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ショートショート4月〜5回目

ふくぶくろ屋

作者: たかさば

 いらっしゃいませ、いらっしゃいませ!

 こちらはふくぶくろ屋でございますよ。


 おやあなた、いいモノを持っておりますね。

 どうです、このふくぶくろとあなたの思惑、交換しませんか。


 この袋の中には、いろんな人がいらねえやと言ってほっぽり出した福が詰まっておりましてね。

 …いやいやイヤイヤ、いらないといっても、決してつまらないモノなんかじゃございません!! 


 そうですね、たとえば…納豆のタレが二個入っているとか、転んだおかげでハトのフンを浴びずにすむとか、評判を下げるような入力ミスがきっかけとなって思いがけず有名なクリエイターと縁がつながるとかそういった感じのやつです。


 …はあ、いまさら小さな福に出会っても何も変わらないといいますか。

 残念です、あなたの底意地の悪い計画とちょうどいい感じに過不足がなくていいと思ったのですけれど。


 そうですね、ライバルを陥れる計画がうまくいくといいですね!

 長年の恨みが晴らせることをお祈りしておりますです、ではごきげんよう。




 いらっしゃいませいらっしゃいませ!

 こちらはふくぶくろ屋でございます!!


 おやあなた、いいモノを持っておりますね。

 どうです、このふくぶくろとあなたの諦め、交換しませんか。


 この袋の中には、いろんな人がショボすぎんだろと言って投げ捨てた福が詰まっておりましてね。

 …いやいやいや、捨てたといっても、決して使えないモノではありませんよ?


 そうですね、たとえば…マックのハッピーセットのおもちゃがかぶらないとか、横入りされて清算が遅れたおかげで面倒な知り合いに遭遇せずにすむとか、間違い電話をかけてしまってぺこぺこと頭を下げていたら人事の人に見られててそれがきっかけになって前々から希望していた部署に配属されるとかそういった感じのやつです。


 ……ありがとうございます!!

 よかったです、あなたの途方もない虚無感がねえ、ちょうどいい感じに過不足がなくていいと思ったんですよねえ。


 きっと明るく前向きになれると思いますよ!

 新しい可能性に気づいて道が開けることを心からお祈りしております、ではごきげんよう。




 いらっしゃいませ~いらっしゃいませ!

 こちらはふくぶくろ屋でございますよ。


 おやあなた、いい物を持っておりますね。

 どうです、このふくぶくろとあなたの妄想、交換しませんか。


 この袋の中には、いろんな人がドでかい富に手をのばした時にこぼれ落ちた福が詰まっておりましてね。

 …いやいや、少々薄っぺらくて軽いですけど、決して意味のないモノではありませんから!!


 そうですね、たとえば…半額のホタテを買って焼いて食べたら小さな真珠が入っていてテンションが上がるとか、バスに乗り遅れてへこんでたら高校の恩師に会って守護霊になってもらえるとか、引越しした先に友好的な異星人が住んでるとかそういった感じのやつです。


 …はあ、妄想がなくなったら創作のすべを失ってしまうから遠慮しておくといいますか。

 いやいや…あなたの妄想こそが、創造を阻んでいるものなのかもしれませんよ?

 おかしな記憶の染みこんだノド越しの悪い被害妄想を手放したら、自由度の高い創作ができることだってあるんです。


 いかがです?またとない機会だと思いますよ?

 今までかなり相当長いこと妄想を利用して創作を続けてますけど、ここらへんで一度も注目を集めたことがないという現実に気がついてもいいと思うんですよねえ。


 ……ご決断、ありがとうございます!!

 あなたのおかしな妄想、確かに受け取りましたよ!!


 こういうのはわりと需要が高くてねえ。ありがたいので…もうひとつおまけをつけちゃおうかな。

 …あ、これが良いかな…追い風。勢いがついて、気持ちのいいスタートが切れますよ。


 そうですね、間もなく、いい感じになると思いますよ。

 小さな福が続けば気持ちも明るくなるし、見える世界も変わってきますもん。

 思う存分、執筆をお楽しみいただけると思います。今までやってきたことは無駄ではなかったことをしみじみと感じてくださいね。


 今後のご活躍を心から応援しております、では、ごきげんよう。




 さてさて……、そろそろ店じまいしましょうか。


 今日のお客さんは、そこそこのフリーライターと、疲れ切っているプロデューサーと、くさっている文学青年でした。


 ちょっとこちらの見通しとは違う感じになりましたが、概ね満足できて良かったです。

 縁を切れそうだし、縁が繋がりそうだし、なかなかいい感じの流れが仕込めたと自負しておりますよ。


 明日もこんな感じでいい仕事ができると良いですね。


 良い縁がつながるよう祈りながら、私は小さな福の山をつついて…ふくぶくろを作り始めたのです。 


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