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天乃命 六月下旬3


部室の空気がピリピリしはじめたので、直ぐに空城にスマホのSNSで連絡を入れる。


坂折紫音さんが来たから、早く来いと。

俺が空城に連絡をいれている間に葉山さんと夏影さんは、坂折さんに空城と知り合った経緯を聞いている。


「そう、親御さんが」

「危うく、連れていかれるところだった......」


坂折さんは母を幼い頃に亡くし、三年前に施設に入った。

父親とは縁は切れているのだが、昨日の朝学校へ向かう途中で父親に強引に車に乗せられつれていかれそうになり、助けたのが空城だった。


坂折さんも気を使い身体能力を強化すれば、大の大人一人くらいどうとでもなるが。

気を使って一般人を傷つけることは、退魔師は御法度だ。

ま、強引に連れていこうとしたらしいので、誘拐未遂として、坂折さんの父親の方が捕まる可能性が高いが。


ただ、その後。空城と坂折さんは追い回されたらしい。

さらに空城は昨日、家にスマホを忘れ、俺たちへ相談することができず、父親の仲間? みたいな奴等も現れて、最後は退魔師協会に行って学校に連絡をいれた。


「野暮用って、これのことだったのでねメテオのヤツ」


昨日の夜に連絡がとれたときは、確かに野暮用と言っていたが、結構面倒な事件じゃないかな?


「......メテオが、この一件が終わるまで護衛するって。だから、わたしも恩返しに訓練を手伝う」


そういう事情なら、しょうがないかな。

退魔師が金を稼ぐと知って(そんなには稼げない)、捨てた子供とよりを戻そうとする親は一定数いる。


かなりの人数で追い回したことを考えると、坂折さんの父親は借金でも背負っているかもしれない。


ま、その辺は理事長達に任せるかな。


「ういーっす、紫音はもう来てるんだって?」


そう思っていると、空城が登場。

ただ、坂折さんを呼び捨てにしたことで、部室の空気がピリピリし始めた。


「メテオ、紫音のこと呼び捨てなんだ」

「え? ああ、昨日紫音に名前で呼んでくれって」

「メテオ君、友達作るの得意だもんね」

「ああ、まあな」


空城は少し戸惑っているが、葉山さんと夏影さんの変化に気づいていない。

夏影さんは機嫌が悪くなっている。

葉山さんは表面上はにこにこしているが、目が笑っていない。

俺が怖ぇっ、と思っていると坂折さんが空城へおもむろに近づいて、いきなり抱きついた。

空城は身長が高めなので、身長の低い坂折さんが空城とし正面から抱きつくと顔面が空城のかなり際どい部分にぶつかる。


「おおっと、どうした紫音?」

「......なんでもない」


坂折さんの頭を撫でる空城の表情は、妹を可愛がるような表情だ。

対照的に坂折さんの表情はほんのり頬が紅いが、無表情だが絶対空城に好意を持っているだろう。


「そろそろ、部活始めるか」


俺は葉山さんと夏影さんの方を見ないようにしながら、スマホで来るのが遅れている留留に連絡を入れる。


まずは、修羅場に巻き込まれないようにするために、この四人を外に追い出して、俺は留留と二人で部室で座学をすることに決めた。



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