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レベルの蓄積

 翌朝、目覚めるとレベルアップしていた。

「昨日は何もしていないのにな? 魔法の習得とか、精神的な負荷が経験になっているのか? それとも経験値の持越しでおととい分の2レベルの上昇を2日に分けたとか?」

 寝た時にレベルアップするのは成長に伴う体の変化を寝てる間に行っているからだろう。変化の量が多すぎれば2日に分けられるのも理解できる。

 冒険者になって以来、毎日レベルアップしているから今のレベルは7か8、だが誰のレベルがいくつとかの話は聞かない。

「ステータスウインドウとかはないのかな。もしくは鑑定とか」

 あとで聞いてみよう。おれは食堂に向かった。


 食堂では4人とも揃っていて話をしていた。

「来たな。そろそろ呼びに行こうかって話してたんだよ」

 ジノが言う。

「おまたせ、おはよう」

 おはよう、とみんながあいさつを返す。おれは椅子に座り、さっき気になったことを聞いてみた。

「今日レベルアップしてたんだけど前日休んでいてもレベルアップすることってある?」

「そんなこと聞いたことありません・・・と昨日までなら言ってました」

 とミサが答える。


 ん? どういうこと?

「昨日まではということは、今日は?」

 ミサが困惑気に言う。

「わたくしもレベルアップしていました」

 え?他の人は?と見まわすとみんな首を振っていた。

「おれとミサだけか、昨日何かしたっけ?」

「覚えがありませんね。何かあってもおかしくはなかったですけど」

 なぜか照れるミサ。


 だとしたら、魔法の習得が原因じゃないな。

 精神的な負荷の可能性はまだ残っているけど、本命は経験値の持越しか。

「おれとミサはライノプスにダメージ通したから経験値が持越しされたのかも」

 ミサは不思議そうに。

「でも、昨日もレベルアップしましたし・・・持ち越しというのは2レベルアップしたということですか?」

「そう思う、ライノプスはおれたちの実力だと到底かなわない相手だから、そういうことも起こるんじゃないかな」

「そう言われるとわかります。レベルアップの感覚はあいまいなもので体調が良いだけの時と区別がつかないこともありますものね。

 ただわたくしの場合魔力の増加ではっきりとレベルアップが分かったので困惑していました」

 ミサも納得したようだ。


「みんなはレベルアップした回数って数えてる?」

 みんな顔を見合わせて、まずミサから話す。

「わたくしは13か14。魔力の増加を感じない時が一度あったので、あいまいですね」

「わたしは11から13。だと思う」

 続いてルカそしてジノが続く。


「アタシは9から15かな。ちょっとはっきりしないな」

 最後にハル。

「ボクは7か8・・・6かも」

 みんながおれを見る、最後なのはおれだった。

「おれは7かな」

 回数は7回で初期レベルが1ならレベル8か。


「みんな、というかギルドや冒険者たちは自分や人のレベルを意識したりしないのか? あまりそういう話を聞かないのだけど」

 おれの疑問に、ルカが答える。

「さっき言ったように、レベルアップしたかどうかがあいまいなこともあるんだけど、レベルアップしたからと言って能力の上昇幅は人それぞれだから、結局は戦ってみないとわからないの。

 それで、その強さの結果としてランクがあってそれぞれの強さはランクで判断するみたいな感じかな。

 同ランクでも結構幅があるんだけどね」

 あまり気にしてもしょうがないのか。


「わかった、とりあえずこの話は置いておいて、今日の予定を話そうか。ハルも初日だしスライムで肩慣らしでもいいかな? ほかにどこか行きたいところはある?」

「そうね、今日はそれでいいよ。明日からだけどランクが上がったから定番としてはオークなんだけど・・・」

 ルカの言葉にハルがビクッとする。騙されたからとはいえオークに苦手意識は残っているようだ。

 他の町を拠点にすればオーク以外のちょうどいい相手もいるだろうが、この街を拠点にしている限りオークを避けるなら、さらに強いモンスターが相手になる。

 あまり危険なことはしたくないし、拠点を変えることも予定に入れた方がいいかもしれないな。


「ところで、ランクを上げるならスライムのダンジョンの地下2階以降もあるんじゃないのか?どんな感じなの?」

 おれが聞くとミサが答える。

「強さ的にはちょうどいいでしょうね、でも前に相手したように、核の数が増えて強くなるのに報酬としての魔石は小さいままだから金額としても、ランクを上げるためのポイントとしても効率は悪いですね。だから地下2階以降は全然人気がありません」


 確かにうまくないな。不人気ダンジョンか。

「ねえ、ダンジョンって宝箱が出たりする?」

 ハルは冒険そのものにワクワクしている。

「未発見のダンジョンから見つかることはあるけど、探索済みのダンジョンだと滅多に見つからないわ、あったとしても他に潜っている人がいればすぐ取られるから・・・」

 ミサは乗り気ではないようだ。


「つまり、人が入っていない不人気ダンジョンは宝箱があるかもしれない?」

 おれがそう聞くとミサは首をかしげた。

「可能性が少し上がる程度ですよ、でも行ってみてもいいかもしれないですね」

 ミサもハルの苦手意識を気遣ってか、スライム案に賛成してくれる。

「みんなもいいかな?」

 みんな頷き、ハルはホッとしている。


「それで、スライムのダンジョンを一通り周ったらほかの町に拠点を移そうかなとも思っているんだけど、みんなはどう思う?」

「いいと思う。近場はほとんど初心者向けで適正な狩場はどんどん遠くなっていくからね」

 ルカも問題ないようだ、みんなもハルに甘いなぁ。


 馬車に乗り、湿原に到着する。

 ダンジョンの入り口までの道でハルの腕前を見せてもらう。

 ハルの戦い方は、まず遠間から短剣を投げ、ダメージを与えつつ体勢を崩し、間を置かずに襲い掛かる形だ。

 武器の性能がいいこともあって、スライム相手だと投げた短剣だけで終わってしまう。魔法より早く、近接戦より間合いの広いせいか、パーティー内で一番撃墜数の多いのがハルだった。


「投てき攻撃もいいわね。わたしも魔法の『土槍』とは別に槍を持とうかな」

「わたくしも弓を持っていればスライム相手なら魔力が節約できそうです」

 ルカが槍、ミサが弓か。全員ソロでスライムを狩りつくす未来が見えるな。

 ダンジョンの入り口に付き、一時休憩。


「肩慣らしとは言ったけど、この戦力で地下1階を周っても手ごたえないから、地下2階から始めて隅々まで回ろう」

 皆が頷き、ミサがマップを取り出す。

 地下1階はきれいな四角い形をしているが、地下2階、地下3階は外周も歪で内側にも空白の空間がいくつかある。


「もう探索済みってことだけど、こことか、ここって隠し部屋を探したりしたのかな?」

 おれはマップの内側の空白や外側のへこみ部分を指さして尋ねる。

「一通りは探したはずですよ。明らかに怪しいですものね」

「そうか。うまく隠されていて見つからなかっただけかもしれないけど、それなら見つけるのはおれたちにも難しいよな」

 ハルが何か言いたそうだったので聞いてみる。

「ボクはおじいちゃんから受け継いだ魔道具のメガネがあるから、もしかしたら見つかるかもしれないよ」

 そういってメガネを取り出してかけて見せる。

 ロリ、ツインテール、ボクっ子にメガネっ子まで乗せてきたか。属性が過積載だろ。

 そもそもツインテールにメガネは似合わない・・・いや・・・アリか。

 いやいや、そんな目で見てないから、気のせい、気のせい。


「そのメガネは罠とか隠し扉とかが見えるの?」

 ルカが訊ねる。

「ううん。明るく見えるだけ。だから明るいところではただのメガネだよ」

 ハルはそう言うが、十分強いよな。

 明かりもつけずに探索出来て相手に気付かれずに遭遇の回避も奇襲もやり放題じゃないか。

 暗殺者か、属性が増えたな。


 ダンジョンに潜り地下一階を素通りし地下二階の探索を始める。スライムは強くなったといっても2核程度なので、接近前にハルが1核潰して、たどり着くころには1核スライムになっていることがほとんどだった。到着前に2核とも潰されることもあり、どっちが引率だかわからない状態だ。

 それにしても索敵も早く命中率も高い。おじいちゃんのメガネが万能すぎる。


「ない、ないよ」

 申し訳なさそうに、ハルが言う。

 おれたちは、地下2階の隠し部屋がありそうな空間の周辺念入りに探索をしたがハルのメガネの力をもってしても隠し部屋の入り口は見つからなかった。

「もともとなかったんだよ。ハルは悪くないよ」

「ボクが悪いわけじゃないよ。思わせぶりな通路の形が悪い!」

 おれがなぐさめると反発される。でもさすがにおれが悪いとは言われないのでよかった。


 地下3階行きの階段の手前で遅い昼食をとる。戦闘が早いので探索もそれほど時間がかからないが、地下3階を探索するには時間が足りない。

「今日は地下3階のここの怪しいところだけ探索して町に帰ろうか?野営してこもるほどでもないだろうし」

 マップ上で一番近い怪しい場所を指さして方針を話す。

「賛成」

 ルカが賛成し、みんなも頷く。

 もともと今日は肩慣らしだったものな。ハルの腕を見るつもりが撃破数で負けているおれだが。

 地下3階の探索を始めると4核スライムを見つける。

 いきなりか、とも思ったがまずは走り出す。

 接近直前でハルの短剣が4核スライムに刺さるが、核までは届かず押し返された。

「甘いな!」

 つぶやいたおれは小剣を繰り出す。しかしおれの剣も核までは届かなかった。


「甘いぜ!『魔法剣火槌』」

 ジノのウォーハンマーが横薙ぎに核を2つ潰す。

 立ち直って切りかかると3つ目は雷撃に、4つ目はハルの2本目の短剣に潰されていた。


 今おれ、おとといおれに「邪魔だ!」って言ったあいつの気持ちがわかったよ。

 ・・・あいつの名前忘れたけど・・・

 4核だと魔法剣必要か。昨日のうちに覚えておけばよかった。

 奥に進むが4核だったのは初めの1匹だけで探索を進めても出てくるのは3核ばかりだった。

 目的の場所のすぐ前あたりでハルがみんなを止める。

「ここで待ってて、仕掛けらしいものがある」

 と言い、右手側の足元を調べ戻ってくる。


「罠じゃないけど、隠しスイッチみたいだからここから作動させてみる」

 ハルは石を拾ってスイッチに投げつけ作動させる。

 かすかに、ズズズ。と音がしてすぐに止んだ。

「音のしたところで何か起きているかもしれない。行ってみよ」

 ハルが言い、先行する。


 音のしたところはちょうど目的の場所で、そこにはマップに載っていない入り口が開かれていた。

「入り口と仕掛けが離れているのか、このあたりを調べても見つからないわけだな」

 ジノが感心して言う。


「宝箱、あるかな」

 ハルは嬉しそうに言う。

「敵にも気を付けてね」

 ミサが浮かれたハルに注意する。


 慎重に隠し部屋に入ったが、部屋の中には何も見つからなかった。

「なんで!?」

 ハルは不可解そうだが、最近誰かが見つけたとか、見つけたけどマップを更新しなかったとか、もともと何もない部屋だったとか、ありえるといえば色々あり得る。

「でもひどいよー、期待したのに」

 ハルはあきらめきれないようで、部屋を念入りに調べている、4隅、天井、壁のゆがみ。しばらく調べて気が済んだのか、帰ろうと言ってくる。


「うん、今日は終了でいいな。まだ何か所かあるし明日また来よう」

 馬車で町に帰り、ギルドで報告後、魔法剣のスクロールを買って宿に帰った。

「今日は探索メインで、実入り悪かったかな。みんなは今日みたいのはどうだった?」

 おれが聞くとルカが答える。

「討伐メインよりは安定収入は悪いだろうけど、最後の隠し部屋でもしかしたらいいものが見つかったかもしれないよね。

 わたしは今日みたいのもいいと思う」

「そうね、効率を求めるのも楽しいけど、一か八かの探索もドキドキしてよかったわ」

 ミサも問題ないようだ。


 ジノはうんうん頷いて不満はなさそう。

 ハルはといえば。

「今日は楽しかったー。途中までは、あれ、これボク一人でやれるんじゃない?とか思ったけど4核スライムとか全然歯が立たなかったし、隠し部屋ももし強い敵がいたら指をくわえてあきらめるしかなかった。

 それに、ボクが敵を倒せたのも借りている短剣のおかげだもんね」

 そう言ってニコニコしている。


「それじゃあ、明日で残りの探索を終わらせて、明後日から移動の予定で。

 明日ギルドに行くときに、明後日の護衛の依頼を受注しようと思う。

 これはまだ決定じゃないから依頼内容を見てから決めよう。それでいいかな?」

 みんなが頷く、ハルも疲れている様子は見えないが、明日大変なようなら、明後日休みにしてもいいな。

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[一言] 面白そうだったんですが、ハルがウザすぎてリタイアです。悔しい!
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