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第八話 ポンコツ寮

在校生にこの学園のことをいろいろ聞いてみた結果さまざまな情報を教えてもらうことができた。

まず学園はとても広くて、王都一個分の広さがあると言われており地図なしで迷い込めば道に迷うのは確実だ。


 それとお金の入りがとても良く、メイド服を身に着けた女性が総勢50人以上はいるらしい。

そのためか聞き込みをしているときに何度もメイド服の女性に挨拶された。

 ここまでメイドさんが居るとちょっと怖い、なので小雪の背中に隠れてやり過ごす。

「……挨拶され過ぎで頭がおかしくなりそう」

「これくらい普通だよ」

 小雪とジェフは堂々とした態度で廊下を歩き、その姿は私とは別世界の人みたいだ。

 私はおどおどしながら、小雪の背中にくっついて歩いた。

その姿は周りのメイド服を着た女性たちには姉妹みたいで可愛いと言われ、小雪も恥ずかしくなったのかジェフが先頭になり歩くことになった。


あと寮についても聞くことができたのだが、どうやら仮寮は男女同室でみんな一緒に寝ることができるらしい。

ただ疑問なのは、なんで同室と言われた瞬間小雪の顔が曇ったのだろう。そこだけがリテシアとっては最大の謎だった。


 さまざまな場所での苦難を乗り越え、3人はやっとの思いで自室にたどり着いた。

 ドアを開けて驚いたのは、部屋の広さだった。今まで見た事もないくらい広く、大人でも10人はゆうに入れるだろう。

 家具もすごいもので、3人分のベットには天蓋カーテンが張られていた。

 その他には、クローゼット3つにタンス3つ、それに本棚が部屋の隅に3つ並べて置いてある。

内装も白を基調としたシンプルめのもので統一されており、とても居心地の良い環境だった。


 しかし、この部屋には最も重要な物が無い。

「この部屋……明かりがないんだけど!!!」

 そう、この部屋、照明がないのだ。いやあるには有るんだけど、ランタンなのだ。それも魔力を通して灯るという何とも不便なやつ。

「ん〜、そればっかりは仕方ないんじゃないか?この学園、魔術学校だし」

 小雪は今の今まで忘れていたのか苦笑いをしてベットに寝そべる。


「まっ、いつなんどき、明かりが使えるかなんて保証は無いし、これはこれで良いんじゃね?」

 ジェフは明かりが使えない事をむしろ楽しんでいるように見える。

 小雪はジェフの一言に不満げながらに納得しつつ一つの宣言をした。

「……後で抗議する!校長に」

 固く握りこぶしを作り決意を固くするのだった。



 その夜、リテシアは夢を見た。現実のようにも見える不思議な夢。


 あるところに一人の少女が居た。

 その少女は無知であった。故に人に騙され続けた。

 しかし、少女はみんなを信じ続けた。

 少女にとって諦めるという選択はなかった。いや、そんな事はとっくの昔にできなくなっていた。

 だから少女は願った。きっと皆の心は溶けて、優しくなってくれると……

 しかし、少女は最後に絶望した。信じた者に裏切られ、希望を捨てた。

 希望を捨てた少女からは黒い霧が立ち込め、辺りの人間は死んでいった。

 昔の少女なら、きっと泣いていただろう……

 でも、今の私は笑った。友達と笑い合うように、大きな声で嘲笑った。

 死者を笑い、愚者を殺し、いつの間にか少女の服は赤く、そして黒くなっていた。

 手からはあらゆる希望が零れ落ち、いつしか涙を流すことはなくなった。

 ここは高みである。目指したはずの憧れ、手を伸ばしようやく届いた高み。

 なのに……

 私は何の為に……憧れたのだろう。

 私は何の為に……あの子と旅をしたのだろう。

 何故?何故?何故?何故?こうなってしまった。

 いつ、私は間違えたのだろう。

 何も思い出せない私は灰色の世界で膝から崩れ落ち、崩れた瓦礫の破片を手で掬った。



「はっ……はあはあ……今のは?……ここは?」

 辺り一面が灰色の世界、私は気が付いたらここに居た。

 嘘偽りなく、本当に気付いたら居た。ここは夢なのだろうか。分からないことだらけ

 で、頭はパンクしそうなる。


 取り敢えず私は歩くことした。このまま座って考えていたら、本当に頭がパンクするかもしれない。

 そして、歩くこと数分、歩いても歩いても、灰のようなものと崩れた瓦礫だけだった。


 いや、実際は崩れた建物もあるがそれくらいしか無かった。

 ふと、自分の姿が気になった。夢の世界ならもしかしたらすごく可愛くなっているかもしれない。そんな淡い期待を抱きつつ崩れた建物のガラスに自分の姿を写した。

「……普通です。夢なんだからもっと変わっても良いと思うんだけど……」

容姿、端麗、まんま私だった。


 ただ少し違うのは服装が真っ赤な服になっていて、小雪に綺麗だと言われた髪が銀色ではなく、黒く染まっていた。

「私ってやっぱり黒髪は似合わないんですね」

 誰も居ない、灰色の世界でただ一人絶望した。


「?」

 ふとガラスで姿を確認し終えた後だった。私の後ろを素通りする誰かの気配を感じた。

それが誰なのか気になり、私はその気配の主人を探すことにした。

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