第三次“吉○家ホールディングス”世界大戦
どこか定食屋の様な所でテレビを視ている。広い店内には、昼だと言うのに他に客も店員もいない。
テレビは、過去に起こった第三次世界大戦の経緯を解説するドキュメンタリー番組を流している。そんな戦争があったとは知らなかった。番組に興味を持った私は、テレビの近くに席を移した。
番組は戦場写真と思われるボンヤリした静止画像を挟みながら、字幕とナレーションのみで解説するスタイルで、画面から何が起きてるのかを理解するのは難しい。何が映ってるのか目を凝らしている間にも、ナレーターによる解説が続く。
……
20**年、以前から緊張状態にあった、連合国と***国(注:カタカナ数文字だったが忘れた)は偶発的な軍事衝突から、ついに世界規模の戦争へと突入した。
しかし本当に偶発的だった為に両陣営とも戦費の調達が出来ておらず、かと言って一旦始まったからには止めるのも格好が着かない為、両陣営は戦争における作戦名や、兵器等の名前にネーミングライツを募る事によって、大企業から戦費を調達すると言う斬新な方法を採用した。
まず、戦争の名称に関するネーミングライツの募集が行われ、両陣営の名だたる大企業が争う中、○野家ホールディングスが見事入札し、この戦争は第三次“吉○家ホールディングス”世界大戦と呼称される事になった。
なお、NBC兵器は“怖いから”と言う理由で使用しない事が、両陣営によって確認された。
……
ここからナレーションすらなくなり、戦争の経緯は字幕によって時系列順に箇条書きで流れるだけとなる。ドキュメンタリー番組としてどうなのよ……と思いつつも、私は必死に字幕を眼で追うのだった。
以下に、覚えてる所だけを記す。
★第一次“K○C”会戦:20**年*月**日、***国軍“サム○ン”機甲師団が、連合国軍“ナビ○コ”強化歩兵師団に奇襲を仕掛け、これを撃破。この作戦と同時に***軍は世界各地で侵攻を開始。多数の連合国側の主要都市を占領下に置く。
★“○フー! BB”市防衛戦:連合軍は連合の主要都市“ヤ○ー! BB”市を最終防衛ラインに設定。進撃を続ける***軍を迎え撃ち、多大な犠牲を出しながらも撃退。この防衛戦の勝利により、連合軍は反撃の機会を得る。
★“ユ○クロ”海海戦:連合軍の一大反攻作戦となる“D○M.com”作戦の発動における前哨戦として、“ユニ○ロ”海において連合海軍と***海軍の主力が激突。激戦の末、連合艦隊は戦艦“ニ○リ”と空母“鳥○族”を失ったものの、***艦隊は旗艦である空母“マイクロソ○ト”を初めとする多数の艦艇を失い、制海権を得た連合軍は本格的な反攻を開始する。
★第二次“○FC”会戦:“DM○.com”作戦の大詰めとなるこの戦いにおいて、連合軍は極秘決戦機動兵器“つ○八”を使用。***軍の主力を一瞬で消滅させ、大勝利を得る。(注:○ぼ八の詳細は軍事機密により不明)
★連合国は***国本土侵攻作戦の為の、***国は祖国防衛の為の作戦名のネーミングライツの募集を募ってる際に、何か馬鹿馬鹿しくなってきた両陣営の首脳部により、一気に講和に向かって事態が動き始める。
★“セ○ン&アイ・ホールディングス”講和条約調印:両陣営首脳部によって講和条約が締結され、ここに第三次“吉野○ホールディングス”世界大戦は終結した。
……
ナレーションが戻り、ナレーターは熱狂的な口調で番組を締めくくる。
この様な経緯を辿って、第三次“吉○家ホールディングス”世界大戦は終結しました。しかし、結末が講和であったとは言えども、この戦争は我らが連合国が、実質的な勝利を収めたと言っても過言ではありません!
連合軍の輝かしい勝利の記録は、協賛企業の御名前と共に、歴史として永遠に語り継がれて行く事でしょう!
嗚呼! 連合軍万歳! 万歳! 万歳!
……
画面は暗転してスタッフロールに移る。
……スタッフ十人しかいねえ! インディーズ映画かよ!
私は呆然となりながらテレビを見ていた。
なんだこりゃ。こんな戦争アリなのか? つか、よく企業もカネ出したな。宣伝どころか、ヘタすりゃ黒歴史だろ。一体どれだけの企業が参加したんだ?
そう思って、スタッフロールに続く“協賛企業一覧(五十音順)”を、もっとよく見ようとテレビに近づいた所で目覚ましが鳴った。
……今日は早出か。
昼飯は……す○家でいいか。