バカですが、なにか
私はずっと前からエンターテインメント業界に憧れていて、現在漫画家 兼 妻を務める、二十代の女性の一人だ。
大学を卒業後、社会に出て、ある会社で働いていたが、辞職届を書く日まで長くない時間だった。
日本社会において、これは自殺行為かもしれなかった。
あきらめっぽいとか根性なしとか、求人達にタグを掛けられて、キャリアを伸ばすチャンスや羽ばたく勇気など失い、だんだん孤立された。
今大人の一人としては、私が陥った状況は恥じるべきかもしれなかった。
社会に貢献できず、養育する苦労を無駄にして、両親の期待に反して失望させた。
私の周りに胸を張れることが何もなかった。
愛する人もいなかった。
自分の長所を一つ強いて言えば、アニメと漫画について詳しいことだ。
毎日架空の人物のかわいい子たちが架空の世界で振る舞うシーンのを堪能している。
時々現実の世界で行われたら、人にドン引きされたり、苦笑しかできなかったりするシーンが多く、べたすぎるかもしれない。
しかし、私にとっては、べたでもいいんだ。
ある日、私は人生中、最大の選択を決めた。
「漫画がそんなに好きだったら、鑑賞側ではなく、創作側になろう」って。
多分収入が不安定で少なくて、贅沢な生活を送れないかもしれないが、少なくとも自分が笑みを浮かべながら、金を稼げられるなら十分。
始めたばかりの時期はなかなか大変だった。
絵が下手で、ネット上に投稿した作品を構ってくれる人の数は両手で数えられる程度。
もちろん、まだアマチュアで金を稼いでいたわけでもなかった。
両親からサポートや助言もくださったが、困るたびにお頼りにすることができるはずがない。
本当にいい道を歩んでいるなのか、私は自分自身を疑い始めた。
でも、応援してくれる人の中である、竜輝という男性がいてくれた。
いつも私の漫画を高評価しながら、役立つ感想を書いていた。
漫画について物知りで励ますのが上手。書籍に関する仕事を目指したいって。
話するのも面白くて、ノリがいい人だった。
まあ、時々バカなことやおかしいことなど言い出したりして、「変わった人だな」と思ったことを認める。
別に構わないから。
竜輝がいなかったら、私はここまで頑張らなかっただろう。
灰色のありきたりの毎日にピンク色を塗ってくれたあの人へ、私の心で小さな芽が生えた。
彼も同じだったと思う。
ある日、竜輝はネット上でいなくなった。
一言も残さず。
運命は私たちが会わせなかったんだろう。
そうだとしても、私は漫画家に目指さなければならない。
もう一度大切な人をがっかりさせてはいけないから。
そして、私はとうとうプロの漫画家になることができた。
出版社が開催する新人賞において、大賞の欄に自分のペンネームを見たその瞬間をもっとよくする出来事が存在しないと思った。
存在した、実は。
私が初めての編集者と初対面するとき、長い時間お世話になっていたあの人の名前で自己紹介された。
微笑みながら「初めまして、僕は小林竜輝と申します。今度もご担当させていただきます」って。
竜輝。。。
今度も。。。
担当。。。
私のみっともない顔に、涙が流れ始めた。
彼にやっと会えた。
もう我慢できなかった私は勢いよく彼を衝突して、ぎゅっと抱きしめた。彼がまたいなくならないように。
「竜輝のバカ」と私はささやいた。
「バカですが、なにか」
彼は私の頭を手にして、そう言い返した。