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野営地の柵

 途中わかりにくい所は読み飛ばしてもらって構いません。

「柱が建ったぞー」とだけ思ってもらえれば。


 周りの森って木材? 生木?

「木材はちゃんと乾燥させないと使えないんじゃない?」

 乾燥前に板にすると反り返るんだっけ。

「もちろん今すぐには建てられませんけど、また1、2か月後にここに運んでくるのなら、今切り倒してこの場所で乾燥させるのも変わらないじゃないですか?」


「そんなもんかな。1、2か月で乾く?」

「こだわるなら、もう1、2か月延ばしてもいいですし、木曜属性に木を乾かす魔法もありますよ」

 小屋なんだからこだわるわけでもない。見張りが不要になればいい程度の用途だ。

 雨が降っていなければ壁だけでも構わない。

 床も別にいいんだよな。地べたに寝そべればいいし、寒い時には枯れ葉を集めて敷いたりしたけど。


「壁だけでいいんだよ。こだわる気なんか全然ないし、ゴブリンとかが乗り越えられなければ柵でもいいくらいだな」

 一気に現実味が出てきたな。柵だったら杭でも打って板を渡して乗り越えられない様にするだけだ。


「杭か。壁となると大変そうだけど、杭の代わりになるような柱を立てるだけなら、魔法でできるかもな」

 王都や領都にあるような街壁は王宮に勤めるような高位魔術師の魔法だろうけど、柱だけならかなり魔力を節約できる。

 ルカがよく使っている『土槍』の魔法は地面の土から槍を作り出すことができる。

 おれはその魔法は覚えていないけど、魔力の流れと働きは近くで何度も見てきた。

 土で槍を作り出すときに地面に直立させて固定する。あとは柱として必要なだけ強度を高めるだけだ。


「ちょっとやってみるか」

 ミサが見守る中、柱を生み出す魔法を作ってみる。

「むん」

 ベースとして『土槍』があるので、難なく発動した。

 名前としては『土柱』になるだろうが、強度や形状を決める前にその名前を使うと名前と魔法の関係が不安定になるので、それまでは名前は使わない。


「当たり前のように魔法を作るよね。その魔法「むん」っていうの?」

 ハルも様子を見にきた。そんな名前なわけないだろ。


「柱だよ。『土柱』って名前にするつもりだけど」

「ドチュウ。なんかわからないけど強そうだね」

「強くはないな。固くはしたいけど。で、どうした?」

 ハルが何か話したそうだったので水を向けてみる。


「アルたち忙しそうだからさ。偵察がてらにオーク狩ってきていいかな?」

 周辺はある程度見てきたから、もっと遠くまで偵察したいのか。ついでにオークも狩ってくると。


「いいよ。暗くなる前に帰ってきな」

 ハルには余計なお世話だったか、暗視能力のある魔道具を持っているからな。


「ちぇ、子供扱いしないでよ。わかってるって」

 ハルは散歩のように気軽な足取りで、オークを狩りにいった。


 出来上がった柱を確認する。

「これだと細いかな。柱というより槍が突き立っている感じだな」

 太さが3センチの直径で、グラグラと揺さぶったら根本がポッキリと折れてしましそうだ。


「柵だとしてももう少し欲しいですね」

 柵に使う杭としてなら直径5センチ、もしくは5センチ角の柱か。

「高さは今くらい?」

 1.5メートル。柵としては十分で、ゴブリン相手なら目隠しできるだけの高さだ。

 今回の用途には十分だか、それにしか使えないのは不満がある。

 どうせ柱を作るなら、家の増築にも使えるような汎用性が欲しい。


「5センチ角の長さ1メートルを基本にして、継ぎ足しできるようにするか」

 今回のような簡易的な柵なら、5センチ角の高さ2メートルの柱を立てて、横に渡す板を1.5メートルまで張り付ければいいし、家の増築なんかだと、5X10センチの太さを3メートルぐらい伸ばせば使えるようになるかな?


 先程のように地面に突き立った柱を生成。すぐに確定せずに待機状態にする。

 ゲーム的に言えば「決定しますか?」と問われて、はい、いいえ。の選択肢がある状態だ。

 その選択肢に、追加する、を付け加える。


 突き立った角柱に同じ形の角柱を寄り添わせる。

 待機状態の角柱は半透明で表示されて、新しい角柱を重ね合わせることもできる。


 先端に継ぎ足すつもりだったが、重ねられるのなら必要な分だけでいいかと思い直し、新しい方の角柱を1.5メートル程度に抑える。

 待機状態の角柱と50センチ程重なり合ったままだ。


 これで決定すれば、予定通りの柱が出来上がる。

 なのだが、この魔法の使い勝手を確認したくて、一度キャンセルする。

 すると、1つ前の待機状態になっていた柱が再度動かせるようになった。


 その1つ目の柱を決定して、追加の柱を今度は横に並べる。

 5X10センチの角材。柱として十分な太さ。インチで言えば2X4ツーバイフォーだ。

 地面に接している部分は1つ目同様に地面に埋まって強度を支えている。


 ちょっと離してみると、独立した2本の柱として建っている。

 板が挟める程度の隙間を開けて、2本の柱をたて、それぞれに50センチづつ長さを追加する。


「決定」

 半透明で待機状態だった土の柱が実体を持つ。

 素材は土だがしっかり固めているので、木と石の中間ぐらいの強度はある。

 先端を持ってグラグラ揺らそうとしても、地面に固定されていて動かないし、ポッキリ折れそうなもろさもない。


「2本ですか?」

 見守っていたミサが不思議そうに言う。

「ああ、固定の手間をはぶいたんだ」

 柱から柱に横に渡す板は、何らかの方法で柱に固定しないといけない。

 ロープや紐で括り付けるつもりだったが、柱の表面がツルツルしているのでずり落ちてきそうだった。

 木の柱なら釘を打ち付けて固定できるが、『土柱』は石のような材質なのでそれもできない。


「こう、横に渡す板を2本の柱で挟み込んで、紐で縛るか。

 下から積み上げて行って、必要な高さまで壁を作る感じかな。

 柵としては過剰だけど、家の壁を固定するならこのくらいちゃんと固定できたほうがいいだろ」

「家の壁ならそうですね。もう1本立てて、2重の壁にしてもいいですね」

「2重の壁? それこそ過剰じゃない?」

 極寒の地ならば断熱のためにあってもいいかもしれないけど、この辺りはそれほど寒くはない。


「あら、忘れました? エリが以前に冷凍庫というものを作っていたじゃないですか。

 あの部屋であればそのくらいの断熱効果は必要になるのではないですか」

「そうだったな」

 半年ほど留守にした時に、アクセムに残したエリが食料の保存をするために、独自の魔法を作っていた。

 シートの上に魔法陣を浮かび上がらせて、その上にあるものを冷凍して保存する魔法だ。

 『収納』のように持ち運びには向かないが、場所さえあればいくらでも保存できて、取り出すときに術者を必要としない使い勝手がいい魔法だった。


「アクセムの家は2重壁で増築するか。エリも『収納』を覚えたけど、移動しないのならエリの保存魔法の方が使いやすいだろうしな」

「増築もいいですけど、別の建物にしたほうが使いやすいかもしれませんよ」

「なるほど」

 増築すると冷凍庫と居住エリアの間に2重壁があっても扉から冷気が漏れ出してくる。

 夏場はいいが冬場に冷気がダダ漏れだと居住性も悪くなるだろう。


「そうだな。そうしよう」

 冷凍倉庫のことはアクセムに帰ってからエリとも相談しよう。

 今は柵だな。


 1メートル半程離れた場所でもう一組の柱を立てる。

「めんどくさいな」

 1.5メートルの柱を2本立てるだけで4工程かかる。

 しかも2組目の柱は1組めの柱とつなげる部分と3組めの柱につなげる部分で、4本の柱が必要になる。

 一箇所ごとに8工程だ。

 雑になると板を挟む隙間の幅も安定しない。


 追加するという仕様は変えないとして、基本的な単位はもう少し増やしてもいい。

 始点の柱のセットもそこで柵が途切れるわけではない。区画を1周回ったらそこが終点にもなるのだ。


 直線で繋ぐにしても、角になるとしても柱は4本必要だ。

 高さはどうだろう。

 柵としては1.5メートル。家の柱としては3メートルくらい欲しい。

 1メートルを基本単位にしようとしたが、1.5メートルを基本の長さにしたほうが無駄に重ねる部分もできなくて都合がいい。


 無駄にと言ったが、柱同士を重ねることは強度を高めることになるので、地面に接している部分が重なるのは無駄にはならない。

 2重の壁を作るときは4本セットの角同士を重ねて中心の柱の強度を高めることができる。

 

 柵や1枚の壁を作るときは4X4の柱。2重の壁を作るときは端の欠けた3X3。7本の柱を立てればいい。中央は強度の増した重ね合わせの柱だ。


↓上から見ると、こう。

□□

□◻️□

 □ □


 板の厚さはどうしよう。2.5センチくらいか、2枚重ねると柱と同じ厚みになるから統一感が出るな。


 ズモモモと4本セットの柱が生み出される。

「ミサ。この4本を基本のセットにするよ」

「はい。いいと思います」


 あとは横に張り巡らせる板を用意したら柵の完成だ。

 その板はまた別に用意しなければならない。

「続きは次回だね」

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