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みんなと合流

「だいぶ良くなったけどまだしびれてるからミサたちと合流するまで護衛頼むよ」

 おどけて言ってみる。頼りにしてるよ。


「そう、そうね。この辺りにいると思って降りたけど、まっすぐには逃げなかったみたいね。少し戻って痕跡を探しましょうか?」

 【索敵】の出番だな。おれは目をつぶって周りの匂いに集中する。当然一番強いのは近くにいるルカの匂いだ。健康的な汗の臭いでおれは好きだが正直に言うと嫌がるかもしれないのでこの能力の詳細はみんなに話せていない。


「右の方かな、太陽がこっちだから・・・東?」

「よし、アルは背中に乗って。向こうも急いでるだろうから飛ばすよ!」

 歩けるって言ったじゃないか。ああ、でも走れないから結局足手まといか。

 

 足手まといなおれだがおとなしくルカの背中に乗るのはためらう。言い争いをしている時間はないんだ、おれに勝ち目は一つもない、たとえ下半身がびちょびちょであろうとも。

「そんなの飛んでれば乾くよ。早く、早く」

 飛ぶのかよ? そんなに遠くないだろうに。

 近くのコンビニに行くのに車を出すようなものじゃないか。


 濡れた体もルカは気にする様子がない。一応言っておくけど、おしっこじゃないからね!


 飛ぶと言っていたので木の上に出るものかと思ったがルカはホバークラフトのように地面すれすれを滑るように進む。

 ジノがやっていたように、もともとこっちが【突進】の本来の使い方だ。


 森の中で直進できる進路がほとんどないので最高速度は出せていないが、木の間を縫うようにうねうねと進むのはとてつもない高等テクニックだろう。

 スキーのパラレル競技で言えばオリンピック選手並みだ。


 通り過ぎかけたが匂いが薄まったことに気付いて進路を修正した。

 通り過ぎたことで、向こう側でもハルがおれたちに気付いて声を出したので、何とか合流することができた。


 早速ミサに治療をしてもらいながら状況を確認する。

「槍を奪った!? すごいわアル」

 ミサも竜血持ちが増殖することを懸念していたようでその鍵になりそうな槍の奪取は嬉しそうだ、ジノたちもホッとしている。


「こんな物騒なものは国の偉い人かエルフの長老にでも預けて、討伐もそっちで出してもらおうか」

 槍は奪ったものの竜血持ち5体が相手となるとおれたちでは戦力が足りない、国の危機は去ったものの小さい町や村くらいなら蹂躙できるモンスターだから討伐もちゃんとやってもらおう。


「預けるのかい? いい武器なら使えばいいのに」

 ジノはそう言うが竜血持ちを増やす以外に武器として優れているかもわからないし。


「価値はありそうだよね。高く買い取ってもらえばいいんじゃない」

 ハルは使うより売る派だ。高く売って同等のいい武器を買えばいいと言っている。問題は一定の品質以上の装備は市場に出回らないことだな。


「国に提出ならともかく商人に売って市場に出回ったら、巡り巡ってまた竜血持ちの増殖騒ぎが起きそうだよな」

 せっかく救った世界なのに。


「国に提出もどうかな? 討伐はしてくれるだろうけど戦力として魅力的だと思われたらリザードマンの竜血持ち部隊とか作って、戦力にしようとすることもあるかもね」

 ルカに言われたことは考えていなかったが確かにありそうだ。


「それでいつの間にか増えていてパワーバランスが逆転するんだよね」

 竜血持ちの反乱。ありそうなことをハルが言う。


「国が意図的に増やした竜血持ちのリザードマンなんてだれにも止められないなあ」

 また世界滅ぼしちゃったよ。


「いっそ壊してしまおうか。討伐は目撃したことを報告すればそれだけでも出るだろう」

「討伐を別個に出すならエルフに預けてもいいけど・・ そうね、壊すのが一番でしょうね」

 エルフを信じたい気持ちと、エルフにも欲に駆られる者がいることを危惧してミサも破壊に賛成する。

 

「壊すにしても設備がいるな。武器屋にでも持って行って壊してもらうか」

「それを壊すなんてとんでもない! なんて言われそうだよね」

「壊すぐらいなら作り替えさせろ! とかね」

 ハルとジノがふざけて武器屋の親父の物まねをする。


「ん。それいいんじゃない。竜血持ちを増殖させる効果さえなくなれば、武器として使っても」

 竜血の槍の扱いが今3つに割れている。

 1つはエルフに預けること、もう1つは壊す。最後に竜血持ちの増殖効果を削り落としておれたちの武器として使いまわすこと。


 今の位置は姫巫女のいるエルフの大里とフラウたちのエルフの里のちょうど中間あたりだ。

 元々帰るつもりだったのでフラウたちの里に寄ってからアクセムの街に帰る。これが予定としては一番素直だ。

 エルフに預けることもできるしアクセムには行きつけの腕のいい鍛冶屋もいる。


「リザードマンたちはしばらく、というか死に物狂いでおれたちを追い掛けるだろう。もともとのルートは待ち伏せされている可能性が高い」

 みんなは真剣に聞き入っている。槍を奪ったとはいえまた戦っても勝つのは難しく、うまく逃げられるかもわからない。


「できれば会いたくねえな、向こうが二手に分かれたとしても3体いる方に見つかったら勝てる気がしねえもんな」


 ジノの言う通り竜血持ちは全員で囲んでしまわないと削り切れない。その間おれがもう一体を受け持つとしてもせいぜい2体を相手にするのが限界だ。


「向こうも2体の方に当たる事を考えると二手に分かれるとは思えないが・・・」


 リーダー格が竜血持ち2体分の強さがあるなら3体づつの戦力で二手に分かれられるが、むしろ今はリーダー格が装備をなくして一番弱いまである。


「ギルドに報告して討伐を出してもらいつつ。フラウたちに輸送の報告をして武器屋にも行けて拠点にも帰れる。待ち伏せを考慮しなければアクセム方向に行きたいかな」

「ボクが先行して様子を探るよ。見つかったら別の方向に逃げるから・・・合流どうしようか? 森の中はやだなあ」

 ハルの偵察は優秀だが、待ち伏せがハルに襲い掛からずに一網打尽を狙ってくる恐れもある。

 森の中のリザードマンを見つけるには視覚、聴覚以外の索敵手段が必要だ。


「いや、おれが行くよ」

 おれの嗅覚なら見つけられる。竜血の刺激臭は潜んでいてもわかる、少なくとも以前に道を通っていればそのことはちゃんとわかる。


 道に戻りたいけど一番近い場所が戦闘のあった広場なので広場を避けてアクセム方面への道へと戻る。

「うっ。いるね」

 道に近づくと竜血の刺激臭がする。今いるわけではないが少し前にこの道を通ったのは確実だ。


 匂いの強さから5体ともこちらを通っている。

「道なりに進めばかち合うね。あとごめん、近づかれてもわからないかもしれん」


 居たことはわかる。嗅覚が万能のように思えていたが過去の情報が強すぎて現在の情報がぼやけてしまう。これでは索敵としては欠陥品だ。


「5体とも立ち止まればはっきりわかるけど1体だけ残って陰に潜んだりされると残りの4体の匂いに紛れて見落とすかもしれない。(嗅ぎ落す?)」


「各個撃破できるならありがたいけど1体だけ残るってことは見張りでしょうね、声の届く範囲に残りがいたら囲まれて不利になるでしょうね」

 囲まれなくても正面からあたって勝ち目ないものな。


「ねー。5体が待ち構えているならアクセムに行くのはあきらめて大里に戻った方がいいんじゃない?」

 ハルの言うとおりだ。アクセムに帰りたいのはおれの都合であってわがままだ。それをリザードマンたちに見透かされてる気分だよ。


「そう、かもしれないな」

 道には出ずに森に戻る。リザードマンに会わないために道を外れて森の中を進むのは現実的じゃない。地面の起伏は激しく思いがけない穴もある。一時的に道を離れるくらいが限界だろう。


「帰りたかった人は残念だろうけど予定を変更して大里に戻る。時間はかかるが人里を経由して大回りでアクセムに戻ろう」

 今まで進んできた道のりが丸々無駄になる上、うんざりするような長い道のりが待っている。


「いいよ。ゆっくり行こう」

「道のりは長いが町で休みながら行けるから大変ではないぜ。道も広いから馬車も使えるだろうよ」

「そうだな、観光がてらに国をまたいで帰るか」

 国の出入りは戦争をしているわけでもないので簡単だ。冒険者はギルドに所属していれば身分証もあるしおれたちは商人の資格も持っている。


 そうと決まればこんなところにいつまでもいられない、広場の方に戻り今まで来た道を辿る。

 引き返したことに気付かれるんじゃないか。そんな不安を抱えながら急いで森を抜ける。 広場まで三日半かかった道のりを二日半で駆け抜ける。


 エルフの大里側にある人の街、ベファレンに到着する。

 人里というだけでほっとしたおれたちは真っ先に宿に向かう。ギルドで依頼の確認だとか煩わしいことは避けてとにかく落ち着いて休みたかった。


「お疲れさま。この後のことは明日話し合おう。おやすみ」

 魔力循環することも忘れ泥のように眠った。

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