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フラウを招待

 帰り道はゴブリンがちょろちょろ出るだけで危険なことはなかった。

 フラウが森の中でも炎の範囲魔法を使ったのは焦ったが森に燃え移ることもなく立ち消えた。

 どうやら炎魔法は消火するまでが一つの魔法となっているらしい。


 長い歴史の中で完成されてきた魔法はおれの気づかないところで安全弁を持っているのかもしれない。

 フールプルーフとか言ったかな?

 バカな人が適当に使ってもトラブルが起きないようにした仕組みの名前は。

 おれの魔法はその場その場で場当たり的に使っているからそういう見落としには気を付けないといけない。


 アクセムの街が見えるとホッとする。

 蜘蛛退治と野宿で思った以上に消耗していたようだ。

 冒険者ギルドはまだ開いていたが休息を優先してまず家に帰る。


「ぷはー。ホッとするー」

 家に入るなりハルがぐでッと横たわる。

 家にいるときは全員床に雑魚寝が基本なので床には毛足の長いじゅうたんが敷き詰められている、もちろん土足厳禁だ。


「ついてきちゃったけどこれ持ち家よね? 私は他で宿をとった方がいいかしら?」

 フラウが遠慮気味に尋ねる。

「いいよ、いいよ。フラウも疲れてるだろうし」

 開いている部屋も人が来た時のために泊まれるようにはなっているはず。


「おかえりなさーい。ごはん食べますか? すぐ用意しますよ」

 キッチンからエリが出てきて出迎える。エリは料理の研究が楽しいらしく保存食も含めた料理は常にストックされている。


 保存のために氷を使った冷蔵庫もあり余りそうならメルエが食べに来てくれるそうだ。

「たべるー。エリのごはん久しぶりで楽しみ」

 エリの料理は本当にうまい。

 一流のレストランにさらに愛情を加えたぐらいの完璧さだ。


「ほんと楽しみ。保存食もエリが作ったやつだからおいしかったよ」

 保存食になったのは後半の数日だけで、前半は普通の料理を収納魔法で持ち歩いていたから実際は久しぶりというほどでもない。


「なにこれおいしい、ほんとおいしい」

 フラウも気に入ったようで一心不乱に食べている。

「明日はギルドに行って報告と武器防具のメンテナンスかな?」

 おなかも膨れて落ち着いたので明日の予定を話す。


「あー、メンテナンスだけ今日中に行っておけばよかったね」

「そうだな、せめて明日の朝一で預けてそのあとギルドに行くか」

「メンテナンスで時間がかかるからフラウの里に行くまで少しかかるけど大丈夫か?」

 フラウにも予定があるだろうし時間のかかりそうな修復は後回しにして軽いメンテナンスだけにしておくか?


「いいよ、すぐに戻ってもネルザと行き違いになるしこのご飯が食べられるなら私ずっとここに居たい」

 フラウはご飯に顔をとろけさせながら言った。

 ネルザも後から来るんだったな、それまではここで待たないとダメか。


「それじゃあメンテナンス待ちの間は休みにしよう」

「いいぜ。アタシはオーク狩りでも行こうかな」

 ジノ、それを休みとは言わない。


「ボクもそっちに行こうかな。アル達はねっとり魔力循環でもするの?」

「ハル。それを言うならまったりだ!」

「わたくしはアルのいる方に行きますわ。ねっとりしたいですね」


「あはは、そこは二人きりにできないな。私もミサと一緒かな」

「おれはどっちもいけるけど全員でオーク狩りしたら休みじゃなくなるから家にいるよ」

「嬉しい」

 おれの言葉にミサが聞こえるギリギリの声でつぶやく。

 ちょっとゾクッとした。ルカも一緒にいてくれてよかった。


「ねえねえ、魔力循環って親子とか師匠と弟子でやるやつでしょ、ミサがアルの師匠なの?」

 フラウが不思議そうに言う。

 不思議そうなのは他種族だからか得意属性が揃ってないからか。


「魔法はともかく魔力の循環に関してはアルがみんなの師匠ね」

「なぜか誰とでもできるのよねー」

「師匠というよりは家族みたいだなぁ。でも親ではないな、弟かな?」


「アタシらが魔力の扱いが上達したのはアルのおかげだよな。魔力量も随分と増えた気がするぜ」

 みんなの話を聞いていたフラウの目が突如ギラッと輝いた。

「魔力が増えるってホント?」

 発言したジノの肩に手を置いて聞くフラウ。

 肩にかけた手は服をぎゅっとつかんで放さない体制だ。


「う、うん?」

 ジノが困ったように周りを見回す。

 どうやら失言だったようだ。

 いやあ、なにが引っ掛かるかわからないな。


「誰とでもできるって言うから自分の魔力をほかの人に巡らせるくらいと思っていたけどそれ魔力同士が混ざっているよね?」

 混ざってるね、そもそも混ざらないやり方知らないね。

 

 フラウとネルザは収納の魔法を見せたときに口止めの約束をしているから話してもよさそうだけどミサとルカは、やっちゃった。みたいな顔をしてるからここで食い止めた方がいいかもな。


「そうそう。ジノとは相性がいいのか混ざってる感じはするよ。でもずいぶん増えたって言うのは言い過ぎかなおれの方はそれほど感じないよ」

 嘘です。めちゃくちゃ増えてます。


「増えたって感じるのはジノだからかもね。相性もあるけどもともと魔法職じゃないから元の魔力量に比べて随分と増えたように感じるのかもね」

 ミサもフォローに入る。


「そうだよ、たまたま魔力の相性が良くて魔力循環しただけで魔力が倍増するなんて夢みたいな話、そうそうないよ」

 ルカは目を泳がせながら言う。


「ふーん。そりゃ夢みたいな話だって言いたいのはわかるけどさ、ジノは相性良いんでしょ、私も火曜の属性だから相性良いんじゃないかなぁ」

 フラウはおれの方をチラチラ見ながら言う

「ためしに循環してみてよ」

 おれの方に向き直ると両手を差し出してきた。


「じゃあ行くよ」

 おれはフラウと手をつないで魔力循環を始める。

 頭の後ろからミサに「控えめにね」と言われたので普段より細くゆっくり吸い込んで送り出す。


「ひゃっ。やっ。あああん」

 腰を抜かしたのかフラウが座り込んでしまう。

 手は離れていないので魔力循環は続いているその上急に座り込んだことにびっくりしたおれは魔力の流れを乱してしまった。

「やぁっ。無理無理無理無理」


 とうとう手を放して床にぺたんと崩れ落ちる。

「まだむずむずする、えっちぃ」

 胸を抱え込んでおれを睨みつけるフラウ。


 おれが弁解する前にフラウとの間にミサとルカが割り込んで二人を遠ざける。

 ミサはフラウを連れて奥の部屋に入ってしまった。


「おれ、おかしなことはしてないよ」

 置いていかれたおれは目の前のルカに弁解する。


「わかってるわアル。刺激が強すぎたのよ」

「だからそんな刺激が強いことなんて・・・ルカたちの時はこんなことにはならなかったじゃないか」


「ふふっ、わたしたちの時もちょっとはあったけどそうね、アルの魔力が変化したのは足に魔力を通したと言っていた時かしら、あの時はわたしたちも「うっ」っとなったけど今までアルの魔力に慣れ親しんでいたから耐えられたのね」


「それは、いやだったの? おれに気を使ってたの?」

 ミサがガツガツとやりたがるものだから嫌がられているとは思っていなかったのだがミサ以外は無理をしていたのだろうか。


「嫌なわけないじゃない! むしろ私たちがアルを利用してたの。フラウも始める前は興味持っていたでしょう、魔力量が上がるって結構すごいことなのよ」


「ホント?」

「いやだったら言うから、遠慮なんかしてないから」

「そうだぞ。もしフラウも初めから参加してたらミサみたいに欲しがる子になってたかもしれないぞ」

「ボクもいやじゃないよ。フラウって見た目より幼い子かもしれないよね」

 幼かったのか・・・幼い子にえっちぃと言わせたおれ・・・。嫌すぎる。


 戻ってきたフラウの目には泣いた跡があった・・・

 

「フラウは今回はあきらめるそうよ彼女自身でレベルアップを含めた鍛錬を行って成長したらまた挑戦したいと言ってたわ。もちろん一連のことはきちんと秘密を守ってもらいます」

 ミサはフラウの肩を抱いておれたちにフラウの気持ちを伝える。

 その間フラウはコクコクと頷いていた。


 くっ、罪悪感が。

 今までは魔力の流れに出力量ばかり求めてきたがこれからは繊細さも持ち合わせなければいけないようだ。

「なんか、ごめんな」

 おれが話しかけるとフラウはびくっとするし。


「いえっ、アルさんは何も・・・」

 さん付けになってるし。さっきまで呼び捨ててたじゃんか。

 

 その日の夜はエリがフラウと一緒に別室で寝た。

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