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深層の滓(しんそうのおり)  作者: 麗 未生(うるう みお)
第一章 錯綜(さくそう)
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錯綜3-3-④:和と浩太の過去の接点

「え、あ、うん。そうだけど?」


浩太は少し戸惑ったような顔をしながらも頷く。


「それって……和と一緒のチームだったの?」

「なんで深見さんがサッカーやってたこと、知ってるの?」


浩太が少し不思議そうに聞き返してくる。確かに今の和からは、そんなスポーツ少女の面影は感じられない。でもその質問で、浩太が和の過去を知っているのは確かだと分かった。


「あ、えっと……和から聞いたの」

「深見さんが? 自分で?」

浩太は眉をひそめて首を傾げる。

「本当に?」


その反応は、“和が自分の口でそんな話をするとは思えない”という色を帯びていた。つまり、和にとって“その頃”の記憶は語りたくないものだということだ。そして浩太は、それが何故なのか知っている。


「同じチームだったの?」

「いや、それは違うよ」

「浩太は、なんでサッカーやめちゃったの?和と一緒にやめたの?」


寧々の問いに、浩太は視線を外す。


「それも……違うけど」

「本当に深見さんが自分の口でサッカーやってたって言ったの?」


今度は朝陽が寧々に質問してきた。


「そうだけど、なにか変?」


寧々は朝陽に向き直って問い返す。


「じゃあ浩太がサッカーをやめた理由も、深見さんから聞いてるんじゃないかと思って」

「教えてくれなかった」


寧々の返事に、朝陽と浩太は顔を見合わせた。浩太がサッカーを辞めたことにも、何か、特別な理由があるということだろうか。


「なら、そんな風に詮索するのは良くないと思うよ。深見さんが自分から話さなかったってことは、きっと理由があるんだ。」

「朝陽も、知ってるのね……?」


浩太も朝陽も、和の過去を知っている。それはきっと全てではないだろうけど。和だけじゃない。そしてきっと浩太にも、人には話せないことがある。みんな、何科を抱えている。


「でも、そうだね。詮索はよくないよね。……ごめん。気になると、すぐに聞いちゃうんだ。悪い癖だってわかってるのに。それで、昨日、和と大喧嘩しちゃったのにさ」

「大喧嘩?深見さんと?」


そっちの方が意外だったのか、二人とも顔を見合わせる。


「うん……」

「ああ、それで今日は深見さんと、全然口きいてなかったのか」


と、朝陽が納得したように頷く。


「そういうこと……」


寧々が両手のひらを上に向けて肩をすくめると、朝陽は小さく笑った。


「でも、珍しいね。あの深見さんが怒るなんて。一体何を言ったの?」

「だって、和ってば、いつも暗い顔して、“人生の不幸全部背負ってます”みたいなオーラ出してるから、つい……。世の中、和だけが不幸じゃないのよって。この世にはもっと悲惨な人、たくさんいるんだからって。」

「……それ、言ったの?」


と、今度は浩太が半ば呆れたように声を漏らす。


「まあ、そのまんまじゃないけど。そんな感じのこと。だって、和が先に私のこと、“無神経”だなんて言うから、つい……」

「それは当たらずとも遠からずだよな」


朝陽が妙に納得したように呟く。


「何よ、それ!」

「まあ、それが紫園さんのいいところでもあるけど」

「それって、一応ほめてるの?」

「もちろん。俺は基本、女性は褒めるべき存在だと思ってる」


朝陽は得意げに腰に手を当てる。


「だから朝陽はモテるんだね」

「俺?全然モテないよ、残念ながら。譲原先輩にも、柏木先輩にも振り向いてもらえなかったし」

「誰、それ?」

「今年の春に卒業した先輩たち。譲原先輩は生徒会長で、才色兼備ってやつ。柏木先輩は、守ってあげたくなるような可愛いタイプでさ」

「好きだったの?」

「好きっていうのはちょっと恐れ多いって言うか」

「何、それ」

「特に譲原先輩は全校生徒の憧れ、みたいな感じだったし」

「ふーん……会ったことないから分かんないや。あ、でも、うちのマンションにこの学校の卒業生住んでるよ。一回エントランスで会ったとき、私の制服見て『明星の子?』って聞かれた。最上階に住んでるんだって。最上階はワンフロア全部になるからお金持、ってことだね」

「へぇ~、誰?」

「えっと……名前、何て言ってたかな。ちょっと変わった雰囲気で、妹連れてた。えーっと、あ、そうだ。確か“吉岡”って言ってた。」

「吉岡先輩?」


浩太と朝陽が同時に驚いた声を上げる。


「なに?有名人?」

「あ、いや、彼もうちの学校卒業生。……まあ、かなり目立ってた。変わってるから」

「変わってる?」

「うん。話し出すと止まらないタイプ。こだわり強いし、浩太も学園祭で捕まって、延々と語られたことあったよな。」

「へえ……確かに、ちょっと変わった人だったかも。エレベーター待ってる時に、“帰国子女”って言ったら、『エレベーターを発明したのは誰か知ってる?』とか唐突に聞かれて……」

「エレベーターの発明者……?」

「そんなの知らないよね?ってかそんなこと考える?」


寧々の言葉に、浩太も朝陽も首を振る。

お読みいただきありがとうございます。

いいね・評価・ブックマーク&感想コメントなど頂けましたら大変励みになります。


こちらの作品に度々登場します「譲原真理子・藍田瑞樹・柏木杏奈」と言う人物は私の書いています「羅刹の囁き」という作品の主要登場人物となります。

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今後ともよろしくお願いします。

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