表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

03

アーロン王子達一行は、街の通用門で10倍の通行税を涼しい顔で払うと、街に入った。


増税のせいで、外から来る商人や旅人がいなくなって、市場は休業状態。おまけに側女徴用のお触れのせいで、若い娘の姿が消えている。みんな隠れてるのね。


ひどいものだわ。こんなで領地を経営していけるわけないのに。



「おい、そこのお前ら!」

街をうろうろしていると、後ろから品のない声がした。


「なんだ?あのガマガエルとゴミムシを足して5を掛けたような男は」


アーロン様がお供の方に尋ねている。

従兄弟のダニーだわ・・・誰が見てもそう見えるのね。恥ずかしい。



「通行税はさっきから20倍になったんだ。牢屋に放り込まれたくなかったら、さっきと同じ額をもう一度払いな!」


10倍の金額をあっさり払う団体が来たと聞いて、もっと搾り取ってやろうと思って出てきたんだわ。なんて強欲なの!


「私はこの国の第一王子、アーロンだ!新しい準爵を名乗る者はそなたか?そなたらの行いについて調べに来た。屋敷に案内してもらおう!」


「ああ?第一王子だぁ?なに寝ぼけたこと抜かしてやがんだ。王子がこんなとこ来るわけ、」


小馬鹿にしたような顔で返したダニーだったけど、フードを脱いだアーロン様を見て、驚きのあまりひっくり返った。

銀の髪に深青の瞳、まさしく王家にだけ現れる特徴を宿した、端正な若々しい顔。王子の顔など知らないけれど、間違いない。


「うわあぁあ!何で王子が!」

叫びながら逃げていく。

情けないったらありゃしないわ。



ダニーを追って屋敷に着くと、叔母夫婦もダニーの姿もなかった。

すでに逃げ去ったのだろう、とアーロン様は言ったけれど、私ははっと思い当たった。


叔母たちは、きっと封印石のところにいるわ・・・!

強欲な叔母たちのことだもの。勝ち目はないと思ったら、一番貴重なものを持って逃げようとするに違いないわ。



案の定、叔母たちは地下の隠し部屋にいた。重たい封印石を台座から外し、持ち去ろうとしていたところだった。


「昔、死んだじいさんから聞いてたのさ。この石は、クレメール家の血筋の者の願いを、一生に一度だけ叶えてくれるってね!」


「だめよ!そんなの、はるか昔に魔族が言い残したことよ?誰も試したことないの!魔族のワナかもしれない、なにが起きるかわからないのよ?!」


私の必死の説得にも、叔母は耳を貸さない。

アーロン様たちが剣を抜いて斬りかかろうとするけど、叔父が煙幕と爆竹を投げてきたので、近寄れなくなった。


煙幕の向こうで、叔母とダニーの声がする。

「さあダニー、私は世界中の富を願うから、お前はアーロン王子たちを消してくれと願うんだよ!」


「イヤだ!おれは世界中の美女を願うんだ!」

「なに馬鹿なことを!早くいうんだよ!」

「いやだ、女だ!」

「ダニー!!この馬鹿息子め・・・、、」


母子の罵り合う声が急に止んだ。

ほどなくして煙幕が晴れてみると、叔母一家の姿は忽然と消えていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ