第10話「水送り祭の当日前夜」
スピリットに滞在して、6日目になった。
いろいろな事があった、少し苦しいこともあったけど、いい思い出へと溶け込むだろう。
「雨が降っていても、スピリットだと絵になるな」
花や木々が雫で濡れている。雨だからか青の小さい光が多めだ。
私の眠っているルゥの体を優しく撫でる。
「グレイリィさん、入ってもいいですか?」
アカリ殿かと、襖を見るとアカリ殿とは違った光色が見えた。
「構わないぞ。」
「失礼致します。わたくし、スピアと申します。」
「私の先生なんですか!」
「そうだったのか。スピア殿の教育が素晴らしいことは、アカリ殿を見ていればわかりますな。」
「ふふ、わたくしが見ると、まだまだですがね。」
微笑ましさに、私はお兄様やお祖母様も、こんな感じだったなと思い出した。教育している側としては、思うところがあるのかもしれないな。
「それで、私になにか用でもあるのか?」
「グレイリィ様のお清めに参りました。」
「お清め?」
「はい、明日のお祭りに向けてです。お召し物もご用意してあります。」
「そこまでして頂けるとは、ソルフェージュ様には、至り尽くせりだな。」
8日間の滞在だけでなく、宿やお祭りまでのことまでとは、感謝しかないな。
「せっかくだから、ルゥも綺麗にしてもらうか。ルゥ、ルゥ?」
『むにゃ?グレイリィ?』
「スピア殿とアカリ殿が、私たちを清めてくれらしい。ルゥも良ければ行かないか?」
『うん。行く!』
決まりだな。スピア殿とアカリ殿を追うように、私とルゥも2人の所へ向かった。
先に向かった場所は、湯浴みだ。
シャンプーとトリートメントも昨日とは少し違った香りがするな。
「アカリが仰ってましたけど、綺麗な髪をお持ちですね。」
「そ、そうか?」
「引っかかりもなければ、パサつきもない、手触りがいいです。」
なんだか、少し恥ずかしいな。
「ふふ。お顔が真っ赤ですね。」
『グレイリィ、もしかして照れてる?』
アカリ殿に体を洗ってもらっているルゥが、からかってきた。
「そんなんじゃない。」
「グレイリィ様は、謙虚なんですね。」
髪も体もマッサージまでしてもらって、すっきりとした気分だ。水に柑橘の果実が入った飲み物を頂いた。
「この酸っぱさがいい。」
『ボクにはすっぱすぎる。』
「あらあら、ルゥさんにはこちらのフルーツミルクがお好みだったかしら?」
『ありがとう、スピア!甘くてとても美味しい♪♪』
和やかな気持ちのまま、髪を乾かしてもらい。
「さて、明日に向けて、お召し物を決めましょう!」
「グレイリィさん、何でもお似合いそうですね。」
『ボクもおしゃれしたいな!!』
「えぇ、もちろん。ルゥくんもだよ!」
この後、どんな衣装にしたかは『ふふ、お祭り本番までのお楽しみ!』とルゥは、これ以上教えてくれなさそうだ。
いよいよ精霊灯篭の水送り祭、当日。
昨日の雨とは違って、今日は快晴だ。朝露に濡れた花たちがまるで嬉しそうだった。
「それで、早朝から剣の素振りをしてたんですか?」
「あぁ、日課だからな、継続することは大事だからな。」
お兄様に1日100回は素振りしろと約束したからな。
「グレイリィさんは、ストイックなんですね!」
「私は強くなりたいからな。」
「とても素敵です!あ、着きました。ここでスピア先生がお待ちしています!」
襖を開けてもらうと昨日と同じ部屋とは思えないほど、今日は華やかな部屋になっている。
「お待ちしておりました、グレイリィ様。ささ、こちらへ。」
「よろしく頼む。」
「ルゥくんは、私とよ!」
『わかった!グレイリィ、後でね!』
ルゥと別れたあと、スピア殿に化粧、着替え、髪を整える、私の身支度をほぼやってもらってしまった。
リズの時は、メイドや執事は居たが、ここまでやってもらったことはなかったと思うな。
『グレイリィは、お母様と同じで自分でやるもんね!』
「ルゥ、着替え終わったんだ?」
以前、茨の水没林でシルヴァリスを討伐した時に報酬で出た、お気に入りのシルバーのマントを羽織り、青い帽子を被っていた。
『どう?』
首輪と指輪もあって、カッコ可愛良く、アカリ殿に着飾って貰ったらしい。
「とても似合っているぞ、ルゥ。」
『えへへ〜!グレイリィ…昨日も思ったけど、昨日より一段と綺麗だね。思わず見取れちゃうな〜!』
あまりこのような華やかな服装を着るのは、式典くらいだからな。着慣れないというか、少し恥ずかしいな。
「ふふ。とてもお似合いですから、堂々としておられれば大丈夫ですよ。」
「そうだろうか。」
ソルフェージュ様から昼食を誘われて、この服装のままで行った。
「あらあら、とてもお綺麗でお似合いね!」
ソルフェージュ様は、青を基調としたスラッとしたドレスがとてもお美しい。
「ねぇ、ルゥ。私ももう少し運動量増やした方がいいか?」
『え?なんで?』
「ソルフェージュ様、お綺麗だから。」
『グレイリィはそのままで十分だと思うよ。』
そうだろうか、ソルフェージュ様だけでなく、他の4人の精霊女王様たちも、きっと素晴らしいお姿だろう。
『そんな顔しないで!笑って、グレイリィ!笑った方がもっと可愛くて素敵だからさ!』
「ルゥ。」
そうだな、ルゥも言ってくれている事だし、今はスピア殿言う通り、堂々と立っていることにしよう。
『やっぱりハクレイにそっくりだ。』
ハクレイ、グレイリィのお母様も最初のパーティとかで綺麗な服を着る度に、グレイリィと同じように、あんな感じだったな。
『精霊灯篭の水送り祭、今回はどんな色の花を見せてくれるのかなー?』
空の真上にあった太陽は傾き、オレンジ色の光が指すスピリットは何度観ても凄いな。
……To be continued




