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天乃命5



 その日の放課後。俺は小山さんに会う為に図書室にやって来たのだが。


「あれ? 居ない?」


 最近、小山さんは図書委員の担当ではない時、図書室の入り口近くにある席に座って、俺が来るまで本を読んでいるはずなんだけれど。

俺は不思議に思い、図書室をぐるりと見て回り、居ないことを確認。

今日の担当図書委員に小山さんのことを聞くと、見ていないと言われた。


「小山さんのクラスへ行ってみるか」


 まだ来ていないだけかもしれないし、そう思って小山さんのクラスへ向かうが。


「小山さん今日は休みだよ」

「え、そうなの?」

「うん、なんか風邪引いたって、先生が言っていたよ」


 教室に残っていた女子生徒達に、小山さんを知らないかと聞いて見ると休んでいると教えてもらった。

 昨日の様子を思い返してみて、風邪を引く様な感じではなかった。

ちょっと違和感を覚えたけど、特にこの時は気にしなかった。


風邪を引いたのなら、具合はどうだろうと思った俺はスマホを取り出して、小山さんに連絡をとろうとして俺は気づいた。


俺、小山さんと連絡先の交換をしていないことに。


「そ、そう言えば、俺、空城や夏影さん、葉山さんとも連絡先交換していない」


 ……しばらく、俺は実家しか連絡先が載っていないスマホを眺めて、凹んだ。

 そして、一人で家に帰る途中、ふいにボッチという言葉が頭に浮かび、更に凹んだ。

明日は皆に連絡先を聞こう。




 翌日、昇降口で偶然小山さんを発見、少し早歩きで近づいて後ろから声をかける。


「小山さんおはよう」

「……おはよう」


 振り返って、挨拶を返してきた小山さんはどこか元気がなかった。

 昨日休んだのは体調不良かな? あ、もしかして月のものか?

 だとしたら、あまり深くは聞かない方が良いな。


「うん、今日は朝早くに会えて良かった」

「……え?」

「連絡先、教えてもらってなかったから、教えて。それと、昨日休んだみたいだけど、身体は大丈夫?」


 俺がそう問いかけると、小山さんは徐々に瞳に涙を貯めて、泣きだした。

 周りが何事だとこちらを注目する。

 突然のことに、俺は軽くパニックになるが、とにかく周りの目が気になったので、小山さんを保健室へ連れて行った。



「大丈夫?」

「……大丈夫です」


 保健室の先生は気をきかせてくれたのか、直ぐに保険室を出て、職員室へと向かった。

 俺と小山さんは丸椅子に座り、向かい合って話をしている。


「何かあったの?」

「……家族と少し」

「そう……」


 なら、深くは聞かない方が良いだろう。

 俺も家族のことを聞かれても、正直答えたくない。

 特に仕事から帰って着た直後の母とかの話しは絶対にしたくない。

 せめて、身綺麗にしてから家に帰ってくれないかな? 殴るよ。


「授業は受けられる?」

「……はい」


 俯き、元気がない小山さんを見て、俺は決める。

 小山さんの弱弱しい部分を見て、男の部分が刺激された。

今世では、初めてかも知れない。守ってあげたい。仲良くしたい。彼女を元気付けたい、と。

だから、俺は提案した。


「辛そうだし、今日も学校サボっちゃおっか?」

「え?」

「私と遊びに行かない?」

「え、ええっ!?」


俺の発言に驚く小山さん。

俺はちょっとあざとく問いかける。


「駄目?」

「そ、それは」

「嫌かな? そんな顔の小山さんを放っておきたくない。そう思った」

「あ、天乃さん」


俺の言葉にしばらく深く俯き、考え込む小山さん。

数秒考え顔を上げて、笑みを浮かべながら俺に言った。


「さ、サボっちゃおうかな」

「うん、行こう。じゃあ、まずは私の家に行こう」

「天乃さんのお家、ご、ご家族とか」

「一人暮らしだから、大丈夫。あ、服はちゃんと貸して上げるからね。その上で遠出して服とか買いましょう。大丈夫! 稼いでいるから、お金の心配はしないで!」

「え、服って、そこまでしてもらうわけには」


 あわあわする小山さんに俺はこう告げた。


「ウチの実家のこと知ってる?」

「え、えっと、はい……」


少し気まずいのか、俺から目を逸らす小山さん。

最初から知っていたのか、分からないけど、

どちらにしても、普通に接してくれるのは、やっぱり嬉しい。


「そっか、でも嬉しい。変な目で見てこないの。だから、お礼と言うわけではないけど、私は友達を元気にしてあげたい」

「友達」


 小山さんが俺を見る。俺はそっと小山さんの両肩に手を乗せ。


「うん、友達。私が初めて、友達になりたいって、思った女の子」

「小山さん、私」

「うん」

「そんな風に言われたの、初めて」


泣き笑いを浮かべる小山さんを、俺は抱き締めた。

空城達も友達、だと思う。自然に仲良くなった。

小山さんとの場合は、ちょっと強引でも仲良くなりたい。


だから、積極的に行動する。

小山さんと仲良くなるために。


「あまり、勉強は得意ではないけど、明日から一緒に勉強しよう」

「う、うん」


俺と小山さんはお互い頬を紅くし、気恥ずかしさを感じながらも、俺は小山さんは学校を早退した。



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