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ダメですわ

 我に返って慌てて(あと)を追ったが、ロイターはすでに次の遠征先へ向かってしまっていた。いや、元の遠征先に戻っていったというほうが正しいのかもしれない。

 担当教師に尋ねたところ、まだ騎士科の遠征は終わっていないとの回答を得たくらいだ。緊急事態だと遠征先から許可を得て戻ってきていたことまで教えてもらったが、ヴァイオレットからすれば不思議でならない。

(……わざわざ遠征先から戻ってくるほどだと言うことなの?……)

 現在の状況は、悪役に仕立てあげたいラルカと、悪役に仕立てられているヴァイオレットの攻防戦のようなものだ。もちろんそこに多くの思惑が絡んでいることは言うまでもないが、それでもヴァイオレットは犯罪に手を染めるつもりはない。

 報告に上がっているのはその辺りまで、(あと)は学園内に広がる噂の内容程度であり、ヴァイオレットの計画はまだ知られていないはずだ。いや知られていないというよりは、状況に流され、まだ計画という計画が立たないというほうが正しい。

 マデラインやミラに搔き回されているとしても、それはそれであり、敵や味方という考えかたではなく、如何(いか)瑕疵(かし)なく婚約破棄となるのかが焦点だと考えていた。

 だからこそ相談できる相手が卒業していることもあって、ヴァイオレットは一人この問題に取り組んでいる。それを外部から圧力をかけようとするなど不可能に近く、けれど幼馴染三人であれば可能にしてしまいそうな予感もあった。

 セルジオは海洋伯の次男であり、学園を飛び級し、他国を飛び回って外交に近い仕事を任されている。本来であればラルカと同じ学年だ。

 フェルトとフェリアは辺境伯の双子で、互いに能力が高く、どちらが後継となるかで常に揉めている。あまりに揉めて、一時期はロイターを後継にという話があったほどだ。学年はセルジオより二つ上で、現在はそれぞれ辺境伯の(もと)で辣腕を振るっている。

(……三人が協力し合ってしまったら、わたくしでは太刀打ちできませんわ……)

 ヴァイオレットとて教育は受けてきているが、その三人と比べれば天才と凡人ほどの差があった。

 恐らくその三人の誰かが報告者と密通して、今回の状況を知ったのだろう。マデラインの介入で王家も婚約について動き出していると知って、王命は何だったんだと(いきどお)っているのが目に浮かぶ。

(……けれど、ダメですわ……)

 これはヴァイオレットの権利だ。

 思惑だとか、外野だとか、何だかんだあったとしても、ヴァイオレットだけが対処できる。

(……わたくし、まだ何もしておりませんし、まだ終わってなどおりません……)

 パンッと頬を叩き、ヴァイオレットはすべきことを()すため学園を(あと)にした。

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