部屋割りの問題
「それはちょっと・・・。今セクハラって言ったばかりじゃん」
「それは取り消すわ。大げさに言いすぎたの」
それもどうなんだろう。多少はあるんだろ?
ルカに助けを求めるが。
「アル。こうなったミサは誰にも止められないわ。魔法の発展のために頑張って?」
疑問系で励ますか。
「アル。大丈夫。ボクは裁判になってもアルの味方だよ」
味方がいない。今この場所で味方がいない。
「少しだよ」
おれはあきらめミサの足を取った。
ミサの足はすべすべしてしっとりしている。そんな感触を頭から締め出して魔力の流れに集中する。
女王様プレイみたいで興奮するとか思わない。全く思わない。
ミサの足に魔力の出入り口は無いようでまだ循環はできない、出入り口らしき場所に魔力を送り込んでみても反応はない。
「アル。強めにやっていいのよ」
いちいち発言がセクハラなんだよな。
出入口をドアとしてイメージする。さっきまで軽くノックをしていたのだが。いまはノブをガチャガチャしている。
カギは掛かっていない、長年使われていないためさび付いて固まったかのようだ。
「ええっと。強めにするよ」
ミサがコクッと頷く。
ノブを握ったまま肩から体当たり。このドア内開きでいいのか?
「ひっ。続けて」
右手からミサの左足に魔力が入り込んだ、一拍遅れてミサの右足から魔力が膨れ上がる。
ミサの右足の魔力の通路は内側から押されているようなドアだそれを左手で引き開ける。
「うわっ」
そのとたんおれの肺の中がミサの匂いでいっぱいになる。
臭くはない、足の匂いじゃない。そもそも魔力に匂いなんてついてはいない。
魔力にミサというイメージが強く付きすぎて、さっき嗅いだベッドの匂いと強烈に結びついたわけだ。
魔力の流れを細くゆるくコントロール。深呼吸して存在しない匂いを入れ替える。
目をつむってベッドに突っ伏す。ほぼ土下座状態だ。
「ミサごめん。思った以上にセクハラだった」
ミサがうんうん頷いている気配がする。
「わかってもらえました? わたくしはわかったうえでお願いしたのだから気にしてませんよ」
気にしてよ! わかった上なのがおかしいよ。
土下座したまま魔力の循環を続けミサの足の魔力の出入り口が安定したのを見計らって、ミサの足同士をくっつける。ミサが自分自身で循環したのを確認して手を離した。
突っ伏したまま深呼吸をしたが現実のベッドの匂いにまたもうろうとなる。
だれのベッドだ? ミサだ・・・
息を止めて顔を上げたら、ミサがОの字型に足を広げていた。
おれはそのまま横に転がりベッドから転げ落ちた。
わかるけど! 魔力の流れをなだらかにするためだってわかるけど!
今やるなよ! ミサのバカ、ミサのバカ。ミサは痴女。
鼻が敏感になりすぎて、この部屋の匂いが耐えきれない。
女子中学生の運動部の部室とかこんな感じだろうか。
「外出てくる」
横にもなりたいが、この部屋ではだめだ。部屋を一緒にしたのは間違いだったのではないだろうか?
宿を出て町を歩く。
今は酒場の匂いも受け付けないので屋台でスッキリする酸味の強い果物の飲み物を買って公園のベンチに座った。
「お兄ちゃん、手のあいだがキラキラしてるのなんで?」
ぼうっとしているとちっちゃい子に話しかけられた。
手と手の間に魔力の糸をつないで魔力を循環させていたのだが、魔力って見えるのか?
「手の間? 今魔力が流れてるけど、おれには見えないんだ。君は魔力が見えるの?」
ちっちゃい女の子はおれの膝に手を乗せて寄りかかりながらおれの手の間を見ている。
「魔力? 魔力かわからないけどキラキラしている人は時々いるよ。でもお兄ちゃんみたいなちっちゃい人で見たのは初めて」
ちっちゃい言うな。
「そのキラキラしている人たちはなんて言ってたの?」
「聞けなかった。おっきくて怖かったの」
おっきくて怖い人で魔力が見えてキラキラしてたのか、これは強さを見極める指標にならないかな。
つまり鑑定スキル。
数値化までは出来なくても、おれより強い、おれより弱い。
おれより弱いが数がいると危険。
そのくらいの分別ができれば撤退の判断には困らない。
応用すれば魔法のかかった装備や道具の鑑定。
・・・鑑定と呼ぶほどでもないな目利きくらいか。
「お嬢ちゃんありがとう、これ飲むかい?」
飲みかけだけどな。
「いらなーい。すっぱいやつでしょ。またキラキラ見せてねー。お兄ちゃんバイバイ」
「ああ、バイバイ」
すっぱい飲み物は疲れてるときにはうまいのにな。
おれは飲み物を飲み干して立ち上がった。
「疲れてないときに微妙なのは認める」
休憩しても今一つすっきりしなかったので町の外周をランニングしてみた。
汗だくになったので水魔法と風魔法で汗を洗い流し宿に帰る。
「やっぱり部屋は分けないか?」
そういった俺に対してミサが頭を下げた。
「ごめんなさい! そんなに嫌だったと思わなくて」
「嫌ってわけじゃ・・」
ここで嫌じゃないと言ったら、じゃあ好きなんだろ。とか言われそうだが。
「嫌悪感じゃなくて距離感の問題だよ。ただでさえ女性パーティーに男が一人紛れ込んでいるんだから誤解されるようなことは避けたいんだ。
「今更な気もするけど」
ハルに突っ込まれるが。
「今回はたまたま6人部屋だったけど、6人部屋がない宿も多いだろうし次からは4人部屋と1人部屋でいいよね」
と、要求を言いきったらルカがミサをジト目で見ていた。
「アルには1人部屋の危険を知ってもらわなければいけないわね」
そうルカが言った。危険?
「アルが一人部屋で分かれていた時に夜中にミサの姿が見えないときがあったの」
なにそれ怖い。
「ミサはアルの部屋で見つかったわ。アルは知らないでしょうけど」
「おれは・・・何かされてたの?」
「されてたといっても添い寝ぐらいだけど。
ミサも寝ぼけてたので不問にしたけど、これからエスカレートする危険性はあるわね」
「つまり部屋を分けた方が危険なの?」
ハルが聞いた。
ベッドの上で土下座していたミサが頭をあげる。
「今はすっきりしているけれど、もやもやしているときにアルが一人部屋にいたら自分を押さえる自信がないわ」
ルカがミサの頭をベッドに押し付ける。
ストーカーの恐怖!
ミサもおれが本気で嫌がっていないことを察しているのがたちが悪いが、いやじゃないからこそ困るんだよ!
今日から一人部屋を取ろうとしたが考え直して、おれのベッドだけを衝立を使って隔離した。
「おれの寝るエリアは進入禁止ね」
「それで明日からなんだけど、都合よく6人部屋がないかもしれないんだよね」
「そうねー、大きめの部屋でも4人部屋までが多いわね」
おれの疑問にルカが答える。ここでやっとミサの頭を離した。
「4人部屋の方でミサを見張るとして、アルの方を二人部屋にして誰か護衛に置く?」
「護衛ってジノかボク?」
「なんでわたしが外れるの?」
ハルの提案にルカが反発する。
「ルカはアルと二人きりでいいの? ホントにいいの?」
が、ハルに詰め寄られて黙ってしまう。
「アルが4人部屋に入って、ミサが一人部屋ってどうだ?」
ジノの提案にミサが泣きそうだ。
「あははっ。それじゃあミサがかわいそうよ。ミサを隔離するなら私がミサの方に行ってもいいわ」
ルカがミサの頭をなでなでしながら言った。
「いいんじゃない? ルカとミサで二人部屋。残りの3人で四人部屋。これで何かあっても止められるし。 ・・・ええと、止めていいんだよね?」
ハルに聞かれて頷く。
「止めて。おれの方が理性を失ってたとしても止めてくれ」
そういっておれは衝立で仕切られたおれの場所へと行った。
「それじゃあ、おやすみ」
今日は休みだったのにやたら疲れた。めたくそ眠い。
「ぐ、ぐあぁ?」
レベルアップしない痛だ。勘弁してくれよ、これから毎日これかよ。
砂粒が血管を流れているというか、余った魔力が結晶化でもしてるのだろうか。
「アル、大丈夫?」
心配そうにルカに声をかけられた。
「平気じゃないけど、平気。前にも言ったレベルアップしない痛だから」
「それアルだけよね。普通はみんなレベルアップしないのが当たり前だからそのうち慣れるわよ」
「そうだよね」
そうだといいな。
身支度を整えてルカと一緒に朝食のため下の階に降りる。
「アルはえ、エッチなことはいつまでしないとか決めてるの?」
朝からヘビーな話題を・・・
「冒険者として落ち着いたらとか、引退して行商人になったらとかかな。特に決めてないよ」
「そう・・・一応わたしも候補に入れておいてね」
そういってルカは階段をトタトタと駆け下りていった。
ハーレムか。
絶対もめる。
おれには対処しきれない。
忘れよう、今日死ぬかもしれない生活なんだから。
ああ。だからか? 刹那的な世界だからこそみんな生き急ぐのか?
朝食では今日の予定を話し合う。
予定通りに領の中心の都市ハルフェに向かいそこで情報を集めて行き先を決めることになっている。
どの町に行くかは決めていないがどの町に行ったとしても町の周りにはゴブリンが出るそうだ。
というよりはゴブリンのいる場所を選んで町を作っているところがある。
町を作るときも作った街を維持するにも簡易的な結界で追い払えるゴブリンは人にとっても都合のいいモンスターらしい。
朝食を終えたらハルフェまで移動だ。
相変わらず徒歩。馬が借りられる経済力が付いたら、馬を借りる必要がない体力がついていた。
道中襲われることもなくハルフェに到着。
おれが盗賊だったら歩きの冒険者なんて狙わない。




