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天乃命2


 五月になった、四月に高校に入学して俺は独り暮らしを始めた。

 かなり高級なマンションに住んでいる理由は単純に、両親と祖母からの指示だ。

 やはり、女の子を一人暮らしさせる為には、セキュリティがしっかりしている場所でないと納得できなかったらしい。


 天乃家の退魔師として活動しろと言っておきながら、防犯には気を使う。

祖母は引退したけど、母はまだ現役なのに……そう言うところは気をつかうんだな。とは思わなくはなかったが、それは言わないでおいた。

 うーん、やはり人間の方が怖いということなのかな? それとも普通に親心なのか。

 分からないな。



 ともあれ、新しい学校。

 私立桜宮高等学校に入学した。この学校は普通科と退魔科などの幾つかの学科があり、母から「一般的な退魔のやり方も学んで来なさい」と言われた。


 流石に普通の高校への入学は猛反対された。天乃家の娘だから、身を守るという意味でも退魔学科のある学校、ここへ入学させられた。

 まあ、そこまで行きたい学校が無かったので問題はない。

しかし、部屋の一角を占領している天乃家の戦装束を見て溜め息をついた。




「貴女が命さんですか、初めまして理事長の桜宮薫子です」

「はい、初めまして、天乃命です」



 入学式が始まる少し前に、俺はこの学校の理事長と顔を合わせていた。

 母と同い年、母の戦友でもある彼女はかなり美人の人妻だ。

子供が三人いるとは思えない美しさだ。


穏やかな雰囲気だが、退魔師であるので機嫌を損ね、怒らせたら命に関わる。

特にねん、いや、止めよう。この世界の察知能力は凄まじい物があるし。


「貴女の様な暫定Sランク退魔師が入学してくれたことを嬉しく思いますよ」

「あ、ありがとうございます」


 退魔師ランクは国が定めている、階級で。十五歳から習得できる。

 何かしらの理由により、十五歳未満で退魔師として活動している子供達は暫定ランクを与えられている。


 倒した妖魔(淫妖魔、悪魔、それに与した人間も含める)と、危険度Sランク三体。Aランク四十三体。Bランク七十一体。Cランク以下は数えていない。

 妖魔は危険度によってS、A、B、C、D、Eに分けられている。

因みにSAは上級、BCは中級、DEは下級とも言われる。


「ですが、他の退魔師の卵達には刺激が強いので、対淫妖魔戦以外では、天乃家の戦装束で戦うのは控えて下さいね」

「着ません! 着ませんから! あんな恥ずかしい格好人前ではしませんから!!」


戦装束のことを言われて、反射的に俺が叫ぶと理事長は「天乃家の娘らしくありませんね」とコロコロ笑った。


俺は何となく、当時の母はどうでしたか? と問いかけると真顔で黙りこんだので、別の話題を振った。


母の戦装束は父曰く「常にグレードアップしている」らしいので、俺は過去に何が起こったのか怖くて聞けなかった。

親のセクシャルな部分はあまり見たくないよね。




なんて、不意に入学式の理事長とのことを思い出した。

もしかしたら、理事長の言う通り、あの天乃家の戦装束で戦うことを想像して、俺は憂鬱になる。


「起きよう」


身支度を整えて俺は学校へ出発。家から学校までは二十分ほどの場所なので、退魔師として鍛えられているので、全く問題ない。


「おはよう。天乃さん」

「おはよう」


 一年B組、同じクラスメイト数人とすれ違い、挨拶する。

 退魔学科の子達には、俺が天乃家の娘だというのがばれている。

 なので、あまりクラスに馴染めてはいない。

 もちろん、身内が俺の家に助けられている子もいるので、そこまで悪いわけではないが。

 セクシャルな物の専門家の娘となるとやはり、どこかで距離を取ってしまう。


 ちなみに普通科の男子達は、あまりにも下品なことを言うので一度顔を掴んで持ち上げて警告した。

 それ以来、一部を除いて男子生徒達は俺に近づかなくなった。

 うん、やり過ぎたとは思わない。これくらいしないと調子に乗る輩が出てくるかもしれないし。


「おっはようございます! 天乃さん!」

「おはよう……」


 いつものように、教室の窓際の一番後ろの席に座ると、退魔学科でスカウトされてこの学校に入学した男子生徒。

 空城隕石くじょう めておだ。

 身長も男子としては高い方で、全体的に鍛えられており、アニメや漫画の主人公の様な雰囲気のような元気な短髪の男子だ。

 自己紹介の時から、元気で明るく。周りに好かれるタイプの男ではあるが。

 基本、スケベ小僧である。女子生徒からの評価は低めだ。


「今日も、素敵なおみ足ですね!」

「死ね」

「ぐべっ」


 拳から気弾を飛ばして、空城の顔面に叩き込む。

 痛い目を見るのが分かっているのに、毎朝セクハラ発言をしてくる。

 まあ、コイツは俺をエロい目で見ているが、身の危険を感じないのでこれで許しているところはある。

たぶん、直前でヘタレるタイプだ。


「相変わらず馬鹿ね。メテオは」

「だ、大丈夫、空城君」


 俺の席に集まって来たのは、ツインテールのちょっと背の低めの美少女の夏影七海、空城の幼い頃からの幼馴染のセミロングで巨乳美少女の葉山彩だ。


「あ、ああ。大丈夫だぜ、彩。いやー、相変わらず良い一撃だ」

「変態」

「おおっと、その容赦のない言葉も素敵です。天乃さん!」

「この男本当に馬鹿ね。おはよう。天乃さん」

「おはようございます。天乃さん」

「二人とも、おはよう。で、何か用かしら? 変態」


 入学して一月ほど。この三人と話すようになって、二週間も経っていないが。このやり取りが日常化しつつある。


「退魔部に入部して下さい!」

「お断りするわ」

「駄目か―!」

「いい加減に諦めなさい。家との兼ね合いもあるんだから」


 俺の味方になってくれたのは、夏影さんだ。

 彼女の実家も俺と同じように退魔の一族で、主に海にまつわる妖魔を退治することが多い。

 俺と夏影さんの家は、過去に水中系淫妖魔を共同で倒したり新しい術を開発したりと、結構良好な関係を維持している。

 天乃家の一族だと分かると、嫌悪感をあらわにする女子生徒もいるが、夏影さんはそう言うのは一切なかった。


「でもさー、天乃さんが入ってくれれば、更に部室が華やかになるじゃないか! あ、後訓練も質が向上するぜ!」

「馬鹿なことを言ってんじゃないの!」

「あ、あははは」


 夏影さんが、空城のボディを殴り、葉山さんは苦笑いを浮かべている。

 空城と葉山さんが、夏影さんに出会ったのは中学時代らしい。


 出会いは、葉山さんが妖魔に襲われて、空城が一人で戦っているところを夏影が助けたのがきっかけらしい。

 改めて考えると凄いな。余程光りモノがあるんだろう。


「でも、改めて考えると殆ど自己流で、この学校にスカウトされるって普通はないわね」

「ん? ああ、それは、ほらあれだよ。――俺の身体には特殊な力が備わって!」

「中二乙」

「ぎゃあああああああやめろおおおぉぉぉぉっっっ!!! 止めろ七海、中二とか言うな!!」


 俺の問いに空城が答えた直後に夏影さんが、心のナイフを容赦なく空城に突き刺した。

 何か昔を思い出したのか、苦しみ出す空城。


「いや、だって、初めて会った時。アンタの服は黒一色だったじゃない。二刀流で木刀振り回して、必殺! とか叫んで」

「ひぎいいいいぃぃぃぃぃぃぃっっっ」


 悶え苦しむ空城からそっと視線を逸らす。武士の情けだ。見ないでやろう。

 俺も前世で覚えがあるので、深くは突っ込まない。


 それから、直ぐに担任の教師。おっとり爆乳眼鏡若い可愛い系女教師(退魔師)。

 田川美奈子先生が来たので、全員席に戻った。


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