第1話『淡い蒼ヴェールの夢物語』
海底にある街、リズ。
ヴィラン家の次女、グレイリィ・ヴィラン。
リズに伝わるお伽噺話の女神様に憧れ、努力する日々。
学生時代に召喚した、蒼白竜・ルミナ。通称ルゥと楽しくて笑う毎日。そんな毎日が、家族と続いていくと思っていた……
海面が揺れてぼんやりと蒼月が見えるある日の晴れた夜。
私は眠る前にお母様がお話をしてくれた。
この海底の街"リズ"にまつわるお伽噺が大好きで、毎晩楽しみに聞いていた。
お母様が絵本を開き、優しく暖かい声で話し始めるの。初めて絵本を見た時のことを、今も覚えている。
「わぁ!綺麗な人だね!」
「昔々この街にはある海の女神様がいました。
その女神様はお美しく、髪は海のように艶があり、瞳はあの夜空の蒼月のように輝き、肌は白砂のようで美しい女神様でした。
ずっと私たちやこの街の人々を、優しくも温かなキスをするように、青く透明な海のようなヴェールで包み込み、この街を護って下さっているのよ。」
そんな話が私は大好きで、その女神様に憧れた。
とても優しくて、温かくて、お母様みたいな人だと思ったから。
私は鏡の前に立って、自分の容姿を見た。髪は海のような群青色、瞳はあの月のように青くて、肌も女神様と比べても負けないくらい白い。
私はお母様がお話してくれた、女神様の様にそんな夢を胸に抱いた。
「お母様、私も女神様のようになりたい!」
「あらまぁ、ふふ。グレイリィならきっとなれるわ。ね?あなた!」
「そうだな、グレイリィは母さん似だから美しい女神になるだろうな。」
お父様とお母様に晩食の時に、そんな話をした。
お父様のように頼もしい温かい手と、どっしりとした頼もしい背中。
お母様のように優しく謙虚な姿勢。
お爺様のように頭が良く。
お祖母様のように人々を助けたいという心。
お兄様のようにこの国を護れる強さ。
お姉様のようにこの国を発展してきた。
そんな凄くて、尊敬する温かい家族に囲まれていた。
私は、グレイリィ・ヴィラン。
学生時代に召喚した蒼白竜のルミナと名付けて、ルゥと呼んでいる。ルゥと一緒に家族の背中を必死に追いかけて来た。
「もっと頑張らなきゃね、ルゥ!」
『ボクも、グレイリィに負けないように頑張る!』
お父様からは政治とか世界のお話。
お母様からはハープと礼儀作法。
お爺様からはお勉強と魔法。
お祖母様からは薬学と植物学と動物学。
お兄様からは剣術と戦い方。
お姉様からは魔道具学と魔法書。
どれも頑張った。
最初はお父様の話は難しくてわからない。
「おやおや、グレイリィにはまだ早い話だったかな?」
「む、そんなことない!」
子供扱いをする、お父様を見返したくて、歴史の本をたくさん読んだ。
時には剣術や体術で、まず体を鍛えることから始まって筋肉痛の毎日。
手足には湿布剤だらけだし、ハープで指は絆創膏だらけで、痛くて、泣きそうになる時もあった。
「ルゥ、痛いよ……」とか。
なかなかできない魔法
「あれ、炎の魔法発動しない?なぜだ??」
『ボクは出来たよ!』
「えー!ルゥ、ずるい!」
ポーション作り、上手く扱えない魔法具に、
「もう出来ないよ、お姉様」とか。「お祖母様、全然わからない。」と弱音を何度も言った。
できない悔しさで諦めたくなる時が何度もあって、大変で難しかった。
でもルゥが常に側にいてくれて、めげそうになっても、心広い家族のサポートがあって、遠回したかもしれない。
全て合格点まで、ちゃんと漕ぎ着けられた。
やっと、凄い家族に認められて嬉しかった。頭をこれでもか、というくらい撫でてくれた。
お祝いに、豪華なご飯やプレゼントまでしてもらった。
「少しは憧れた女神様に近づけているだろうか。」
『きっと、グレイリィならなれるよ!こんなに頑張ってるんだから。』
可愛いらしいとは言い難い、絆創膏だらけの手を、ルゥは優しく握ってくれた。
「うん。そうだね、ルゥ!」
『紅茶、温かくて美味しいよ?』
「ほんとだね。」
メイドが入れてくれた温かい紅茶が、いつもより心と体に染み渡った気がした。
家族が褒めてくれた日から数ヶ月が経った。
私は、ずっとルゥと頑張ってきて、7歳を迎えた。
7歳になると、ヴィラン家の言い伝えがある。
海の神殿へ行き、水の精霊ウンディーネ様から、ご加護である『ウンディーネのご加護』を授かるのだと、お父様とお母様に手を引かれた。
軽装を好むお兄様までもが、正装していた。そのせいか、とても緊張した。
ヴィラン家にしか習得できない、高スキルを貰い受けることができるのだとお父様が言っていた。
『グレイリィ。ボクまで緊張してきた。』
あの無邪気なルゥまでもが、落ち着かないようだ。
このスキルによって、たくさんのスキル上昇や耐性などがいろいろ強化されるらしいのだ。
この出来事で私は、この家族の中で魔力が最も高い事が、魔力を測定する魔法具によってわかり、お父様とお母様も喜んで、褒めて抱きしめてくれた。
私は、11歳になった。
お兄様の特訓メニューを毎日こなして、剣術と魔法を極め続けた。
「グレイリィ、そろそろ冒険者ギルドに行ってみるか?」
「冒険者ギルド??」
お兄様の手を握り、ルゥと一緒に城下町へ行って、冒険者ギルドに来た。
そこはなんだか、幼いながらも、緊張とか迫力を感じた。
「ははっ、そんな緊張しなくても大丈夫だ。グレイリィ。お前ならきっと俺と同じような冒険者になれる!」
お兄様に励まされるも、あまり私にはわからなかった。
ギルドマスターと呼ばれる人から、書類を渡され、お兄様から冒険者ギルドの登録祝いだと言って、青くてキラキラした魔法ペンをもらった。
魔力を軽く流すとインクが出て書けるのだとか。私はギルドマスターとお兄様に、手伝って貰いながら、私のサインまで書いた。
「じゃあ、これがギルドカードとピンバッジね!」
「身分証代わりにもなるから、失くすなよ?」
そう言いながら、私の服の襟にピンバッジを着けてくれた。
「わかった!」
雑に頭を撫で回す、お兄様だけど、この時は心強く感じた。
「ルゥ、グレイリィを頼んだぞ!」
『もちろん!グレイリィの相棒だもん、ボクにまかせて!』
頼もしいとルゥを見て思いながら、EランクからDランクまでは、お兄様とルゥも一緒にダンジョンの攻略の仕方、罠の見分け方とか
「冒険者は、ただ殺すだけじゃないんだ。時には討伐した物を解体して、ギルドに売ったり。
困ってる人を倒したりするんだぞ。」
この時のお兄様は、とてもカッコよくて、ヒーローみたいだと思った。
冒険者ギルドから部屋に戻ると、いつもは研究室に篭もりきりのお姉様がいた。
「あれ、お姉様がいる」
『ほんとだ、シレッドだ!』
「グレイちゃん、やっほ〜」
お母様とは、また違った意味で、高貴な人らしくない人だ。
「何しに来たの?」
「アカ兄さんから、グレイちゃんが今日冒険者ギルドに登録しに行ったと聞いてね!」
『情報が早いね、さすが、アカバネもそうだけど、えっとシスコン?って言うんだっけ?』
「そんな言葉、どこで覚えたの?ルゥ。」
「あはは!それでね、グレイちゃん。これをプレゼントしに来たの!」
「何これ?」
お姉様の魔法鞄から取り出したのは、小型の何かだった。
「小型の電子機器。これで何かを調べたりできるのよ!あと、これはグレイちゃんの魔法鞄、余程のことが無ければ、満タンになることはないわ。」
お姉様の鞄からいろいろ出てきては、私に渡してきた。この時は、まだなにも分からなかったけど、後に、これがとても便利なのだと、気付いたのは、いつだっただろうか。
それからも、お父様からテントとか外で泊まれるような物。お母様からは、冒険者用の服をもらったり。
お爺様からは、魔導書や冒険者の心得をもらい。
お祖母様からは、薬草や植物の図鑑や私用の薬生成グッズをもらった。
最初は、どれも使いこなせていなかったけど、使いこなせるようにした。
ダンジョンもお兄様と行っていたけど、日々の訓練もあり、ランクDまで上げるのは難しくなかった。
そこから5年が経ち、16歳になり。それでも慢心せず、ランクCからランクAまでの道のりは遠くも達成できた!
さらに2年後、18歳の時。ルゥと私は、特訓・修行・勉強・薬作りのまいにち。1日もサボらず、勉強も全てやって抜けて、ランクはSランクになった。
剣術や魔法もSランクまで上がった。お兄様は褒めてくれたけど、SSランクでお兄様の隣には、まだ立てない。
ルゥも出会った頃よりも、絆は深まったし、強力なスキルも増えたりして強くなっている。
私よりも強いと思う。流石、竜ではあるが、悔しい。
難しい薬学もお祖母様に学び続けて、今では薬草もどこにあるのか、地図を見なくてもわかるようになったり、お祖母様のではなく私の作ったポーションが売られている。
その頑張りと成長を認めてくれたのか、剣術の稽古の後にお兄様から声をかけられて、ダンジョンの統括者をお兄様から任命してくださった。
お兄様のアドバイスを受けながらお兄様の仕事を少し分けてくれるようになったのだ。
私のできることがどんどん増えて、年齢と共に、お姉様から貰った、魔道具で抑えなくてはいけないほどに魔力は増え続けている。
お城の地下に、水の洞窟がある。
そこの洞窟で、私は抑えきれない魔力を、この街の防壁スキルを使って解放する。
この海の街、リズは平和を維持している。
そうだと、この時までは思っていた。
……To be continued
こんにちは、この作品を書いております。
作者のユメウラと申します。
グレイリィとルゥの海旅路
第1話を読んで頂き、誠にありがとうございます。
この先、2人は一体どうなってしまうのか!?
引き続き、1話から4話まで投稿されていますので、お楽しみください。
※8月15日(金)20時以降は、5話と6話まで投稿されています。
この作品を気に入って頂けましたら、評価とブックマークをして頂けるととても嬉しいです。
今後とも楽しんで頂ける作品を目指して行きますので、よろしくお願い致します。
作者・ユメウラ