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監禁からの脱出

 流れがわからないと言っても手の先からの魔力の出入りはこちらで操作できるから・・・。

 そうだ! おれはルカの左手とつないでいた右手を放しルカのルカの左足をつかんだ。

 「えっ。なに?」

 魔力の出入りを手からコントロールして足の通路を開く。

 これならば開通する労力は半分で済むし魔力の出し入れのタイミングも取りやすいだろう。


「ルカの魔力の流れを右手から左足につなげることだけに集中して」

 おれは右手から吸い出すと同時に左足に流し込もうとする。

 左足の入り口は閉じているので魔力の流れはつながらないのだが何をしようとしてるのかはルカも気づいたようだ。

 しばらくの間魔力を出し入れしているとルカの左足もじんわり暖かくなったようだ。

 ルカが自分の足をマッサージしてはそう言っていた。


 それを聞いていけそうな雰囲気だったのでつい流れを強めてしまう。

「きゃっ。なに」

 それがルカに伝わりびっくりさせてしまった。

「悪い。勢いがついちゃった」

「もう。そういうときは言ってよね」

 怒らせてしまった。反省しないと。

「ごめんって。今いけそうだったからさ。じゃあ行くよ」

 魔力の通路は膝くらいまで通ってると言ってたので残りを進めてしまおうとしたが、ルカにバンバン叩かれてしまった。


「待って待って。言ってとは言ったけどやっていいとは言ってない」

 また怒らせてしまった。ルカの顔が真っ赤だ。

「さっきまでと同じペースにして? ごめんね」

 怒らせたのに謝らせてしまった。

「こっちこそごめん。続きは明日にしようか」

 急ぎすぎた。ミサと同じ扱いをしたらダメだな。

「うん」

 申し訳なさそうなルカを置いて燻製を作っているジノの所に行った。

 水もあるし、もう食糧で困ることはないな。


 それからはルカの足に魔力を通すことに5日かけて、ハルとジノも上半身全体に魔力を通す訓練をしながら過ごした。

 ルカの足の通路が開いた時にミサの時と同じように魔力に匂いを感じたのだが恥ずかしがると思って黙っていた。

 ミサの魔力は森の匂い、ルカの魔力は花の香りがした。


 宝物庫のチェーンメイルやミノタウロスのハルバードに魔力を通してほしいと言われじっくり通してみたが特に特殊な効果があるわけでもなかった。あったとしても実戦で使いこんでからじゃないと出てこない気がする。


 ライノプスとヒポポダイルは元々ライバル関係だったことで対峙したときに特殊効果が発現したとも考えられる。

 そんな偶然はこれから先ないだろうということで前に話していた魔法の道具探しはやらないことになった。

 

 宝物庫のチェーンメイルは特殊効果こそなかったもののサイズの自動調整は付いていて誰が着ることもできる。

 ヒポポダイルの鎧はルカに慣れて欲しいのでおれかジノがチェーンメイルを装備することになるのだが町までの間どっちが付けるかでもめそうになった。

 おれの初期装備の柔らかい皮鎧がいい性能だったらチェーンメイルはジノが付けることになったけど、そうでなければおれが付けることに決定しそうだ。

 ジノはバリバリの前衛だからジノに付けて欲しかったけど、結局アルも前衛やってるよねと言われてしまった。


 チェーンメイルはサイズ調整機能が付いているだけあってなかなかの性能に見える。

 色合いからしてミスリルじゃないかってミサが言ってたのでジノが使っていたウォーハンマーの柄と見比べてみる。

 柄は加工されていてコーティングされていたので色はわからなかった。

 鑑定の練習にならないかと思い目に力を入れて凝視してみたが駄目だった。


 魔力を通して流れてきた魔力に違いがないかと、そして共通点がないかとしばらくの間流していたが不意に涼やかな香りと苔むした匂いを感じこれらは同じものだと直感的に感じた。

「これはミスリルだよ。同じ匂いを感じた」

 おれに目で見る鑑定の能力はなさそうだ。

 代わりに匂いを嗅ぐ鑑定ができるらしい。


 と言っても今のところわかるのは同じものかどうかだけ。

 鑑定どころか目利きにもならないレベルなんだが。


 それから数日が過ぎてようやく入り口の扉が開く日が来た。

 ダンジョンに入ってから一か月。

 捜索願が出されそうなほど長期間になってしまったが何とかしのぎ切った。


 日付が変わり扉が動く様子がないので焦ったが月の表示のあるプレートを引っ張ったら無事に扉が開いた。

 「わぁー」と歓声が出る。

 扉をくぐり抜けては各々が落水や着火の魔法を試している。

 おれも自分の荷物から初心者用の柔らかい皮鎧を取り出しミスリルのチェーンメイルを脱いで身に着ける。

 これが耐久力無限だったらなと思いながら初心者用の剣をめくった部分に突き刺してみる。

 剣の方が切れ味があまりよくないせいか貫通はしないが傷はついているようだ。

 これは外れかな。おれはハルを呼んでヒポポダイルの短剣で初心者用の鎧に穴が開くかを試してもらう。

 プスッ。サクッ。

 あっさり開いた。ちょッと動かせば穴が広がっていく。

「もういい。もういいよ」

 ただの安物だった。そんなことだろうとは思っていたけど。

 おれはそのままチェーンメイルを着こんで、着た後で鎧を重ね着していることに気付いた。

「重ね着できるんだ」

 薄くて柔らかいせいでほぼ服のような扱いができるようだ。

 防御力も服並みだけど。


 宝物庫から引きずり出した物は通路まで持ち出して『収納』でしまい込む。

 どんな財宝よりも食べ物のほうが大事だってことが今回は身に染みた。


「帰ろうか」

 おれはみんなを促してミノタウロスの迷宮を脱出した。


「うっわまぶしい」

 外に出るとちょうど日が昇った所で日差しがまぶしい。

 戻ってきた実感がわいてついへなへなと座り込んでしまった。

 

「このダンジョンに直接来たからこっちの街に寄ってなかったな」

「そうだね、そこで宿取ろう。しばらくゆっくりしたいな」

 おれたちは腰を上げて近くの街に向かった。


「ここか、アントンの街だっけ。なんかお祭りみたいのやってるけど」

 町の人に聞いてみると、この街では新月の日にはこのようなお祭りが開かれているそうだ。

 なんでも近くのダンジョンが新月になるとモンスターが出なくなって自動的に冒険者が休みを取るため次第に暇を持て余した冒険者が酒場や屋台に金を落とすようになり今のように祭りになったそうだ。


 思い当たる節がある。

 行きも帰りもモンスターがいなくておかしいとは思ってたんだよ。

 迷路しかないから遊園地のアトラクションかと思ったよ。


 それでか、冒険者もいなかったし。

 この街に寄ってさえいればそのこともわかって新月の日は休みにしてたな。

 そのおかげというかそのせいであんな隠し部屋に閉じ込められることになったし。

 あの隠し部屋は新月しか開かないから新月の日に潜らない冒険者には長い間見つからなかったわけだ。


 結果的に財宝は見つけたもののよっぽど入念に用意していないとあの部屋は生きて出られないだろうな。

 財宝は発見者のものだし余計な犠牲者が出ないようにギルドに報告しておこうかな。

「そんなことより宿だな。いい宿取って明日は休もう」

 祭りということで標準的な宿はすべて埋まっていたのでそこそこいい宿に泊まることになった。


「ゆかりの宿か、和風なんだね」

 ゆかりの宿という高級旅館で露天風呂に入り部屋で食事をとった。

 ミノタウロスのダンジョンが近いから肉尽くしかと思っていたがむしろ食べ飽きているから高級なところでは肉以外を出すのだろうか。

 料理は海鮮尽くし。山奥の旅館で刺身が出るのと同じことか。


 料理も食べ終わりもう一度露天風呂に入っている間に部屋には布団が敷かれていた。

 畳だし。もうほとんど日本。


 端っこの布団に横になるとルカとミサに両手を取られてずるずると部屋の真ん中に引きずられた。

「魔力の循環? 今なら魔力の紐でつなげるから端でも大丈夫だよ」

 そういったが。

「まあまあ」「まあまあ」

 と言われ両手両足を拘束されてしまった。

 身動きできないこの環境。苦痛のはずなのになぜかいやじゃない。


 SFで見るような医療用ポッドの中にいるような充足している感覚。

 これは子宮だ。甘やかしの終着点だ。

 そんな環境で起きていられるはずもなくすぐに眠りについた。


 疲労がたまっていたため翌日は昼過ぎまで寝て午後から買い物に行くことになった。

 食料はやはりミノタウロス、バイソン、バッファローなど牛系の肉が安く在庫も多いそうだ。

 行商人ならここで牛系の肉を安く仕入れて他で高く売るのだろう。


 食料の補充はいらないか、今回と同じような目に合わないように新しく手に入った魔法の鞄に食料は多めに入れるべきだが今は宝物庫で倒したボスミノタウロスの肉が大量に入っている。

 魔法の鞄は長細いものは入れやすいがハルバードやウォーハンマーのように刃や槌部分が大きいものは入り口の大きさからして入れにくい。

 無理すれば入りそうだが、出し入れのたびに鞄を傷付けそうになる。

 

 武器屋で投てき用の安い槍を10本購入。

 ルカは土槍の魔法で作ることもできるが戦闘中に魔法を一つ省略できるので使い分けていくことになるだろう。

 

 武器鍛冶の店でウォーハンマーの改造を頼もうとしたらこの街の腕のいい鍛冶師は今アクセムの街に行っているということだった。

 なんでも、魔物の素材から特殊効果付きの魔法の装備を作りだした防具鍛冶がいるということで勉強がてらの観光に言っているらしい。


 心当たりあるな。

 ウォーハンマーを作ってもらったのもアクセムの街の鍛冶師のおっちゃんだし改造もそこに頼む方がいいかもしれない。


 防具店では掘り出し物は特になく、かといって気軽に買うにはお高い鎧でいまいち購買欲を誘わなかった。

 最高級品が真銀と呼ばれているくすんだ銀色のチェインメイルで、軽いは軽いのだが柔そうで店主に聞いたら実際に柔らかいらしい。

 貴族や金持ちが見栄で買ったり、冒険者が使う場合は鉄のプレートで各所を補強してプレートメイルとして使うらしい。


 こちらの人には高級品なのだろうがおれからすると安っぽく見える。

 アルミ箔やアルミ缶をつなぎ合わせたような。

 ・・・そうだよこれアルミなんじゃないの?

 素材自体は地面にあるだろうし大量に抽出できないから高いだけで性能というか柔らかさは鎧には向かない気がする。


 真銀に組み合わせるプレートとして真鉄というものもあった。

 さびない、汚れないということだがこちらはステンレスのようだった。

 こっちは鎧として役に立つだろう。しかし前も言ったように鍛冶職人が不在のため加工などもできないということだった。


 だめじゃん。

 真銀+真鉄のプレートメイルなら実用レベルだろうけどジノ専用だろうな。

 おれだと重すぎて使いづらい。

 あと真銀部分の消耗が激しそうか。


 相談した結果ここでは防具は買わずに一度アクセムまで戻ろうということになった。

 アクセムの鍛冶師のおっちゃんがかなり腕が良さそうでウォーハンマーの加工も鎧の新調もそこでしようと決まった。

 

 道具屋でも特に買うものもなく宿に戻った。

「もう一日ぐらい休みにしてもいいけど」

 あまり乗り気でなく言うと。

「ここでやることもないから移動しましょう」

「そうだな、休むにしてもハルフェで休めば買い物なり出来るだろ」

 ミサとジノは移動を希望したのでハルとルカの顔も見てそうすることにした。

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