今も、それがなんだったのか、わからないんだよね。


「グレイリィさん、まだ起きませんか?」


この神秘なる声。


『ソルフェージュ、うん。」


「あなたがそんな顔をするとは、思いませんでした。」


『ボクもそう思う、なんか目が離せないだ。』


ホウメイがしたことには、怒っている。グレイリィの意思なくやったんだから。


『まだ、どこか寂しそうにしてたり。眠っている時に、お父様と呟くの』


「そうでしたか。」


『でも、心傷が癒えるには時間がかかる。今はゆっくりする時なのかな?』


少し頑張りすぎちゃったかな。


小さい時から、はいはいするのも、立つのも、兄妹の中で1番、一生懸命だった。


グレイリィと過ごす毎日が楽しかった。


お祖母様のミドリーが先生で、グレイリィが生徒で、その授業で召喚儀式をしたらしい。


魔法石で魔法陣書いて、1滴だけ血を流すんだ。


ボクはその時、洞窟で眠ってたんだけど。


突然なにか呼ばれて、びっくりしたよ…まさかグレイリィがいるなんて。


ボクの運命は、グレイリィだったことにも。


その時のボクは蒼白竜の姿だったから、グレイリィがまだボクの本来の姿は見せたことなくて。


不思議そうにしてた。


グレイリィの相棒、ボクは認めた。


凄いんだよ。手が傷だらけになっても、悔しくて泣いてても、時には弱音を零していたけど、諦めない姿がたまらなく可愛かった。


ずっとそばに居た、冒険者ギルドの登録の時、ボクの名前あったの、すっごく嬉しかった。


カイレイ山の時、大怪我したボクを、グレイリィが泣きながら、必死に光魔法を全開でかけてくれた姿を見て。


今度は、ボクが絶対、グレイリィを護りたいと心に誓った。




まさか、リズが滅んでしまうなんて、ボクにも想像してなかったんだ。


ボクも必死に戦ったんだけど、適わなくて。


グレイリィと逃げることしか出来なかった。


サファールとハクレイの願いだったんだ。アカバネも、シレッドも同じこと言うんだよ。


グレイリィを護って欲しいと。


なにかがなくなったりする姿は、何度も見届けて来たのに、な。


「あなたにも、かけてあげましょうか?蒼白竜。」


『ホウメイ…要らないよ。きっと、グレイリィにも必要なかった。


傷は痛いけど、溺れてしまいそうだけど、いつかあの光のように、木の隙間から日が差すように、輝く時が来る!


ボクはそう信じていた。ボクも、グレイリィの想いも。


急かすことなんて、なかったのに。


ホウメイがしてくれたのは、好意でも、ボクとグレイリィには違うよ。』


もしかしたら、何年と月日がかかるかもしれないけど。


それくらい大事な…宝物なんだよ。


「ね、グレイリィ。キミとお祭り行きたいよ。」


竜は、涙を流さないと誰かが言ってたのに、なぜか頬が冷たいんだ。


「闇は光を支え、光は闇を映す。」


静かな夜の様なのに、月のような存在感は


『闇の精霊女王。アンジュじゃん。』


「蒼白竜、いえ、今は氷珀竜ね。


グレイリィ・ヴィランを起こしてあげるわ。

どうしますか?」


そんなの決まっている。


「闇は時に、光へ変える力よ、月の優美に照らされよ。」



温かい波がボクに染み渡る感覚に、アンジュとは違った魔力


『ソルフェージュ。』


「私にも、護れなかった責任があるわ。水の精霊女王として、詫びるわ。


聡明な水波すいはよ、生命の鏡が未来に潤いを」


それじゃ。ボクも眠っちゃいそうだよ。



怖かった、ホウメイの光が、強くて眩しすぎる。


家族との想い出がなくなってしまうには、寂しすぎて。それこそ、リズがなくなってしまうのと同じ。


向き合う、そんなかっこいい言葉じゃなくていい。


ただ、ルゥと、こんなことがあったよね。と話せるくらいでいい。ルゥと笑って、泣いたり、お兄様とお姉様に愛された話をして。


昔のお父様たちの話を聞いたり。


目を覚ますと、ふわふわと心地いい光が見える。


なんだか、不思議な夢を見ていた。


苦しくて、悲しくて…確かに、リズを失ってしまった衝撃は、まだ立ち直るというまでは行かない。


でも、ルゥも…きっと辛かった。


いつか見た、お父様の日記…ルゥの日々が綴られていた。


だから、ルゥが笑っているなら、私も笑っていたかった。


波の音を聴くと、思い出しちゃうの。


「ルミナ」


『グレイリィ、おはよう。』


あなたの優しさは、海みたいで、安心する。


『一緒に進んで行こう、旅路のように』


世界を支える精霊女王たちは、誰かの光を灯す願いが込められている。


……To be continued


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ