第5話『流動の洞窟と光の向こう』
ぽつんぽつんと雫が落ちる音が響く洞窟の中。
ーーーがぅー!!
大型の狼が2対の、ビット=ウルフに遭遇した!
ーーーわぉーーん!!
「出たな、一突きで倒してしてくれよ!冰龍斬っ!」
『ボクもグレイリィに負けないぞ!青炎砲!!』
ダンジョンに来るの久しぶりだけど、案外手応えあるな。
「いい調子だな。」
『グレイリィ、油断禁物だよ!』
「わかってる、ルゥ。」
ルゥの得意な炎と水の魔法のおかげもあって、序盤のビット=ウルフとブラット=バッドの大軍、ストーン=ゴーレムまで、倒してしまった。
さらに、奥に進むとCランク級のヘビースネイクに遭遇。ヘビースネイクの柔軟で素早い動きに少し苦戦した。
ヘビースネイクの口から毒霧が吐かれる!
『防御スキル、水晶防壁!』
魔物の攻撃魔法は、ルゥによって防いでくれた!
「ありがとう、ルゥ!」
『えっへん!まだまだこんなもんじゃないよ!』
「やっぱり、お姉様の腕輪も凄いわね。」
魔法強化、身体強化、防御スキルの向上効果があるお姉様お手製の青い宝石が綺麗な腕輪なのだ。
『ボクもこの首輪のおかげで、魔法がパワーアップだよ!』
「そうね!次がラスト、気を引き締めましょう。」
『うん♪』
「なんだか嬉しそうね、ルゥ」
『グレイリィが元気になって嬉しいんだ、ボク!』
ルゥ…ルゥは本当に優しくて可愛い。
ルゥに何度助けて貰ったのかしら。
『ボクだって、グレイリィに助けられたことあるんだからお互い様だよ!
カイレイ山のとき、ボクが大怪我したとき、必死で光魔法使ってくれたし。』
「カイレイ山ね、あそこの魔物どれも強くて大変だったわね。」
ルゥ強いのに、あんなルゥが苦戦するのも初めて見たかもしれないわね。
相手の魔物には魔法障壁スキルがあったから、魔法攻撃のルゥには相性悪かったのよね。
血だらけのルゥを見て、我を忘れそうになったわ。
『あの時のグレイリィかっこよかった!あの魔物の心臓貫いて倒したんだから、お兄さんも大変だったって言ってたくらいだったのに!』
「その魔物が落とした宝石には、魔法障壁スキルが付与できるだったわね!」
『ボクにつけてくれたんだよね、嬉しかったなぁ』
あれは、ルゥにピッタリのスキルだと思ったからね。
「大きな門…最後のクエストね。」
『どんな魔物かな!』
「どんな魔物でも、ルゥとなら大丈夫!
辛くても。悲しくても。あなたとならどんな高い波でも。乗り越えられる。」
『…グレイリィの歌の相乗効果、素敵で温かいよね!ボク!やる気出てきた!早くいこう!』
大きな門を開けると水位が上がって、水中内の戦いになるみたい。
「私たちの十八番よね、ルゥ!」
『もちろん!ボクたちを敵に回したこと後悔させちゃお!』
リズの住人である特有能力、"海底の住人"の固有スキルで、水の中でなら水魔法の威力と強化が1.5倍上がるのだ。
『グレイリィの光る髪と瞳、久しぶりに見たけど綺麗だね!』
もう、ルゥったら。お世辞が上手いんだから。
「行くわよ!」
『うん!頑張ろう!』
この先に進めと言わんばかりの大きな洞穴へ、私とルゥは泳いで奥深く進んで行く。
ーーービュンッ!!
洞穴の中に入った途端、勢いよく私の横をピリッと軽く何かが掠めた!
『む!グレイリィの顔に傷つけたあいつ、ボク許さない!!』
顔を手で触ると少し血がついて、初めて顔に傷があることに気付いた。
遠すぎて見えなかった姿が、こちらへと近づく、黒と白の尾びれ…あれは、キラーホエール。
ーーーキュアァァァー!!
「大きいわね。」
『ボクだって大きさも負けないよ!ふんっ!』
ルゥに水の渦が生まれて渦がなくなると姿を変え、元の蒼白竜の姿に変化した。
「ボクを怒らせて、本気にさせた事を後悔するといい。」
なぜルゥがぷんぷん怒ってるのか、よくわからないけど、私はルゥの背中に捕まった。
『水氷大砲!!』
あら、あの温厚なルゥが、いきなり強力の一撃が放たれた。
キラーホエールは、何をしたのかしら。
「まぁ、いいわ。どうせ倒すし、水爆連弾!!」
遠距離水魔法攻撃をキラーホエールに放つ。しかし、キラーホエールのしなやかな泳ぎで、交わされて当たらない。
『これならどうだ!零度瀧砲!!』
いつもより増して、ルゥの凄まじい攻撃によって、キラーホエールは凍るけど鋭い鱗をドリルのようにして、氷は砕けてしまった。
ドリルのように、キラーホエールは勢いよくこちらに攻撃を仕掛けてくる。
ルゥの大きな翼の素早い動きのおかげで当たらない。
『そんな遅い攻撃当たらないよ!』
「でもキラーホエール、なかなか強いわね。水爆連弾!!」
『氷柱炎弾!!』
ルゥと合わせて攻撃!当たっている!
ルゥの氷柱炎砲の状態異常効果がキラーホエールに付与された。
「いいよ、ルゥ!さすがよ!」
『えっへん、当然だよ!』
ーーーキュアアア!!
キラーホエールの鱗がさらに鋭い氷の刃となって向かってくる。
『水晶防壁!!』
カイレイ山の時の魔物である、閻魔を倒した時に得た、防御スキルはキラーホエールにビクともしない。
ーーーキュアア!!
キラーホエールの硬い鱗が剥がれて、連弾攻撃を仕掛けてきた。
『そんな攻撃、水晶防壁の足元にも及ばなよ。』
相手の鱗の復活にインターバルがあるのか、動きがゆっくりになった。
「反動で動きが悪い、今だ!冰龍斬!!」
私の冰龍斬の攻撃とルゥの火傷が効いているおかげで、キラーホエールは火傷に加えてさらに動きにくそう。
「今よ、ルゥ一気に倒すわよ!」
『うん、グレイリィとボクのコンビ技!』
「『青炎冰龍斬撃!!!』」
青い炎が水龍の形になって、キラーホエールは真っ二つだ!!
ーーーキュアアアっ!!!
キラーホエールは綺麗に消え去った。
『やったね!グレイリィ!』
「うん、ルゥのおかげよ!」
『グレイリィだって、水爆連弾よかったよ!』
キラーホエールを倒したことによって、水位が下がり、元の流動の洞窟へと元の姿に戻った。
"海底の住人"のおかげで、濡れてもすぐ乾く。
キラーホエールとその他の獲物討伐、報酬。
グレイリィ・ヴィラン⇒レベル+1 ↑
水魔法スキル⇒レベル5⇒レベル6へUP
身体能力⇒レベル7⇒レベル8へUP
素早さ⇒+10UP。
"海底の住人"⇒"オルカのカムイ"
水の中であれば、自由に遊泳できる。
水中移動速度が、20%UPする。
水魔法が魔法障壁、貫通率小アップ
狩りがしやすくなる。
蒼白竜ルミナ⇒レベル+1 ↑
水と氷魔法スキル⇒レベル7⇒レベル8UP
水晶防壁⇒氷結硬膜、にランクアップ
水中移動速度⇒+20UP
蒼白竜⇒氷零竜へと進化。
水と氷魔法、威力と強化20%⇒30%
飛行速度⇒レベル8⇒レベル9UP
前回より自由に飛べるようになる。
ステータス確認すると、そう表示されていた。
『あ、あそこ見て!報酬箱あるよ!』
「ほんとね、開けてみようか!」
報酬箱を開けるこのわくわく感、たまらないのよね。報酬箱を開けると白黒の尾鰭と青い石がついている指輪が2つと魔晶石大2つ。
「なになに、青い石を触ると人族のみだが尾鰭がつくようになる?」
『ボクのも指輪だね。ボクのは防御スキル向上もついてる!やったね!』
尾鰭ということは、ローレライみたいな姿になるのかな?
とりあえず指輪はつけると、洞窟内が振動して、一部の場所が水路になっていた。、
もしかして、この指輪で、流動の洞窟の深部にも行けるということなのかな??
まだ先があるみたいだし。
『ねぇねぇ、この尾鰭付与のスキル使ってみてよ!』
「えー、尾鰭なくても泳げるから、私必要ないよ?」
『いいじゃん!グレイリィならきっとローレライに負けないくらい可愛く似合うよ、きっと!!』
う…ルゥの純粋な目と言葉に負けたので、青い石を触ると石が光って、私の足が青い尾鰭に変化した。
動きにくそうかなと思ったけど、意外と普通に動けそう。
『わぁ!わぁ!すっごい可愛い!!グレイリィの綺麗な髪色と同じ色の尾鰭だね!』
「…ありがとう、ルゥ。」
『せっかくだから、このまま泳いで、洞窟の深部へ行こうよ!グレイリィのローレライ姿もっと見たい!』
「…ルゥが、言うなら行こっか。」
ほんと、ルゥはお世辞が上手いんだから。
流動の洞窟の深部へ泳いで進む。
『グレイリィ、泳ぐの上手だね』
「まぁ、一応リズのお姫様だからね。」
『うん!そうだよね!』
先に進むとここで行き止まりのようで、浮上して自ら顔を出すと
「なんて綺麗なの。」
『わぁ、すっごーい。』
水に浮かんでいる睡蓮の葉が水面を揺らし、潮風が青薔薇の花弁に交わり、薔薇の美しい香りがよりこの景色をより幻想的にさせている。
お母様がお花好きで、特に睡蓮と青薔薇が好きだったな。
「確か、睡蓮は"純粋"、"優しさ"、聖なる美"。青薔薇が"永遠の愛"や"奇跡"。」
『グレイリィ、よく知ってるね!』
「お母様が好きだった花だから。」
『そうか、そう言えば部屋によく飾ってあったね。』
ルゥは悠々と楽しそうに飛び回る。
「お母様にも見せたかったな。」
頭に何かが乗っかったなと見たら、青薔薇と睡蓮の花冠だった。
「どこでこんなの覚えたのよ?」
『お祖母様だよ!よく作り方教わってたんだよ!』
器用なんだ、あんな腕短いのに。
「ありがとう!」
私は魔法鞄からハープを出した。
『そうだ!それ貸して?』
「いいけど、何するのよ?」
『へへん!こうするんだよ!』
お母様に教わっていたハープに睡蓮と青薔薇が、綺麗に飾り付けられていく。
『これで、いつでもお母様と一緒かなーって思ってさ?余計なお世話だったかな?』
「ううん!そんなことない…ありがとう。ルゥ。」
私は改めてハープを構える。
「睡蓮が揺れる、水面に映る夢
青薔薇が香り、永遠を紡ぐ風
君と歩む波、優しさの調べ
光の向こうへ、奇跡の未来を信じて。」
『綺麗な声と素敵な歌だね。確か、"水の記憶"だっけ?よくお母様が歌ってたよね。』
「うん。懐かしくなって、歌った。
ねぇ、ルゥ。この洞窟出たら、別の街へ旅に出よう!たくさん行って、トウカイのように行ったことのある国でも、違う変化とか、美味しいご飯とか食べて。
そして、リズが存在したとこの歌で証明して、廃れさせたくない。
ルゥ…一緒に行ってくれるかな?」
『グレイリィ…もちろん、もちろんだよ!どこまでもキミと一緒!!』
私とルゥは、この洞窟を出ても旅をしよう。
いろんなものを見て、この歌を歌い続けよう。
ルゥとずっと一緒に。
ーーー
帰るために転移する必要がある。ここから転移するには、転移石にサインするんだ。そこには、お兄様の"AkaBane"とサインが書かれていた。
「お兄様と、今日のダンジョンの話をしたかったな。」
ロウダン殿にこの転移の仕方にしたのかと、1度聞いた事あるんだ。
彼曰く冒険者たちの戦った証を残したいんだとか言っていたわね。冒険者を誰よりも愛していた、ロウダン殿らしいな。
ロウダン殿は、旅の初級講座を無料で行っているくらいだからな。
「ここで、終わらないよ。お兄様、もう大丈夫。」
『グレイリィのことは、ボクにまかせてよね。』
少し寂しそうなルゥ…
ルゥは、私の次だとお兄様とお祖母様が、1番ルゥを可愛がっていたからな。
魔法鞄から魔法ペンを取り出して、転移石に"GuRayLy"とサインをすると、流動の洞窟の討伐は終わった。
「眩しい。」
どうやら、洞窟の外へ出られたみたいだ。
『帰ろう、グレイリィ。ボクお腹減っちゃった。』
くぅ〜とルゥのお腹が鳴った。
「ふふ。そうね、帰りましょう」
私たちはトウカイのギルドに戻ってきた。
ロウダン殿から報酬のお金を貰っただけじゃなくて、トウカイの美味しいお店でご馳走してくれた。
「再会の祝会だ!遠慮なく食え!」
新鮮なお魚や貝料理は、まさに絶品だった。この柑橘の蒸留酒がまた最高だ。
「そうか、旅に出るのか。」
「はい、いろいろ見て回りたくて。」
「生き抜けよ、グレイリィちゃん!あんたなら、アカバネの兄貴のような、立派な英雄…いや、女神になれるだろうよ。」
「…女神に、はい!」
ロウダンの言葉を、胸に留めるように、木製の杯で誓った。
……To be continued
こんにちわ、この作品を読んで頂きまして
誠にありがとうございます。
いよいよ、グレイリィとルゥが冒険へと足を踏み入れました。どこの話が良かったですか?
この話を気に入って頂けましたら、評価とブックマークをお願い致します。
6話も引き続き、お楽しみ頂けたら幸いです!
それでは、グレイリィとルゥの海旅路を
ぜひ見届けてください。
作者・ユメウラ