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深層の滓(しんそうのおり)  作者: 麗 未生(うるう みお)
第一章 錯綜(さくそう)

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錯綜3-3-③:クラスメイトの反応

「どうしたの?」

「だって、近寄りがたい雰囲気、あるじゃん……」

「そうそう、“私一人で大丈夫です”って感じのオーラ」

「わかるわかる。みんな頼ってるのに、それ以上は踏み込ませないっていうか……」

「でもクラスの事は良くしてくれるし、みんな頼りにしちゃっているところはあるし。もっと協力してあげたいって思うこといっぱいもあるんだけどねえ」


皆の言葉に、寧々も心の中で頷いていた。確かに和は、壁を作っている。けれど、本当は、違う顔があるのではないか。

 昔、サッカー部にいた頃は明るくて、誰よりも笑っていたという。きっとそっちが“本当の和”なんだ。


「で、寧々はどうやって仲良くなったの?」

「うーん……とりあえず一方的に喋りまくった、って感じ」


寧々の言葉に、皆が顔を見合わせて笑い合う。


「寧々らしい」

「でも、昨日喧嘩しちゃった。バッチーン、って」


そう言って、寧々は冗談っぽく手で平手打ちのジェスチャーをする。


「マジで!?」

「マジマジ!痛かった~、和って結構力あるみたい」


 その動きに、女子たちは驚きの声を上げた。


「えぇ!?深見さんが手ぇ出したの?」

「そうだよ、まあ、私もしっかりやり返したけど」


そう言いながら、自分の頬を軽く押さえる寧々。その言葉に、周囲のざわめきがさらに強まる。


「信じられない。あの深見さんが?」


目を丸くしたまま、女子たちの視線が一斉に和へと向かう。ひとり静かに弁当を食べている和は、気づいているのか、いないのか、こちらを向こうとはしない。


「嘘でしょ?やっぱり信じられない……」


視線を戻した一人が、そう呟いて首を振る。


「一体、なんでそんなことになったの?」

「うーん、一言じゃ説明できない。でも、ちょっと言い過ぎたみたい」


そう言って、寧々は机に突っ伏した。


「ああ、寧々ならあり得るよねぇ」

「うんうん、寧々なら。……でも、あの冷静な深見さんが手を上げるなんて、よっぽどのことだったんだね」

「うん……後悔してる。って、なんで私“なら”あり得るのよ!」

顔を上げた寧々は、抗議するように頬を膨らませる。

「だって、ねぇ?」

「そうそう。寧々は思ったこと全部すぐ口にしちゃうし」

「えぇっ? みんなもそう思ってたの?」


寧々は大げさに肩を落とし、しょんぼりしてみせた。


「大丈夫大丈夫。そこが寧々のいいところなんだから」

「でもさ、それって逆に言えば、深見さんが寧々には心を開いてるってことじゃない?」

「ああ、それ、あるかも!」

「……そうなのかなあ。むしろ、悪くなっちゃった気がするけど」


寧々が少し声を落としてそう言うと、みんなは口々に慰めてくれた。気休めかもしれないけれど、少しだけ心が軽くなる。 


 五時間目の授業は体育だった。男子はサッカー、女子はダンス。男子はグラウンド、女子は体育館での活動だった。別に決められているわけではない、サッカーでもダンスでも好きな方を選べばいいのだが、何故か男子と女子に希望が完全に分かれてしまったのだ。寧々はサッカーでもいいなとは思ったのだが、女子立ちは全員「陽に焼けるから嫌だ」と言って選ばなかったようだ。勿論、和もだ。


 和がサッカーをやっていないので、寧々もダンスにした。アメリカにいる時も友達とよくダンスはしたので好きではある。ジュニアハイスクールの頃はチアダンスにも憧れたりしていた。

 授業が終わり、片付けをしていると、体育委員の朝陽が浩太と一緒にボールを体育館の倉庫に運んで来た。


「今日のシュート、キレてたな」


 朝陽が楽しそうに話しかけている。どうやら練習試合でもしていたようだ。そういえば、もうすぐ球技大会があるという。浩太や朝陽は、確かサッカー種目に出る予定だ。


(女子にサッカーがあったら、和も出ていたかも……)


ふと、そんなことを思う。


「やっぱ経験者だな。浩太のシュート、切れがある」

「今日は偶然うまくいっただけさ。経験っていっても、小学校でやめてあれからやってないし」

「でもエースストライカーは、やっぱり浩太だと思うよ」

「いや、それはまだ分からないよ。センターフォワードは体格のいいやつの方が向いてるし」

「それでも、俺は浩太を推薦するけどな」


そんな会話を交わしながら、二人は倉庫の奥へと進んでいった。


(浩太もサッカーやってたんだ)


 体育館の隅でその会話を聞いていた寧々は、気になって仕方がなかった。和も小学校までサッカーをしていた。何か関係があるのだろうか。浩太と和は高校に入る前からの知り合いのような感じがしていた。もしかしたら同じチームにいたのかもしれない。気がつくと、寧々は浩太たちの背後にと足を向けていた。


「ねえ、浩太ってサッカーやってたの?」


寧々の声に二人同時に振り返る。

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