天乃命 六月下旬日曜日2
空城が冨下を目撃したショッピングモールは既に警察と退魔師協会によって封鎖されていた。
既に内密に処理することはできない状態になってしまっている。
正直、坂折さんを救出したあとの俺の処分が怖いが、今は情報を集めて坂折さんを探さないと。
俺はそう考え、俺は近くにいた退魔師協会の三十代くらいの女性に話しかける。
「すみません、少し話いいですか?」
「え?」
女性に持ってきた退魔師の証明書(自動車の免許証サイズのカード)を見せると女性は顔を強張らせた。
恐らく、天乃の名前と暫定とはいえSランクの退魔師と表示されていたからだろう。
「ここで何が起こったのか、教えてください。それとこの二人の少年少女の行方をおっています。もし何か情報があるのであれば、教えていただきたい」
それと、俺は理事長に頼んで、坂折さんと富下の顔写真の画像データをスマホに送ってもらった。
「しょ、少々お待ちください。上に確認を」
その画像データを確認した女性が上に確認をとろうとすると、女性の後ろから五十代くらいの陰陽師の衣装を着た男性が近づいてきた。
確か、この人は。
「天乃の娘か」
「はい、貴方は酒口殿でしょうか?」
この地域で、妖魔討伐部隊の総指揮官をしている人だ。
確か、上から数えた方が強く、更に偉い人のはずだ。
しまったな。もっと資料をちゃんと読んでおくんだった。
関わることがないと思って、流し読みしたのは失敗だった。
「ああ、そうだ。話はこちらでする」
「はい、分かりました」
移動先は自衛軍で使われている指揮車両を改造した車両だった。
この車両は、驚異度がBランク以上を含む、十匹を越える妖魔が現れた時に使われる車両で、物理的防御力はもちろん、オカルト的な攻撃にも耐えられるように処理が施されている。
ぶっちゃけ、高級車だ。
これがあるということは、やはり大事になっているな。
俺が車両の中に入ると、酒口さんはここで何が起こったのか教えてくれる。
「君がここへ到着する約三十分前、突然このショッピングモール周辺に、退魔師協会の妖魔センサーに複数のしかも推定驚異度Bランクの妖魔が複数現れた。更に、少し遅れてだが桜宮殿からこのショッピングモールへ精鋭を派遣してくれと連絡が来てな。何事かと思ったよ」
俺が空城に連絡をもらう少し前か、恐らく理事長の手の者が見つけたんだな。
俺が空城連絡をもらって、増援要請をしたときに理事長が「大丈夫」と言っていた理由か。
「妖魔はどうなりましたか?」
「全滅させた。通りすがりの魔法少女と空城という少年、秋島の娘がダメージを与えていたお陰で楽に倒せた」
「空城と秋島先輩は? それと、魔法少女ですが」
「魔法少女は我々の部隊が現れると現場を去った。空城という少年と秋島の娘は、九森の山へ向かったよ。伝言で君が来たら、「坂折さんは富下と共に九森の山にいる」だそうだ」
我々も直ぐに向かいたいが、こちらの処理が優先だ。と苦い顔をした。
しかし、よく居場所が分かったな。秋島先輩のダウジングか? だとしたら、余程調子が良かったみたいだな。
「ありがとうございます。私も直ぐに九森の山へ向かいます」
「分かった。 気を付けて行ってくるように」
「はい」
別部隊の準備ができしだい、そちらへ送ると酒口さんは言った。
俺が指揮車両から降りてここまで俺を運んでくれた車へ駆け足で車へ乗り込む。
とにかく、急がないと。
Bランク相当の妖魔が複数でたとなると、厄介だ。
無事でいてくれよ。坂折さん、それと空城と秋島先輩。
俺は運転手に九森の山へ向かうよう伝えた。




