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魔法習得のスクロール

 リルにはおれたちも世話になっているし。

「いや、今まで通りでいいよ。前回も損したとは思っていないから」


「魔法を作れる人ってことも話題になったのよ。魔力だけでなく新作魔法まで教わっておいて何もお返ししないのはおかしいだろ、とも言われたわ」

「そうかな、『紐付』の魔法なんかはハルの方が使いこなしてるから、リルに魔法習得のスクロールを作ってもらうのはおれたちも助かってるんだけどな」

 おれを見てリルは目を伏せる。


「気づいてるのかな? 気付いていなかったらそのままにしておきたいんだけど」

 リルがおれの様子をうかがっている。


「何の事?」

「気づいてないかな? でも、いつ気づくかわからないから言っちゃうね。

 あのね、わたしの価値がなくなるから嫌なんだけど。本当に嫌なんだけど。

 アルが魔法習得のスクロールを作れるようになるかもしれないのよね」

「へっ?」

 リルのやっていることも魔法の一種だから覚えようと思えば覚えられる。

 見たものを再現できるかもしれないってことか。


「あー。アルならできるかもね」

 ハルも同意している。


 その可能性をおれの身近な人からも同意されてげんなりするリル。

「そうなのよ。だからご機嫌をうかがっておこうという意見もあってね。私はまあ、友達でいれればいいとは思っているけどね」


「友達でいいと思うよ。おれが魔法を習得する魔法を作れるかはわからないけど、作りたい魔法がまだまだあるから、しばらくはリルの世話になるよ。2,30年くらいは」

 リルがやってくれることを自分でやろうとは思わないし、任せるよ。


「2,30年? リアルな数字を出してきたわね。そうね、それまでには妖精境も身の振り方を考えておくべきね」

 2,30年後はどの道冒険者を引退しているだろうから、ここに来れなくなるのは一緒なんだけど。


「まあいいや、よろしく頼むよ」

「リルもボクらと一緒に来れればいいのにね」

 ハルがお気軽にそんなこと言うけど、そりゃ無理だろう。


「む、むむ。考えさせて」

 考えんのかい。

「みんな困るかな? でも、頻繁に帰れば。いや、無理かな」

 どう考えても、今日決めることじゃないから、持ち帰って検討してよ。


「今は、決められないわ。また来てよ、その時に返事するから」

「ああ、そうだね」

 リルがうちに来るのか。便利なようなもて余すような。

 そうなったら魔術士ギルドが困ることは確実だな。


「ここも、長居できないし、『収納』のスクロールは作っちゃいましょう。『取り出し』とペアにして1から5までね。さっき作った分は貰うわよ」

 さっき作った分はシンプルな起動句『収納』と『取り出し』だ。原点の起動句を魔術士ギルドに使われちゃうな。


 リルがポンポンとスクロールを作っていく。途中で魔力補充のため先払いでおれから吸い取って、全部終わった後に改めてめいいっぱい吸い取っていった。


「魔術士ギルドに売るんでしょ? そのスクロールいくら位にするの?」

 ハルが気になることを聞いた、リルはお金とか扱ってないから騙されそうだな。


「いくら? いくらがいい? 魔術士ギルドが値段付けてくれるんじゃないの?」

「それ絶対騙されるよ。10万とかで売っちゃうんじゃないの?」

「10万? そう言われたら売っちゃうよ。ダメなの?」

「10万は安すぎるよ。わかんないけど100万とかもっとするよ」

 ハルは自分が買うならそのくらいかなって値段だな。


「量産されてれば100万とかだろうけど、最初の1個でしょ。もっとするよ」

 ミサたちの意見も聞きたいな。


「リル。おれたちが入って来た穴ってちょっと開けられない? 外のみんなの意見が聞きたいんだけど」

「戻るの?」

「いや、穴がネズミが通れるくらいあればいい」

「それなら簡単。ほいっ」

 ポコッと開いた穴で押さえつけられていた魔力の紐が解放される。


「あー、あー。ルカ、聞こえる?」

 念じるだけでもいいがリル達にわかりやすいように声に出す。


「アル? 通じた! よかった、奥に行ったとき急に聞き取りづらくなったの」

「入り口が閉じたせいかな、今少し開けてもらったんだよ。

 それでさ『収納』のスクロールなんだけど、魔術士ギルドが1本だけ買い取るとしたらいくら位になると思う?

 ちょっとミサたちとも話してもらって決まったら教えてくれない?」

 ちょっと長めの内容になったな、魔力の紐越しで通じたかな?


「わかった、聞いてみるよ。魔術士ギルドに1本だけね」

 通信が終わり向こうで話し合っているようだ。


 ほんの2,3分で返信が届く。

「アル、いい?」

「いいよ」

「『収納』と『取り出し』をセットで吹っ掛けるなら1億。

 そこから値切られても2千万以下では売らない方がいいってことだよ。

 ちょっとびっくりだよね、わたしたちそれをもらおうとしてるの?」


「1億?! 結構吹っ掛けたな。魔術士ギルドが自分たちで量産を考えるならってことなのかな」

 おれの驚きを聞いてリルはニヤッと笑った。

 魔術士ギルド側が売れって言ってきてるんだから、買えないんだったら別に売らなくても構わないんだよな。


「いいよ、いいよ。買えないんだったらそれは向こうの問題だし、その間は要求もうるさくないからこっちは助かるよ」

「うん? ああ、ルカ、みんなもありがとう。リルは満足しているみたい、もう少ししたら戻るよ」

「そう? 待ってるね」

 通信を終えて、リルから『収納』と『取り出し』のスクロールを受け取ると当面の用事はなくなる。

 ハルの分の魔力も同様に使い切っていたので、もう帰るしかない。

 魔力は枯渇気味で眠いし、夜が明けて明るくなると帰り道で魔術士ギルドにも見つかりやすくなる。


「おれたちはそろそろ帰るよ」

「そうか、また来るよね」

「そのつもり。また魔法作ってくるよ」

「用事なくても来ていいよ。スクロールが売れたらそのお金でアルの魔力買うから」

 魔力、かっすかすにされそうだな。


「ん、じゃあまたね」

 広場に向かう穴の前で、リルがむにゃむにゃ唱える。

 人が通れる大きさの穴をあけるには詠唱というか合言葉がいるのだろう。

 魔術士ギルドは広場から先へは入れないわけだ。

 そもそもこの場所と穴の存在を知らないのかもしれない。


 大きくなった穴をくぐり抜けて、白い石の影まで中腰で歩き、ハルに気配を消してもらって、その消された気配に紛れるようにゆっくりと境界線の外まで歩いた。

 すでに3メートル先も見えないくらいの暗さだ。


 ルカたちの姿が見えて、足元がじゃりっとすると草地が途切れて戻ってきたことを実感する。

「おかえり。うまくいった?」

「だいたいね。はー、疲れた。今日はもう休もう」


「お疲れね。お話は明日でもいいから、ゆっくり休んで」

「うん。めちゃめちゃ眠い。けど先に荷物出すよ」

 ミサに言われたようにもう横になって寝てしまいたいけど野営用の荷物をポンポン出していってリビング用のカーペットを広げて、食事が上に乗ったまま『収納』したテーブルを出すと、あっという間に壁がないだけのリビングだ。

 カーペットの中にも『収納』されたものが入っているが、今はカーペットそのものとして使用する。


「『紐付』2本。『収納』と『取り出し』が5セット分。

 『紐付』は1本予備で残して、それで全員両方の魔法が使えるはずだよ」

 『紐付』のスクロールをエリに渡して、『収納』と『取り出し』のセットは2本でひとまとめになっているのでそれぞれにポンポンと渡した。


「ありがと」

「ボク何番かなー」

 ハルがウキウキでスクロールを開封する」


「何番?」

 ハルに注目するみんな。

「3番だー。真ん中だね」

「アタシは2番だな」

 ハルに続いてジノも開ける。


「4番かぁ」

 少し遅れてルカも開けるが、ミサは固まってしまっている。


「ミサ?」

 ミサの開封を待っていたエリが声をかける。


「先開けようか?」

 エリが開封して、パァっと喜ぶ。

「わたし1番だった」

 喜んだあと、申し訳ない顔になるエリ。


「エリ、あの・・・こうか・・・」

「だめだよミサ。そういうもめ事がないようにアルが無造作に配ったんだから」

 エリに交換を持ちかけるミサにハルが注意する。

 いや。何も考えずに配っただけだが。


「番号に意味なんかないよ。そんなこと言ったら番号すらついていないオリジナルの起動句が魔術士ギルドに持っていかれたからね」

 はっ、と青ざめた顔をするミサ。

「1億では安すぎましたね。わたくしがそれを買い取ります」

 立ち上がって、ふらふらと草地に入り込もうとするミサをエリが手を引っ張って止める。


「1億なんですよね。貰っていいものなんですか?」

 ミサを引きずり戻したエリが手元のスクロールを両手に持って言う。


「元手はゼロだよ。魔術士ギルドも値切るだろうから1億では買わないんじゃないかな」

「世界に1セットしかない、再現できない古代の魔法みたいな価値を付ければ買うかもね。

 リルは値切りをかわして時間を稼げば、それ以外の面倒くさい要求は収まると思ってるみたいだよ」

 一緒にいたハルはある程度リルの思惑は察していたみたいだ。


「それでも、あのー」

 腰が引けてもじもじしているエリ。

 エリの及び腰が伝染して他の誰もスクロールを使おうとしない。


「量産したら100万くらいだって。

 貸し付けるわけじゃないし、エリがこれまで働いてくれたことの感謝?

 プレゼント、いやボーナスだよ。

 それを受け取ってもらって、やっとチャラだから使ってもらわないと困るな」

「そうだよエリ。ボクなんか今更だから遠慮なく使っちゃうもんね」

 ハルは魔法習得のスクロールを広げる。


『魔方陣収納3』『魔方陣取り出し3』

 ほわほわっとスクロールが光りハルが『収納』と『取り出し』を習得する。


「ねえ、『収納3』のシート誰が持ってる?」

 ハルがジノの荷物をあさりだす。ジノが一番荷物が多いから、まずありそうなのがそこだ。


「あった、あった」

 ハルがジノの荷物から『収納』済みのシートを引っ張り出し床にバサッと広げる。

 おれが『収納』した『収納3』のシートだな。まずおれが『取り出し』しないとダメかな。


 立ち上がって『取り出し』をかけようとすると、その前にハルが。

『取り出し3』

 ズモモモと荷物が盛り上がる。


「おれのかけた『収納』をハルが『取り出し』た?」

 誰が『収納』したか関係なしか、セキュリティガバガバかよ。

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