15日
今日を逃したら来月まで載せられない。
今日は15日だ。
15日は座敷童子の会議がある。といっても内容はただの世間話だが……
場所はもちろん私の部屋。理由は簡単で、人がいなくて誰にも迷惑がかからないからだ。
この場合の迷惑とは直接身体に害を与えないことを言う。
私は面倒だなと思いつつ、せっせと物を片付け始める。アニメ関係のものは隠しておかないといけない。
一般のもののけにならアニメ文化の素晴らしさを語り、アニメに漬けにして仲間に引き込むのだが、たまに大の人間嫌いが来るので気が抜けない。機嫌を損ねればここの住民に被害が及ぶ。
見つかったら不味いものを押し入れにしまい、念の為に襖の裏に護符をはっておく。これで準備万端だ。
そして夕方、もう何度目かわからない会議が始まった……が
「まさか……これだけとは」
私は集まった人を見てため息をつく。
今日の出席者は私を含めて3人。凪子とあやめ婆だけだ。あやめ婆は私達の大先輩、1603歳の座敷童子だ。飽き性でたびたび姿を変えていたがここ数年は可愛い今風の女の子におさまっている。
どうやったのか茶髪のゆる巻きの愛されキャラ(自称)を決めていた。
「みんな忙しいのかなぁ」
凪子が退屈そうにこぼす。
「仕方がなかろう。自由参加じゃからな」
あやめ婆はフワフワと部屋を漂っていた。
見掛けと口調のギャップが甚だしい。
「あやめ婆は久し振りだよね。ここにくるの」
「そうじゃな。ここ数十年はアメリカにおったからのぉ……」
あやめ婆は懐かしむように目を細めた。
彼女は宇宙人の国にけんかを売りに行っていたのだ。
「結局沙夢は一度もあやめ婆のとこ訪ねなかったね」
「そうじゃとも。凪子はよくきてくれたというに……」
あやめ婆は非難のまなざしを私に向ける。
「……遠いじゃない。それに人も多いし、外国語しゃべれないし」
私はついっと目線を横にそらした。
面倒臭かった、理由なんてそれ以外ない。
「座敷童子の体でいけば半日でつくじゃん。それに座敷童子なんだから人に見えないのに」
だから話す必要なんてないよ、と凪子は半笑いを浮かべる。
「ぬしが来るのを指折り数えておったのにのぉ」
「こうやって会えてるんだからいいじゃない」
「せっかく沙夢ちゃんに観光地を案内してあげようと思ってたのに」
凪子はプウと頬を膨らませた。
「……どこか行きたいんなら。ついていってもいいよ」
私は自分で淹れたお茶を飲み干す。
「そういう問題じゃないのに~」
凪子がボソッとそう呟いたが私は聞こえないふりをした。
その後2、3時間話すと会議は御開きになった。
私は隠していたアニメ類を出しながら、凪子の言葉を考える。
たまには旅行もしないとな
世の中は行楽シーズンで身軽な座敷童子はどこでもいける。
あ、こんなとこに昔見てたビデオが……
旅行計画はひとまず隅に追いやられ、私はビデオをデッキに入れた。
何が入ってるのかな……?
15日は月の真ん中でみんな暇だから。そんなノリで座敷童子たちは生きてます。