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空城隕石 六月下旬 日曜日 4

本日二回目



複数のカブトムシ人間が現れたあと、ミルキーが「数が多いから使っちゃうよ!」と突然白く輝きだした。


「パワーアップ!」とミルキーが叫び、「ミルキー! ビーム!」と技名を叫びながら、カブトムシ人間を次々に攻撃。

かなりの大ダメージを与えて、不利だった戦局をひっくり返した。

とはいえ、直ぐにパワーアップの時間も終わり、俺たちは持久戦になりかけた。

だが、そこに退魔師協会の部隊が増援に駆けつけてくれて、あっというまに、カブトムシ人間は蹴散らされた。

ホッとしていると、ミルキーは「お兄ちゃん。もう大丈夫そうだから、ミルキーは行くね」と言って、足元に白い円上の物を作って、中に沈みこんで消えた。

しっかりとお礼を言いたかったと思っていると、退魔師部隊の指揮官が俺のところへ来て、詳しい話を聞かせてほしいと言われた。

正直、かなり時間が惜しかったが、ここでごねても時間の無駄だ。

だから、ざっとではあるが、事情を説明すると、「分かった。事情があって、人をつけてやれないが、移動する足を用意しよう」と言ってくれた。


俺たちは、天乃さんに伝言を頼むと、用意された車に乗り、九森の山へと向かった。


その道中、秋島先輩が俺に教えてくれた。


「私たち二人で向かう理由は恐らく、事前に根回しがあったからでしょうね」

「根回し?」

「今年度に入って二人も妖魔協力者が出てしまっている。だから、色々と大人達の話し合いがあったようね」

「でも、それは」

「実際に、公にならないように握りつぶされることは多いんだけど」

「けど?」

「天乃さんが関わっているから、握りつぶさないのかもしれないわね」

「え、それはどういう」

「可能性の話よ」


部長はそういうと、口を閉ざした。

自分で考えろということなのだろうか?


うん、分からない。

・・・・・・ところで、いまきづいたんだが。

部長、日曜日なのに私服ではなく制服なんだが。

普段ワイシャツの上にベストを着ている部長だが、今日は着ていない。

もしかして、慌てて着替えたのだろうか?


まあ、それは良い。

問題は、今部長は先頭で結構汗をかいている。

そうなるとブレザーの隙間から見えるシャツはうっすらと透けて見える。


ピンク色の意外と可愛らしいブラがな!!


「先輩」

「な、何?」


俺の視線に気づいた部長が、腕で胸を隠す。


「もっと、近くで透けブラ見てもいいですか?」


俺の真剣な懇願の回答は、部長の右ストレートだった。




「ここですか?」

「そのようね。あ、運転手さんは下がって、協会に報告を」

「分かりました。御武運を」


九森の山。

大昔、この山は地脈的に豊かな山だったらしい。

けれど、そこに強力な妖魔が住み着き、この辺りの自然は全滅。

人々は、この土地を土地を妖魔と戦い、勝利するが土地は荒れ果てている。

その土地をもとに戻すためにこの山の頂上で、九人の生け贄を捧げて、自然を取り戻したらしい。


詳しい文献がほとんど残っていないが、大雑把な話はそんなかんじのようだ。


「九森の山には、この山を守るために神社がたてられているわ。けれど、この状態だと恐らく」

「全滅ですか?」

「恐らくね」


過去の一件から、ここの守りには手練れが配置されていたはずだ。

けど、さきほどのカブトムシ人間の質と数を考えると。


「部長、行きましょう」

「・・・・・・そうね。行きましょう」


本当なら、天乃さんを待った方が良いだろう。

けど、今は人質の救出速度を優先する。


「いざとなれば、貴方の切り札。【融合炉】を使うから」

「えっ、あ、はい。いいんですか?」

「じ、人工呼吸のようなものよ」


俺がそういうと、部長は少し恥ずかしそうにそう言いきった。

過去に一度テストしたときは、索敵能力と移動足が速くなったので、今回のような時にはぴったりだろう。


「既に気づかれている可能性が高いけど、慎重にいくわよ」

「はい、分かっています」


部長が前に出て、俺は後方を警戒しながら、先輩の後を追った。




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