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第1話「ブラック企業から異世界転移したら、俺が“世界を変える存在”らしい」


「――汝、この世界を変えし者なり」


俺の名前は加藤かとう

某ブラック企業でマネージャーをしていた、三十路のサラリーマンだ。


連日の長時間労働で、ついに倒れて病院送りにされた……と思ったら


神殿の中心、青白い魔法陣の中に立たされた俺に、妙に偉そうなローブの魔道士がそう宣言した。


……ああ、まただ。意味の分からない指示。無茶ぶり。責任押し付け。


まるで俺の職場そのものじゃねえか。


「すまない、確認だけど。ここ、会社じゃないよな?」


「……?」


魔道士は困惑の表情を浮かべる。そりゃそうだ。俺も困惑してる。


というか、なにこれ。異世界転移ってやつ?

ついさっきまで俺、社内のトラブル対応してたはずだぞ。スマホもスーツもないし、これがアニメでやっている異世界転移ってやつか?


「貴様……勇者ではないのか?」


「いや、ただのブラック企業のマネージャーです」


神殿内が一瞬しん……と静まり返る。


「は……?」


「人材配置、スケジュール管理、リソースの最適化、クレーム対応、資料整理が得意です。たぶん魔法は使えません。体力も一般人並みです」


「……帰れ」


即座に言い放ったのは、たぶんこの国の王らしき男だった。


まあ、そうなるよな。


「……で、帰れるんですか?」


「無理じゃ」


魔道士が真顔でつぶやく。いや、ちょっとは申し訳なさそうな顔しろよ。


「仕方がない。せめて、王都で職を得よ。お前にできることなど知れたものだろうがな」


王国の騎士につれられ神殿から少し歩き王都に向かう


「よし、これからがんばれよ」


そう騎士が送り出してくれたが、ここからどうしろっていうんだ。


とりあえずあたりを探索するか


王都の中で割と大きい建物があることに気づいた。


とりあえず入ってみると冒険者ギルドだった。


「魔法使えなさそうだし俺には縁がなさそうだな」


そうつぶやくと肩をたたかれたので振り返る


そこには優しそうな頭の寂しいおじさんがいた。


「お兄さん、身なり的に新人冒険者かい?」


さすがにこの布の服はどこからどう見てもルーキーだと思われるよな。


「すみません、初めてここに来たのでなんにもわかりません」


「そうかそうか!ならちょうどいい、すこし手伝ってくれないか?お代は弾むぞ!」


特にやることないしいいかもな、生きるためにお金貸せが無いといけないし。


「じゃあとりあえずやってみます」


「よし!そしたらついてこい」




ギルドのおじさん――名乗らなかったが、あとで「ギルドの受付主任」だとわかった――に案内されたのは、ギルドの裏手にある倉庫だった。


「さっき、ちょっとした配送ミスがあってな。荷物の仕分けがぐちゃぐちゃなんだ。悪いが、番号とタグを見て並び替えてくれ」


「ああ、それなら得意です」


ほっとした。体力仕事かと思ったけど、仕分けとか管理ならまさに俺の本領だ。


段ボールの代わりに木箱、バーコードの代わりに魔力で光るタグ――異世界仕様ではあるが、要領は同じだった。


俺はひとつひとつの箱を確認しながら、カテゴリ別、納入先別に分類していった。途中でタグの色と形に規則性があることに気づき、即座に棚の配置も変えた。


「お、おい……あれ見ろよ。あの人、めちゃくちゃ手際よくねぇか……?」


「さっきまでぐちゃぐちゃだった倉庫が……なんか整理されてる……」


ギルドの職員らしき獣人たちが、遠巻きにこっちを見てざわついているのがわかる。中には毛並みの整った猫耳の女性や、筋骨隆々の犬系の青年もいた。


「よし……これで終わりっと」


俺が最後の箱を運び終えると、頭のおじさんが目を丸くして拍手してきた。


「素晴らしい!こんなに綺麗に仕分けされたのは初めてだ!……お兄さん、本当に初心者かい?」


「こういう資料整理はなれているので……」


思わず苦笑いしながら言った俺に、おじさんはますます目を輝かせた。


「どうだい、ウチのギルドで本格的に働いてみないか?冒険者じゃなくても、こういう裏方の仕事は山ほどあるんだ」


まさか、こんなすぐに仕事が見つかるとは思ってなかった。

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