第五話 第二試験
第一試験を合格してきた私達三人は残る第二試験に挑もうとしていた。
第二試験はチームワークと決断力。3人のペアずつに依頼が出される。それをこなせば見事合格なんだけど、何の因果か、私たちに出された依頼はホワイトウルフの毛皮を取ってくるというものだった。
「……えっ?まじ?」
ジェフが呆気にとられている。
普通なら、辞退すらあり得るホワイトウルフの討伐、だがすでに倒していて毛皮を剥いでいた。これでも試験は合格になるのかと迷ったけど今日取ったばかりだし鮮度も落ちていないからバレないとジェフが言っていた。
「あの、これで良いですか?」
「これは……」
渡されてびっくりする教師の人、ホワイトウルフに関しては本当に倒すとは思っていなかったらしい。
「ご、合格だ、おめでとう、しかしクリアしてしまうとは……」
教師の人はホワイトウルフの毛皮を持ちながらぶつぶつとつぶやく。
「?」
「いや、何でもない、さあ、合格したなら第一グラウンドに集合だよ」
教師の人は優しく次の場所を教えてくれる。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそですよ」
逆にお辞儀されてしまった。どういう事なのだろう、リテシアは分からずに首を傾げる。
「どういうことですか?」
咄嗟に小雪が聞く。
「この最終試験のコンセプトを教えていなかったですね。この試験実はあなた達には無理な依頼に設定されています」
「それってつまり、入学させる気がないってこと?」
「いえ、違います、この学園ではまず1に負ける事を学びます。なぜ負けることを一番に学ぶ必要があるのかと言いますと、冒険者とは意地っ張りな人が多いと我々教師陣は感じたのです。それ故にたとえ死の恐怖があったとしても立ち向かってしまう。ですからこの学園では、一番最初に諦めることを学んで欲しいのです。だって、死なれたら困るでしょ?折角育てた人材を失うのは国にとっても痛手です。ですから、このような試験にさせていただきました」
「……それ冒険者って言わなくない?怖いから逃げて、勝てないから諦めて、そんな育て方で育つ人いないよ、人はね死の恐怖があるから強くなれるんだよ?こんなに絶好試験なのにそれを無くちゃうなんてもったいないよ!」
小雪は、怒りを露わにさせ教師を睨んでいる。
「ですが、死んでは意味ないでしょう?」
「お前、根本から間違ってるぞ、冒険者は命を賭けて己を鍛える為になるものだ。まぁ、お金さえ稼げればいいなんて言う奴もいるがな」
「それはそうかも知れませんが、しかし我々は生かすための教育をします」
私には意味が分からない、冒険者はどのお話でも死の恐怖と立ち向かっていたからかっこいいと思える気がする。死の恐怖に怯える冒険者なんて冒険者とは言えないけど。
しかし、リテシアは何も言い返す事は出来なかった。相手の言っていることもあながち間違いでは無いのだから。
「そうかよ、俺はお前らの気持ち悪い教育は受けたくねえな」
「私もだよ、やる事が間違ってる」
二人が嫌悪を示している。今にも二人はこの場から帰ってしまいそうなそんな雰囲気を醸し出している。
「……私は受けたい、だって強くはなれるでしょ?」
リテシアにとってはそんなことどうでも良かった。私は強くなって見返したいだけ、その為にここに来た。
それだけに弱い冒険者を作り出そうとしてるとかどうでも良かった、ただ私が強くなれればそれでよかった。
「リテシア!本気なの?」「おい、リテシアお前……」
「うん、本気だよ」
コクリとうなずく。
「はぁ……分かったリテシアがやるって言うなら私もやる!」
「まっ、仕方ないなリテシアがやりたいって言うなら友達として一緒に同伴する義務があるしな!」
二人は恥ずかしそうに頬を薄紅色に染めた。
別に義務じゃないし、私達はまだあって数時間だ。一緒にいる義務などある訳がない、なのに二人は一緒にいてくれと言ってくれた。何だろう、よく分からないけど心が温まる。
二人を見てそんなことを思った。