旅立ち
日差しがカーテンを通して入り、少女の顔を照らす。
眩しい光に顔を曇らせ、布団を深くかぶって再び眠ろうとするが、それを阻止するかのように妹が布団を引っ張り、姉を起こそうと必死に頑張っている。
「お姉ちゃん!お姉ちゃんたら!!ねえ〜、起きてよ〜」
「……ん〜、あと少し寝かせ……て」
「だめだよ、お姉ちゃん!そんなお寝坊さんなお姉ちゃんは私が襲っちゃうからね」
このセリフ何度目だろう。最近は毎日言われている気がする。
こういうのは大抵無視するに限る。そう思い、引っ張られた布団を戻して、寝に入る。
「無視しないで〜、いつもはもっと寝てもいいけど今日は駄目なの、お父さんが呼んでるから!」
「……それほんとに?」
「うん」
少女は少し驚き布団の中でうっすら笑みを浮かべる。あのアオイにしか興味のない男が私を呼んでいる。あの日がついに来た。私は胸の高鳴りを感じつつ、布団をどかした。
「わっ!起きた。それじゃあ早速行こう!」
「はぁ、仕方ない」
少し寝癖が気になるが、妹に手を引かれ一階に降りる。
相変わらず広い家、廊下は長く、歩くたびにメイドが挨拶をしてくる。
この家は少し有名だ。父と母が冒険者でとても素晴らしい功績を上げたと、メイドの一人が言っていた。なんでもドラゴンを倒したとか、言っていた。
「ねえ、お姉ちゃん、何のお話だろうね?」
妹……いやアオイは心配そうにこちらを見る。妹として姉がどんな扱いをされたのか知っているからこその心配のなのだろう。
「・・・・さぁ、何だろうね」
話の内容はもうすでに知っているのけど、ここで言ってめんどくさいことに巻き込まれても困るので素っ気なく返す。
妹との話を楽しんでいるうちに食堂に着いた。ここに着く寸前にはもう覚悟は決まっている。
扉を開け放ち、正面に座る父に質問をする。
「それで、何の用?」
私から会話の話題を振られたことが意外だったのか訝しげに私を見る。
「まぁ、座れ」
メイドに私を座らせるように指示する。
「別にいいよ、どうせあれしか無いんだから」
言われる内容を私は知っている。父は無能の私が邪魔だから言う事は一つしかない。
「そうか、なら分かっているな」
「えぇ、この家から出て行けって言うんでしょ?分かってるよ」
妹と母は、ぽかんと口を開け、聞いていないと言う顔をしている。
「じゃ、さようなら」
間髪入れずに、食堂の扉から出て、玄関へと向かう。
「本当なの?」
ワントーン下がった母の声が聞こえた。普段は喧嘩をしない夫婦が珍しい。だが、何故怒っているかなど今の私にはどうでもいい事なので澄ました顔で家の玄関を出た。最後に聞いたのは滅多に怒ることのない母の怒声だった。
私の居なくなった家ではまだ母と父が喧嘩をしていた。
「お父さん…どうして?どうしてお姉ちゃんを追い出したの!」
そこに妹が参加する。妹は今にも父を殺しそうな表情をして、睨みつけている。
「すまない」
「……私は、お姉ちゃんをどうして追い出したかを聞いてるんだよ」
妹が怒鳴り、母も問い詰める。そんな中、父は笑い出した。
「そんなに怒ることか?あんなゴミを追い出してやったんだ!むしろ感謝して欲しいんだがな」
一部分の修正と行間を空けて少し見やすく修正しました。