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新しい仲間

 テーブルに着きメルエを待っていると、小さい女の子を連れたメルエがやってきてその子を紹介する。

「お待たせ、この子はハル。

 ハル、こちらはアル、ジノ、ルカとミサね」


 ハルという子はは明るい茶髪のツインテール。

 明るくて赤みも強いので明かりに透かすと先端のほうはピンク色にも見える。

 年齢は11,2歳、冒険者というよりは完全に子供だが誰も咎めないので黙っておく。

「こんにちは」

 おれからは目をそらしメルエに寄り添うようにハルという子が腰を下ろした。


「ハルは月曜適性のノビトでさっきの話にあった登録のできなかった子なの」

 脅されていたジノのパートナー候補か。

 あとで聞いた話だとノビトという種族は見た目の年齢が8から12歳で止まってしまうそうだ。

 手先が器用で、魔法も使うが体格上戦闘は苦手だ。

 ちなみにハルの実年齢は16歳。見た目が子供、頭脳は大人の高校生冒険者だ。


 エルフも18から22で成長が止まる、ドワーフも28から32歳を超える見た目の者はいない、この3種族は亜人として人にとけ込んでいる。

 地球で言えば西欧人と東洋人の違いくらいの扱いで差別や種族の上下関係などはない。


人族もレベルが上がった人はは老化が止まり38から42くらいの見た目年齢に落ち着く。

 17歳くらいのルカ、21歳くらいのジノはほぼ見た目通りだろうけど、18歳くらいのミサの年齢は全くの未知数になってしまった。


「原因もなくなったことだし、事情を話して冒険者復帰を促してみたの。ただ、この子も少し臆病になっちゃったので、できれば信用できる人たちに預けたくて。

 負担になるかもしれないけどどうかな?」

 メルエは両手を合わせてお願いのポーズをとっている。


「わたしは、ねえ」

「わたくしも、そうね」

 ルカとミサはおれを見てそう言う。おれに判断を委ねる風だ。

「アタシは構わないぜ、後衛なら守っているうちにレベル差も縮まるだろ」

 ジノはそう言う。レベル差もあったな。


「おれはいいけど・・・」

 ルカとミサの視線からおれの判断で全員の合意が取れたと思ったメルエが言う。

「ハル。よかったね、入れてもらえるよ」

 メルエに言われたハルは「でも」とか小さな声で言っていたが急に強気な態度で話し出した。

「それなら・・・ボクが入るなら男には抜けてもらうよ。もともとそういう話だったんでしょう?」

 まさかのおれが戦力外通告! でもはたから見たらそうなるかな? 事情は分かる、でもおれは悪くない。脅した奴らが悪い。


 メルエは想定外の宣言におろおろしている。

 不満げにジノとルカが意見を翻す。

「アタシは反対だなアルが抜けるならアタシも抜ける。それでまたペア組むわ」

「わたしもそうなったらやだな。女の子4人パーティーはもともとの理想形だったのに、なってみると女の子だけじゃ不安になるよ」

「心情はともかくとして、アルは1人でもほかのパーティーでもうまくやっていけると思うの」

 ミサのその言葉にジノとルカは反発するそぶりを見せるがミサは続ける。

「ただ、わたしたち4人はアルが抜けたらうまくいかない。すぐ解散になるかもしれない。

 そしてわたくしの心情はアルが抜けるの大反対!」


 ミサが感情的になるのもめずらしい。

 ジノもルカもおれを受け入れてくれている。

 ハルはおれがじゃまなようだが、ひどい目にあったことを思えば気持ちはわかる、ここで放り出されたら男だらけのギルドに彼女1人きりになってしまう。

 おれが必要とする以上にハルにはルカたちが必要だ。そう思っているとルカが口を開いた。


「ハルにはアルくんを追い出すことはできないわ。アルくんを受け入れるか、ハルが抜けるかのどっちかよ」

「そんな・・・」

 ハルはひっぱたかれたかのように呆然としている。

 俺は見かねて口を開いた。このままでは無力なハルが追い出される。

「おれはすみっこでおとなしくしてるよ、しばらくしてなじんだらおれは抜けてもいい・・ん・・だし」

 途中でルカたちにギロッとにらまれて尻すぼみになる。


「アルは残るの決定なの。で、ハルはどうするの?」

 ルカに発言権を否定される。

 そしてぼそぼそとハルが答えた。

「野営と宿の部屋は別。怒鳴ったり、睨んだり、触ったりしなければ・・・いいわ」

 ハルにも拒否権がない。同士よ。

 いや同士と言っても肩組んだりしないよ、だから怯えた目で見ないで・・・


 とは言ったものの、宿の部屋はまたはじき出されちゃったな。

 宿に戻り、4人部屋は女の子で埋まってしまったので、改めて1人部屋を取る。

 ルカにまた。え、なんで。という顔をされたが、ほかの選択肢もないので何も言われなかった。


 今日1日は休日なのでそれぞれ装備の補修や道具の補充に当てている。

 なおライノプスの素材の扱いはおれに任された。

 おれはとりあえずライノプスの売却益をもらいにギルドに向かう。


「こんにちは、先ほどはどうも。ライノプスの売却どうなりました?」

「あ、お待たせ。こっち来て」

 メルエに奥に案内され、素材置き場まで来た。

 素材が並べられ、皮が広げられている。改めてみるとでかいな。

「胴体の皮全部で300万、心臓125万、肝臓80万、爪が16本で115万、歯が44本で96万で角が200万ね。交渉とギルドからの上乗せで相場より高めになって合計916万。どうよ」

 どや顔のメルエが言った。


 ちょっとよくわからない、1000万ちかく? 家が建つ? 建たないか。でも車は買えるな、3台とか、5台とか??

「ちょ、その金額をもらえるんですか?」

「そうよ」

「え、だって、1年に・・・じゃない3年に一回ライノプスを倒すと働かなくていいんですか」

「もちろんそうよ」

「そんなすごかったんですね」


「ライノプスはランクA、これは大物だったからAプラスといってもいいわ。ランクAって相当なものなのよ。冒険者の素質、つまりランクEで100人に1人、あなたたちのランクCなら1万人に1人、ランクAとなると100万人に1人くらいの素質が必要なの。そのランクAが4人から6人がかりで倒せるかどうかっていう化け物がそんなに安いわけないでしょう」

 メルエが言う。どや顔感が増した。


 そこまでかー。じゃあそれの突進に耐えたこの剣は本当に国宝クラスと言ってもいいんだな。

「もし、なんですけど。この素材を使って装備を作るとどのくらいの性能で、加工にいくら位かかりますか?」

 興味があったので聞いてみる。

「このクラスになると加工にかかる金額も相当なものになるし組み合わせる素材も高価なものになるから・・・例えばこの角で剣を作って完成までに500万、素材の価値を含めると700万の剣になるわね。性能も相当なものでランクA上位からランクSが持つのにふさわしいといえるわね」

 メルエが面白そうに顔を覗き込んでくる。


「目立つわよー。余計なトラブルのもとになるかもしれないわ」

「考えていたのはウォーハンマーですけど、目立ちますか。

 このくらいの武器がないとライノプスにダメージが入らないんじゃないかと思っただけなんですけど」

「それはそうね、このくらいの武器とAランクの腕。それだけの戦力が5、6人そろわないとね」

 笑ったメルエから余計なこと考えるな、ライノプスを狩ろうとするな、と釘を刺される。

 おれの中では、迷ったときには戦力増強。とか、素材との出会いは一期一会。とかの言葉がぐるぐる回っていたが、どのみち自分一人で決めることじゃないので相談のため1度帰ることにした。


「1度帰って相談します。ちなみに皮で鎧を作るといくら位ですか?」

「相談するんだ。鎧は皮を半分使って、加工に200万かな、合計350万。ウォーハンマーも今の形をそのまま使えるなら加工費は安くなるかもね」

「ありがとうございます。また来ます」

 そう言って、ギルドを後にした。


 宿に戻ると、4人部屋にみんないた。

「みんな、相談があるんで聞いてくれるか?」

 それぞれ、話を繰り上げ中央に集まる。

「今さっき、ギルドに行ってライノプスの査定を聞いてきた」

 ハルがライノプスってあの? と、不思議そうにしていたが続ける。

「全部売れば900万以上なんだがおれにお願いがある」

 一瞬沸き立って、すぐ聞く体制になる。

「これだけの素材だ、1つ装備を作っておれのものにしたい」

 構わないと言うかのように皆頷く。ハルは自分は取り分に関係ないというようにじっとしている。

「ただ、加工費や追加の素材を合わせるとその装備で700万も使ってしまうんだ」

 皆びっくりする700万の装備なんて貴族や将軍が持つようなもので、Cクラスの冒険者が使うようなものじゃないからだ。

 そしてハルは非難するように言う。

「みんなのものを、あなた一人のために使うの? いいの? みんなはそれで」

 いきり立つハルをミサが手で押さえて話の続きを促す。


「もちろん、おれが余計に取る分はみんなへ借りとして必ず返すつもりだ。返せないうちに解散などすることになったらその装備はみんなに渡すから売却して清算してくれればいい」

 そう言うと、ハルも「それなら別に・・」と言って引き下がった。


「わたくしはそれでいいわ。貸しを作った方が別れられないものね」

「わたしもいいよ、もともとアルの総取りでもいいと思ってた」

 ミサもルカも賛成してくれた。

「もちろん、いいぜ今回アタシはなにもできなかったからな」

 ジノも賛成で、ハルも問題なさそうだ。

「みんなありがとう、今からギルドに行ってくるけど、手続きのことと魔法のことでルカとミサに話があるから一緒に来てくれるかな?

 ジノはハルにパーティーのことを教えたり、必要なものを買ったりしてくれ」

 みんなが頷き、おれはルカとハルを連れてギルドに向かった。

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