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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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パニック関連

ゾンビになって、みんな仲良く

作者: よぎそーと
掲載日:2022/09/24

「うああ…………」

 己の口からもれる音。

 それを疎ましく聞きながら、男はさまよっていた。



(なんでこうなったんだ)

 不明瞭ながら意識はある。

 考える事が億劫になってどれくらい経っただろう。

 それでも男は動いている。

 生きてるのかどうかも曖昧なままに。



 それは突然やってきた。

 のろのろと歩く多くの者達が。

 そいつらは人々に襲いかかり、その身をかじっていった。

 それを見て人々は逃げだした。

 男も例外では無い。

 その場から急いで離れていった。



 だが、運悪く隠れていた者に襲われた。

 その時に体を噛まれた。

 食い殺されることはなかったのは運が良かったのだろう。

 そのままどうにか走って逃げることが出来た。



 だが、そこから意識が朦朧としていった。

 考えがまとまらない。

 思考することが出来ない。

 自分が何をやってるのか分からない。

 何をすれば良いのかも分からない。

 ただ、何も考えずにさまよい歩いていった。



 そうして近くの町にたどりつき。

 驚いく顔を向けてくる者達を見て。

 男は襲いかかった。

(え?)

 そんな自分に驚きながら。



 体が動かない。

 思い通りにならない。

 襲った者を噛みつくのを止めることが出来ない。

 そもそも意識がまともに働かない。

 何とか自分のやってることを理解するのがやっとだ。



 それを止めようとして引き剥がされる。

 そんな者達にも襲いかかった。

 何度も何度も噛みつこうとした。

 なんでそうするのか分からないまま。



 やがて、噛みついた者も周りにいた誰かに噛みつき始めた。

 どんどんとそれが広がっていった。

 不思議とそんな者達に親近感を抱いた。

(ああ、仲間だ)

 ぼんやりした頭に、そんな思いが浮かんできた。



 その仲間と共に歩き出す。

 出会った人間に襲いかかっていく。

 噛みついて噛みついて、何度も噛みついて。

 そうして仲間がどんどん増えていく。

 それが嬉しかった。



 何となく抱いていた空虚感。

 胸の中に大きな穴があるような感覚。

 それが消えていく。

 仲間の存在が埋めてくれる。

 だからもっと仲間を増やしたくて、様々な人間に噛みついていった。



 仲間がかなり多くなった。

 楽しかった。

 一緒にいる仲間の存在はとても大きい。

 今までに感じた事のない幸せを味わった。



 そんな男の前に警察があらわれた。

 それらが一斉に銃を撃った。

 仲間の先頭に立っていた男は、銃弾を受けた。

 だが、痛みは感じなかった。

 体のどこかに当たった感触はあったが。



 その衝撃を気にする事もなく、男は警察に近づいた。

 近くに居た警察官に掴みかかった。

 そいつにも噛みついた。

 これでいずれ仲間になると思ったら嬉しくなった。



 もっともっと仲間を増やしたい。

 何よりも仲間が欲しかった。

 どうしてそう思うのかも分からないままに。



 仲間がいればいい。

 それだけで幸せだった。

 ただただ仲間が欲しかった。

 仲間、仲間、仲間…………。

 仲間の存在が全てだった。



 そんな男の歩みは、ある所で止まる。

 立ち塞がる戦車と装甲車。

 銃を構えた自衛隊員。

 それらが一斉に攻撃を仕掛けてきた。



 拳銃とは比べものにならない強烈な攻撃。

 それを受けて、さしもの男も吹き飛んだ。

 戦車砲の攻撃は受けてないが、体中を銃弾が貫通した。

 手榴弾の爆発にも巻き込まれた。

 まだ生きてるが、まともに動く事は出来なかった。



 それでも男はかまわなかった。

 周りにはまだたくさんの仲間がいる。

 それだけで充分だった。



 ただ、これ以上仲間を増やせない。 

 それだけが残念だった。



「仲間…………」

 体を吹き飛ばされた男の口からもれる。

 仲間の存在を求める。

 そんな男に自衛隊員がよっていく。

 その姿を見て、男は不満を抱いた。

「なんで…………」

 そいつは仲間ではない。

 まだ噛んでない。

 噛んでないから仲間になってない。

「なんで、仲間じゃないの…………」

 それに答えず、自衛隊員は男の心臓を撃ち抜いた。

 頭も。

 男はそれでようやく死んだ。



 後日、この事件について政府発表が行われた。

 ゾンビのように人々に襲いかかる者達。

 噛まれることで感染することから、それはなんらかの微生物によるものではないかと考えられた。

 また、その行動から、食欲が噛みつく原因かと考えられた。

 しかし、研究結果は意外な原因を提示する。



「彼らは仲間を求めていました」

 研究結果の発表において、事実が伝えられる。

「それは感染者の発言からも想像できます。

 彼らは自分と同類の仲間を求めてました」



 原因となってるのは微生物だった。

 それに感染した者は、同じ感染者を求めた。

 感染した者を仲間と認識していった。

 そんな同類をただただ増やそうとしていった。

 同じ微生物を内包する存在を。



 食欲ではない。

 何かを食べたいわけではない。

 ただ、感染のために体に傷をつけた。

 その為に噛みついた。

 噛みついて、唾液を通して相手の体にうつる。



 仲間を求めてのことだった。

 微生物に感染した者達の行動は、全てはこれが理由だった。



「微生物に感染された者は、同類を求めます。

 自分と違う存在を認めません」

 だから襲いかかる。

 仲間にするために。

「そうして仲間にすることで、安心感を得るようです。

 感染者を調査した結果、そのような反応があるのを確かめました」



 仲間だけを求める。

 仲間以外は許せない。

 だから感染者は襲いかかってくる。



 そのおぞましさに、発表を聞いたものは戦慄をおぼえた。

 仲間を増やす。

 その為だけに感染者を増やしたことに。



 その他にも様々な特徴が示された。

 痛みへの異様な耐性。

 体が損傷しても動くほどの強靱さ。

 人間の限界を超えた力の発揮。

 これらも大きな脅威である。



 だが、これらを使う目的。

 そちらの方が多くの者達におぞましさを感じさせた。



 仲間。

 ただそれだけを増やす。

 その為だけに行動する。

 生きることへの執着でもなんでもなく。

 同類を増やす事だけを求めるということに。

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