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第一話 衝撃的な出会い

家から追い出された(出て行った)私は森の中をとぼとぼと歩いて行く。

あの父から離れられたのは良いけど、これからどうするかを考えなければならない。


「計画くらいは立てておくべきだったかも……」

 そんな後悔を抱えつつ、森を歩きながら数時間はこれからの予定を考えている。

流石に気合があっても何時間も歩くのは12歳の体には負担であり、段々と足取りが重くなり、ふらふらと木々に手をつきながら歩かなければ一歩も動けないくらい足が痛い。


 そんな中、真っ白な毛並みの犬が茂みからゆっくりと現れて私を威嚇している。

あれは本で見たことがある。確か名前はホワイトウルフで、ウルフの群れの長として行動していてウルフ数十匹の群れには絶対にいる。そのうえ交戦的で危険と書いてあった。


 普通のウルフにすら勝てない少女が数ランク上のホワイトウルフに勝てるわけがないので、最後の力を振り絞って逃げるしかない。

 走っている最中に木の枝が幾度となく体を痛めつけ、すでに傷だらけだが気にしている暇がない。


「はぁ……はぁ……」

 ホワイトウルフが飛びつき、腕に噛みつき腕の肉に食い込んでくる。

「ッ!……痛い」

 ホワイトウルフの頭部を石で殴りつけて振り払い、噛まれた腕を押さえながら、走り続けていると開けた場所が見えてくる。

「森の出口!」

私は安堵し 、すでにガクガクの体を奮い立たせて走る。

しかし出口と思っていた場所は、少し高い崖になっていた。今の今まで本気で走ってきた少女が急に止まれるわけもなく……



「小雪!あぶねえ!」

「へ?なんのはな……」

 ちょうど下にいた黒い髪の少女に激突してしまう。


「お、お前ら大丈夫か?」

「痛ったいけど、私は大丈夫だよ〜」

 少女はおでこを押さえながら、元気そうに男の前でくるりと回ってみせる。


「こっちも大丈夫です、あのごめん」

 申し訳なさそうに、俯く。


「あはは!大丈夫だよ、こう見えて私強いから!」

 少女は胸に手を当て、自慢げに言った。

「謝んなくて良いぞ、こいつの場合はバチが当たっただけだからな」

「そう、なの?」

「えぇ〜、あれやっぱりだめだったの?」

 少女は声を上げて驚いている。神社を燃やす?この人怒ると怖い人かな?


「駄目だろ、神社燃やすのは」

「でもでも、あれ不可抗力だからね」

 男の人は頭を抱えて、深いため息をついた。

 私は話に全くついていけずに、どうしたらいいか分からずあたふたと二人の顔を交互に見つめていると、男の人が気づいたのか話を戻す。


「おっと、すまんすまん、んじゃあ、まずは何かの縁だし自己紹介でもするか?」

 隣の可愛げな少女がうんうんと頷いているので取り敢えずうなずく。


「やるやる!私から〜、私、小雪!気軽に呼んでね」

 元気よく、挨拶をしていて、とても明るい性格のようだ。ただ先程の話もあるしきっと怒ったら怖いのだろう。

 外見は黒髪でポニーテールの少女。服装的に貴族の出身かな。


「えっ、それだけか?流石に少ねえよ、もうちょいないのか?」

 小雪さんは男の人に言われて、むむむとうなり考える。


「あの、じゃあ好きな食べ物とか、どうですか?」

完璧に当てはまったのか目を輝かせて私の手をブンブンと振って元の定位置に戻っていく。

「好きな食べ物はウルフの素焼きだよ、あっ、あとは〜私の夢!夢はすごい魔術師になること」

 夢を語っている時の小雪さんは恍惚な笑みを浮かべている。


「そ、そうなんですね」

夢……みんな憧れてるものとかあるんだ。私何もなかった。

「んじゃ、次は俺だな!俺はジェフ、小雪とは幼馴染でな、子供の頃から一緒にいる、と言ってもまだ十二歳だがな、えっと好きな食べ物はアルノード(巨大な鳥)の素焼きだ!よろしくな」

 続いてジェフが自己紹介をした。さっきから出てくる食べ物はよく分からないけど良い人そうなのでちょっと安心した。

「じゃ、じゃあ、私、えっとリテシアです。訳あって家を追い出されました。好きな食べ物は特に無いと思います!」

 二人は喜々とした表情でこちらを見てくる。


 こういう、期待されたような眼差しは初めてなのでどうすればいいか分からず、困惑して二人を見つめ返す。

「家を追い出されたか……なーんだ、俺達と一緒かよ、実はな俺たちも学園に通いたいって言ったら駄目だって言われて飛び出してきんだ」

「うんうん、全くだよ」

 小雪さんとジェフさんはこくこくとうなずき私の頭を撫でる。


「あっ、その私たちのことあんまり知らないよね?その私たちって一応貴族だったんだ。それでね今から行こうとしてる学園は貧乏人ばかりが集まるって言われてるから行かせたくないらしくて」

なんとなく分かってたけどやっぱり二人とも貴族なんだ……よかった。失礼な態度取らなくて。

そう心の中で思い、そっと胸を撫で下ろす。それと学園って何だろう。聞いてみようかな。


「……その学園って何?」

 つい最近までお前みたいな恥晒しは家を出るなと言われていたリテシア。学園が何をする場所か知らないのだ。

「へっ?嘘でしょ?流石に学校を知らない人なんて」

 ジェフと小雪は顔を見合わせる。

「ガチで?知らない?」

 私はコクリとうなずく。


「そ、そっか〜、えっとな、学園てのはな様々な事を教えてくれる場所だ。

 魔術や剣術、それに薬学とかな」

「そこに行けば強くなるの?」


「あ〜、どうだろうな、努力すれば誰だって強くなれる。だがああゆう所にはたまに努力してるやつを引きずり落とそうとする奴もいるからな、行っても行かなくても、あんま変わらんと思うぞ」

 リテシアはジェフの言葉を聞いて、不思議な感情が芽生える。

 強くなれる、弱い自分でも妹をアオイを超えられるかもしれない、胸の奥が熱くなるのを感じる。


「リテリテどうしたの?」

「……ううん、何でもない…ただ、私も行きたいその学園に!」

 要らないやつだと罵ったあの男を見返す。そのために私は誰よりも強くなって見せる!そう心の中で決心した。


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