僕の彼女は二次元 5
5話
いつもと変わらない部屋の中、僕の作ったチャイ・レイが居る。
そして毎晩作ってくれる唐揚げを今日も弁当として会社へと持って出かける。
「行ってくるよ…」
「行ってらっしゃいませ、秀平さん」
いつもチャイ・レイに送り出してもらう
さすがに、唐揚げも飽きてきたな…そろそろ違うレシピをダウンロードしないと…量の設定は二人分、食べ無いけどチャン・レイの分もテーブルに置いて一緒に食べる。
結局、ロボット…ご飯は食べない、その分は次の日の弁当
今日は週末…明日はやっと休みだな、休みだからと言って、何処かに出かけるでもなく、ただ家でゲームがチャイ・レイのメンテナンス、色々と不具合があるからな…。
会社に向かう途中後ろから声がした。
「おはよー羽貫君!」
「おはよー相染さん…」
「今日、仕事終わったら一緒にご飯でも食べない?気になってるお店があってね、1人だと淋しいから羽貫君、良かったらどうかなって…」
いきなりの、食事会の誘い!
友達になっての直ぐに誘って来るなんて。
「うん、良いよ!」
「良かった!じゃ、あ終わったら会社の外で待ってて!」
手を振って、僕より先に会社へと入って行った。
10階、僕の勤めるオフィス…
社員が忙しく働いているなか、僕もパソコンを見つめながら作業していると
「よっ、羽貫!…またお袋さんの弁当持ってきてるのか?いい加減、母離れしたらどうだ?彼女でも見つけて、お袋さんを安心させたらどうだ?」
同い年なのに、ものすごく上から目線…やっぱり嫌いだな岩瀬のヤツ…
岩瀬は僕のディスクの角にピョンと座り
「昨日、羽貫と相染さんが一緒に帰って行ったところ見たんだけど、付き合ってるんじゃないよな…」
何処で見てたんだよ…
「イヤ、そんなんじゃないよ!たまたま、帰りが一緒になっただけで、帰りの方向も同じでそのまま帰ったよ」
「なら、良かった…俺、相染さん狙ってんだ」
…相染さんはお前を嫌ってるけどな…。
「今夜の合コンで、ゲットするつもりだったけど、親が遊びに来るからって断られたよ…でも、またチャンスを狙って、今度は二人っきりの食事に誘うかと思ってるよ。」
岩瀬、なかなかしぶといな
「ゲットした時はお前にも報告するよ!」
座っていたディスクから降りて、僕の右肩を軽くポンと叩いて去っていった。
「………」
頑張ってくれ…って、言うか無理だろうけどね。
今日、仕事終わりに相染さんにこの事を話したら何て言うのかな…
今日も仕事を終えて、一階のフロアーから外へと出る、待ち合わせとしている場所へと
まだ来てない。
30分くらい待ったのか、相染さんが会社の自動ドアが開いて出てきて、小走りしながら僕の元へと来て
「お疲れ様です、待たせちゃったね」
とニコッと笑顔が僕の顔に向けた。
「僕もちょっと前に、ここに着いたから問題ないよ。」
「あ~良かった!お腹減ったね!行きましょ」
「うっ、うん、行こ」
「会社の人にあまり見られたくないから、ちょっとダッシュ!」
と僕の右手を掴み、駆け出した
えっ!手…手を繋いじゃった!
僕の右手が相染さんの左手の温もりを感じていた。
これが人の温もり…
何処に走って行ったのか…手を離れた時には「ここは何処?」
「だいぶ走ったね!」
楽しかった!何だか楽しかった、心がワクワクした、これってもしかして…
「さっ、着いたわよ」
大通りから少し外れたお洒落な建物…
この綺麗なお店に僕みたいなのが入って良いのかな?
少し躊躇していたら
「早く入ろうっ」
また、相染さんの手が僕を引っ張ってくれた
「いらっしゃいませ」
店員が空いている席まで案内をしてもらい、奥のテーブル席へと座る。
「雰囲気の良い店よね!」
赤茶色したレンガの壁で、いかにもフランス料理の店と言ったところ。
目をキラキラとして店内を見回す相染さん、何だかデートみたい…これがデートだったら僕は今日最高な1日なんだろうな…
店員が持ってきたメニューを見て
「これ美味しそう!これも良いなぁ~」
など話して楽しそうにメニューを見て
「羽貫君はどれにするの?」
「えっ!」
相染さんに見惚れてしまって、選んでなかった。
「じゃあ…これにしよっかな」
メニューを選ぶのに優柔不断と思われて、しらけさせるのも嫌だからここは目に入ったのを選んだ
「へぇ意外」
白魚のムニエル…しまった、肉を食べたかった。
「じゃあ、私はビーフストロガノフにしょっ!」
あまり飲んだことの無いワインをもらい
「今日は同僚との友達になったお祝いに乾杯!」
相染さんがグラスを突き出した。
「乾杯…」
僕は照れながらグラスを合わせた。
回りから見たら僕達は恋人に見えるかな…
食事をしながら色々会話をする中
「ねぇ、これちょともらって良い…」と僕の食べている白魚のムニエルの一部を食べた
「あっ!これ美味しいね!ねえ、このお肉も美味しいよ」
と言って相染さんは自ら肉を切り取り僕の口元へ運んできた。
えっ!良いの!
相染さんの口に付けたホークが、僕の口に…
「どうぞ」
誰も僕達の事を見ていない客達を気にしながらも、恥ずかしながら僕はその肉のサイズに合わない位大きな口を開いて食べさせてもらった。
「どお?」
「モグモグ…うぐっ」
肉がでかい
「おっ美味しい…」
本当は、恥ずかしのと緊張と飲み慣れないお酒を飲んだせいか、味が分からなかった。
食事をしながら、色々と相染さんは話してくる。
「この前ね…」
「あの人がね…」
「あっそう言えば…」
こんなに相染さんて話しをする人なんだ…最初の頃はすれ違うと軽く会釈するだけで、相染さんのいる部署に行って、要件を伝えても素っ気ない態度…あの頃の相染さんと全然違う、本当は友達になりたかったんだろうな。
2時間いや3時間はこの店で食事をしたのに、あっという間の時間が何を話したのか覚えてなかった。
店を出て家へと帰る道途中まで、相染さんと一緒に歩く
「私はこっちの方向だから、じゃあね!」
「うん!じゃあ…」
「今日はありがと!また今度一緒に食べに行こ」
と手を振って僕に背を向けて歩き去っていった。
僕は
「うん!」
相染さんの背中を見ながら小さく手を振って、しばらく見送っていた。
6話に続く