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迷惑行為と報復

「すごかったでしょ、ギルド長。」

 メルエが自慢げに言う。

「別次元ですね、でも昇格出来てよかったです」

「そうそう、おめでとう、CランクはDランクの依頼をいくつかこなせば上がれるから頑張ってね」

 落ちた剣を拾って入り口に戻った。

 ジノはがっくりうなだれていたがメルエに肩を押されて歩き出したようだ。


 ギルド内のテーブルに戻り話を再開する。

 メルエは途中でカウンターに寄り、おれたちのカードを更新してくれた。

「はい、Dランクのカード。じゃあさっきの話通り、リーダーがアルくんでエースがジノちゃんね。

 今日の依頼はどうする? 討伐か採取なら納品時に受注で構わないよ。

 護衛だとすると今日出発はもう少ないかな、護衛任務は結構暇だからジノちゃんは向いてないかもね」

 カードを受け取り、気になった所を尋ねる。


「ヒマなんですか? 安全ならなんで護衛を雇うんでしょう?」

 メルエは頷く。


「安全ではないのよ、襲撃側も護衛の戦力を見てから来るから。

 大けがして護衛を倒しても実入りがちょっとじゃ誰もやらないでしょ。

 安全に行こうとして人数を増やせば取り分も少なくなるから今ぐらいでバランスしているの。

 それでも来るときは来るから護衛任務の時は覚悟してね、ヒマか超危険かのどっちかだから。

 最近は超危険の割合は100回に1、2回かな」

「それはイヤですね、おれもヒマなのは好きじゃないし、超危険なんてまっぴらごめんですよ」

「気持ちはわかるわ。ただ、わかってると思うけど討伐も採取も安全なわけじゃないからね、安全な採取に依頼なんか来ないから」

 同意したメルエにくぎを刺され苦笑いをするとジノが提案をしてくる。


「あのー、いいか?今日の討伐で予定していたところがあるんだが」

「へー、どこ」

 メルエが訊ねる。

「湿地かダンジョン低層でスライム狩りを考えていたんだが」

「いいわね、2人なら攻撃力も足りてるし2人とも討伐大好きだもんね」

 メルエは頷いて乗り気だ。しかしおれも討伐大好きって思われてたんだ・・・


「湿地なら南東のゴルムス湿原、ダンジョンもそこね」

「Dランクだから討伐も納品もダンジョン1層まで、2層から先は危険だし無駄になるからダメよ」

「了解です。準備しておいた方がいいものってありますか?」

「ダンジョンに潜るなら日帰り予定でも多めの食料と野営セットはあった方がいいわ。

 強いモンスターが帰り道に居座ってる、なんてこともあるらしいから」

「はあ、そうなんですか。今日は入り口付近だけにしておきます」

 ジノも納得したようで頷いている。

 それでは、と言って席を立ち一応掲示板に立ち寄ってスライム討伐があることを確認する。

 掲示板近くのテーブルでスライムのことを話している集団がいたのでつい聞き耳を立ててしまった。


「なあ、やっぱりこの4人で組もうぜ、仕事の幅も広がるしスライムだって3核以上が出たら後衛だけじゃ大変だろ」

 30代後半の薄汚れた男たちがきれいな女性2人組に話しかけている。


「前も断ってるけど組まないわよ。あなたたち女の子とばっかり組みたがるじゃない。見え見えなのよ」

 男2人が女性2人を口説いている所だった。ランクは近そうだけど今は関係ないなとスルーして外に出た。


「ジノは寄るところある?」

「いや別に」

 両手のひらを上に向けジノが答える。背負い袋とウォーハンマーを背負った硬い革鎧姿でワイヤーが編み込まれたマフラーを巻いた身軽な格好だ。

「おれは買うものあるけどお金が足りないから帰ってからだな」

「何買うんだ、少しなら貸すよ」

「硬い革鎧1式。サイズ合わせを早めにしたくて」

「サイズ合わせなら手付けだけ払っとけよ、今から行こうぜ」

 グイグイとジノが歩きだしたので、後からついていく。


 防具屋で手付けを払いサイズ合わせをし、武器屋で剣を見てもらい剣の鞘を特別に注文することにした。

「じゃあ行くか、馬車だろ?」

「ああ」

 乗合馬車に乗りゴルムス湿原まで行く、おれたちを下ろした馬車はそのまま先の町まで進んでいった。


 ダンジョン方面に歩き出し、スライムらしきものを見つけたので、ジノと顔を見合わせて頷きあう。

 武器を装備して歩き出す、ジノはマフラーを頭に巻き付け顔の下半分を隠したターバンのように身に着ける。

 おれたちはスライムに気付かれる寸前で左右に分かれ襲い掛かった。

「えいやぁ」

 リーチの長いジノがスライムの核を叩き潰しあっさり終了、核の中にあった魔石を拾い上げる。


 その後数回戦い、13匹ほど倒したころダンジョンの入り口にたどり着いた。

「外のスライムならちょうどいいくらいだけど、これ以上強くなるとおれの攻撃だとギリギリだな。中の奴は強くなるのか?」

 スライムを倒すためには外皮の抵抗と核の抵抗を貫いてダメージを与えなければならないため、攻撃力が不足すると1匹倒すのに結構な時間がかかってしまう。


「スライムの強さは核の数で決まる。大きさもはっきり違うからそれを避ければ問題ないはずだぜ」

 ジノが答える。数が違うのかギルドで話していた4人もそんなこと言ってたな。


「早めに昼食取ったら中に行くか、おれ初ダンジョンだよ」

「アタシもだよ、Eランクでソロじゃ無謀すぎるからな」

 ダンジョンの中は薄暗いながらも明かりがありたいまつがなくても問題ないくらいだった。

 通路の幅は3メートルほどあり両手持ちの前衛が2人並んで戦えるくらいだった。

 入り口から正面と左右に道が分かれていて左右の道は両方とも離れたところで戦闘中のようなので正面に進む。


 しばらく歩いては撃破、分かれ道では迷わないように常に右手側を選んで進む。エンカウントは外よりは多い。10匹狩った所で帰還を提案する。

「帰りの馬車もあるから、そろそろ帰るか?」

「そうだな、明日は籠る準備して2、3日やろうぜ」

 たしかに物足りない、討伐大好き人間としては討伐袋にミッチミチに詰まってないと終わった気がしない。


「ああ、そうだな」

 そう答えて引き返す、帰りは左手側を進めば入り口に着くはずだ。

 そろそろ入り口かなというところで立ち話をしている2人組に出会う。


「こんにちは」と声をかけ遠目を通り過ぎようとすると声をかけられた。

「待って、入り口近くに4核スライムがいるの、行かない方がいいわ」

 4核!? 2核ですら見たことないのに。

「おかしくないですか、ついさっき通った所ですよ」

「おかしいのよ、スライム同士の融合なんて自然に起こらないし、無理やり追い込んで融合させても強くなるだけで報酬は変わらないからそんなバカなことする人もいないわ」


 4核の強さもわからないのでジノに聞いてみた。

「ジノのあの技で4核は潰せる?」

「・・・動きが止まれば通るはず、1発通せば3核になるからそこからは楽だ」

 ジノが答えると女性の一人が身を乗り出してきた。今はフードを下ろしているので明るい色の栗毛がよく見える、たしかギルドでナンパされていた人の一人だ。


「いける?こっちは前衛がいれば助かると思っていたの、わたしがそのあと3核をつぶせるわ、攻撃前にはこの子が動きを止めてくれる」

 話を向けられたもう一人がフードを少し後ろにずらしあいさつした。

「前衛のあなたが攻撃するタイミングで動きを止める、そのあと断続的に止めるから敵が動いているときは防御していて。・・・わたくしはミサ、よろしく」

 自己紹介もしていないことに気付き続けてあいさつした。


「おれはアル」

「アタシはジノ」

「わっわたしはルカ・・・よろしくね」

 ミサは金髪、エメラルドグリーンの瞳の切れ長の美女だ。ルカはかわいい感じ、ジノはどっちかというと男前のほうか?


「おれは攻撃が通らないだろうから2核になるまで防御に集中、撤退は3人が決めたら残りは絶対に従うこと、いいね」

 これはジノに対して特に言っておく。

「おぅ、もちろんだ」

 それは、撤退を考えていなかった顔だな。


 4核スライムに近づき気付かれたタイミングで走り出す、すると頭上を何かが追いこして行きスライムの真上で光を下に向かって放った。

「これは雷光?精霊魔法か!」

 スライムの上にいるのはクリオネのような形をした雷精霊? が発光して稲光を落としている。


 間合いに入ったジノが斜め上から打ち下ろし攻撃を加える。

『魔法剣火槌』

 スライムの核は一瞬抵抗を見せてはじけ飛ぶ、核を1つ減らし3核になった所で後方から土色の槍が飛来しスライムの直前で再加速する。槍は核をとらえて破壊。


 いまだ動きの悪いスライムの攻撃をそらして2核スライムを攻撃する、多少抵抗は強いが剣をねじ込み核を破壊。


 もうただのスライムで危険もないと思ったところで横合いから怒鳴り声が聞こえる。

「おれの仕事を取りやがって! くそっ、じゃまだ」

 おれを突き飛ばしスライムを攻撃する、1核となっていたスライムは当然のように倒される。


「あんたら大丈夫かい困っていたんで助けに来たんだが」

 するともう一人が現れ、後ろの二人に話しかける。

「1核のスライムを横取りして助けたぁ? なにいってんの?」

 ルカはキレ気味に答える。


「いや、見かけたときは4核だったんでな・・・そうだな何でもない。おいっ行くぞイゴウ!」

 おれの近くの男に声をかけ引き下がる。

 イゴウはおれを睨み、吐き捨てていった。


「余計なことしやがって!」

 理不尽にイラっとしていると近くまで来ていたルカから声がかかる。

「何よあれ、むっかつくわね」

「関わらない方がいいわ、もう行きましょう」

 ミサはもうこの場から離れたいようだ。


 同意して、スライムの魔石を拾うと後ろから声がかかる。

「1つはおれのだ! 残していけ!」

 じゃましただけのイゴウが吠えて、もう一人から「おいっ、やめろ」と言われている。

 もめたくもないので1つ残し外に出る。


「やな感じだったな」

 ジノも怒っているようだ。あの場で殴り掛からなくてよかった。

「いやな気分は忘れよう。でもさっきのことは報告しておいた方がいいと思う」

「あいつらの態度?それとも4核スライム?」

 ルカに尋ねられ答える。


「さっきの奴ら、ルカたちを勧誘してた奴らだろ?」

 ルカは少し驚く。

「知ってたの?あんなのと知り合いとは思われたくないけどちょっと前からしつこかったのよ」

「あいつ、じゃまとか余計なこととか言ってたから、ルカたちを困らせてから助けるつもりだったんだよ」

 おれの予想を話す。


「それじゃ、あいつらが4核スライムを作って待ち構えていたっていうの? うそ、ちょっと怖い、なんかあれみたいじゃない、あれ」

「MPK?」

「そうそれ!」

 ルカの疑問にミサが答えた。モンスターを利用したプレイヤーのキルは因果関係を証明しづらい。それにしてもこの世界ゲーム用語多いな。

「しばらく気を付けた方がいいよ、あと余計なお世話かもしれないけどあいつらとは組まない方がいい」

 言うまでもないが忠告をしておく。


「当り前じゃない!ぜーったい嫌よ!」

「襲われるかもしれないの? ちょっと、怖いこと言わないでよ」

 ルカがキレてミサが怯えている。

「おれだって怖いよ、理不尽だけどおれも恨まれたみたいだし」

 暗い気分になった所でジノが提案をする。

「なあ、これは全員一致したらの話だが」

 全員、耳を傾ける。


「・・あいつら殺しちまうか?」

 全員、爆笑。

「いいわね、あとくされないわ」

「よし、おれが穴を掘る」

「だめよーだめだってー」

 ルカはジノをバンバン叩き。ミサは腹を抱えて笑っている。


 ジノはきょとんとしている。おれも調子に乗って穴を掘るとか言ったけどお前は結構本気だろ?

 小声で「3対1かー」とか全員一致でなかったことを悔やんでいるが1なのはお前の方だからな。

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