第七話 食堂での食事
白いひらひらした服を着せられたリテシアは不服そうにそっぽを向いている。
「可愛いな……普通にめっちゃ」
ジェフがこっちを見て、笑みを浮かべる。
「……居づらい」
「すごく可愛いよ!うん」
小雪が褒めてくれるがそういう事じゃないとリテシアはとても不満そうに地図を開く。
くぅ〜と唐突にお腹の音がなってしまった。
そういえば、家を出る時何も食べずに出て行ってしまったので朝から何も食べていない。
「そうだ!お腹減っちゃっしさ、そろそろご飯にしない?」
「お、そうだな、確かバイキング形式何だっけか?」
小雪が咄嗟に出したアイデアのおかげで食堂に行くことになった。
「うん、そうだよ!それに小雪とジェフとのほぼ初めての食事だね(ウルフはカウントしないとすると)」
何を食べようかを今から悩んでいるとまたお腹がなってしまうそうだ。
恥ずかしそうにお腹を押さえて、食堂まで歩く。
ここから食堂まではそこまで遠くはない。おそらくは歩いて数十分程度、私達は再び地図を開いて廊下を歩いた。
食堂に着くと周りの生徒の視線が刺さってくる。おそらくこんなに早く終わった人は私達が初めてなのだろう。
物珍しいのか、嬉々としてこちらを見てくる。
座席に座ったあとも目線があり、緊張で食べられる雰囲気ではない。
そんな中でジェフがその雰囲気を壊してくれる。というか全く気にしてない。
「よし!何から食べるか、まずはやっぱスープか」
「うん!スープから食べよ」
「小雪、スープは食べるんじゃなくて飲むだよ」
小雪は自分のミスを指摘され、むぅ〜っと頬を膨らませてリテシアを見る。
「さっきのお返しです」
「むぅ……意地悪め〜」
「さっき?何の話だ?」
困惑した表情で二人を見るジェフ。
それを無視して、私達二人は料理を取りに行った。
「ほ、ほんとにいっぱいある……どれにしよう」
「決まらない時は、美味しそうなのを適当に見繕うと良いんだよ」
小雪は目を輝かせて、大きい皿に山盛りに料理を入れていく。
「それ、本当に食べるの?」
「えっ?これぐらい普通でしょ」
顔一つ分の皿の量は普通ではない気がするけど、これ以上はお腹が減りすぎて喋りたくないので何も言わない。
「え〜と、これとこれ、それとこれを……」
私はサラダを適量と肉、卵、ご飯を取り、最後にスープを取って終わりにした。
「へぇ〜、普通の女ってそのくらいしか食べないだな。小雪がやっぱり異常だったのか……」
ジェフはリテシアと小雪の皿を見比べながら、小さく呟いた。
実際、これが普通なのかは分からないけど、ただ生きる分にはこれぐらいで充分なのだ。
しかし、後々になってもう少し入れても良かったと後悔することとなった。
「あっ、これ美味しい〜」
テーブルですでに食べ始めている小雪の皿はもうほとんど空だった。
「は、早い……一体どうやったそんなに早く食べられるの?」
やや引き気味に聞いてみる。
「コツなんてないよ、ただ食べるだけ」
小雪は笑顔で胸を張って言った。
「………」
「?」
小雪は右に小首を傾げる。
「…………」
「?」
小雪は左に小首を傾げた。
「ん?お前ら何で無言なんだ?怖いんだが」
「何かね、リテリテに早く食べるコツ?みたいの教えたら無言になっちゃって」
「当たり前だろうが。お前俺より食うじゃねえか……そんな奴のコツなんて教えられた俺でも黙るわ!」
小雪は不満げに食べ終わった皿を返しに行った。
「とっても美味しいですね。ジェフ」
「あ、あぁ、そうだな」
今まであんなに軽快に話していたジェフが二人っきりになった途端、歯切れが悪くなった。やっぱりジェフは私のことあんまり好きじゃ無いのかな?
「その、ジェフは私と話すの嫌ですか?」
「い、いや、そういう訳では無いんだ。何というか、女の子している人と話すのが苦手っていうか、何というか……」
どういう意味なんだろう?ジェフがそれ以上教えてくれることはなく、ただ静寂な時間が流れた。