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空城隕石5

 スマホの着信を知らせる振動音で、俺は目が覚めた。

 普段なら、鳴らない様な時間で激しく鳴り響いて、俺は安眠を妨害されて少し不機嫌で電話に出た。


「もしも「起きなさい! 小山さんの居場所が分かったわ!!」」

「なにぃっ!?」


 七海の声に、眠気が消し飛んだ。

 七海の説明を受けて俺は背中に嫌な汗をかく。

 小山さんに貸した服を頼りに気の残滓を辿り、居場所を特定するための道具が天乃さんの元に届いたらしい。

 その結果、小山さんの居場所が分かり、天乃さんは俺達にメールを入れてそのまま、小山さんが通っていた中学校の旧校舎へ先に向かってしまった。

 俺よりも、気配や音に敏感な七海は直ぐにスマホの着信に気づき、俺に連絡を入れたが反反応がなく、俺を起こすのに二三分かかったらしい。


「すまん、直ぐに出る」

「私は既に向っているわ。迷子になるんじゃないわよ!!」

「分かっている!」


 俺は即座に着替えて、スマホから地図アプリを呼びだし部屋を出る。


「何かあったの~?」

「緊急の退魔師の仕事、行ってくる。鍵頼む!」

「分かった~」


 眠い目をこすりながら、母さんが寝室から顔を出していたので、戸締りを頼んで俺はマイ自転車に乗って、旧校舎へと向かった。


「早まるなよ、天乃さん!!」


俺は相棒の流星号ママチャリで、天乃さんを助けるために夜の街を爆走した。




「遅い!」

「やっと来たか」

「ごめん! って、秋島先輩?!」


 俺が指定された小山さんの通っていた中学校の正門前に辿り着くと、そこで待っていたのは退魔部の部長、秋島先輩だった。

 な、何でここに?


「何でって、退魔師なんだから、妖魔を退治する為にここにいるんだけれど?」

「私がここに着いた時には既にいたのよ」

「安心しなさい。私の目的は妖魔を倒すこと。協力している人間の捕縛ではないわ」

「……分かりました」


 部長の言葉に、俺は頷く。

プラスに考えよう。戦力は多い方が良いに決まっている。


「でも、ここまで近づかないと認識を逸らす力を感じとれないなんて、驚きだわ」

「先輩が言うほど何ですか?」


 聞いた話だと、部長は秋島家は探索が得意な家系で、一族の中でもかなり上位の力を持っているらしい。

 その部長が驚くということは、それだけ強力な力を持った妖魔が存在しているということだ。


「ところで、夏影さんは大丈夫なの? 雨が降っていないけど」

「大丈夫ですよ。夏影家は水中戦が得意ではありますが、水が無いと駄目という訳ではありません。丘での戦い方もありますから」

「分かったわ。じゃあ、行きましょう」


 部長を先頭に俺達は正門から、学校の敷地内に入った瞬間。

 目の前の景色がグニャリと絵具をぶちまけたかのように歪んだ。


「は?」

「嘘でしょう!?」

「あっちゃー」


 周りの景色は、一変していた。

 空は絵の具をぶちまけた様な色に変わり常に色が変化している。


「こ、これって、もしかして」

「やられたわね」

「高位の空間を操る妖魔の作った世界……」


 俺、部長、七海は直ぐに戦闘態勢に入る。

 俺は専用の革手袋、七海は二本のコンバットナイフ。部長はワイヤーを手にしてる。


「最悪、どうみても、脅威度がCランク以上の戦闘系の妖魔ね」

「初めて見るタイプです。白いのはともかく、なんというか」

「SF映画とかに出てくる宇宙人みたいだな、気色悪いな」


 地面から這い出てきた人の形をした全身がのっぺりとした妖魔。

 数は十体。空洞な目と綺麗な白く揃った歯が不気味、いや嫌悪感が湧き出てくる。


「来るよ!」


 部長の叫びと共に、現れた妖魔が襲いかかってくる。


「いくぞ!」


 俺は叫ぶ、心の底から。怖かったら叫べ。勝ちたかったら叫べ。好きだったら叫べ。とにかく大事な時は叫べ。

短い間だったけど、俺の師匠だった漢の言葉だ。


「俺式気合パンチ!」

「ギイィィィィィィッッッ!!!!」


 最初に突っ込んできた妖魔の顔面に渾身の右ストレートを叩き込む。

 俺の気の質は薄い。

 幼い頃、妖魔に魅入られて助けられた結果、色々あって気の量が大幅に増大した。

 けど、気の質は良くなかった。

 分かり易く言えば、俺の気は水で薄め過ぎたカルピスの様な物だ。


「おおおおおおおおおおおおおぉぉぉっっ!!!」


 とにかく、手数を出さなければならない。

 純粋な筋力だけでは妖魔を倒せない。いや、倒せるオカシイ人とかいるけど、それは例外中の例外だ。


「メテオ!」

「分かってる!」


 俺の普段の役割は、足止めと削り。

 敵のバランスを崩す、敵を疲弊させる。

 俺は一人で戦っているわけではない。


「削り取る!」


 俺が殴り続けていた妖魔側面から七海がコンバットナイフに気を纏わせて首を刎ねとばす。

 七海のコンバットナイフは、鮫型妖魔の牙から作られた物だ。

 切れ味は凄まじい。


「防御はそこまで高くないようです!」

「分かったわ。手早く始末して、先へ行くわよ」

「「はい!」」


 ワイヤーで、半数以上の妖魔を拘束し、一体一体確実に息の根を止める部長。

 相変わらず、いつの間にワイヤーを操り妖魔を拘束したのか分からなかった。


「待ってろよ、天乃さん!」


 俺は部長に拘束されなかった、妖魔の側頭部にハイキックを叩き込んだ。

 パァンッと乾いた音と共に妖魔が横に吹き飛ぶ。

 けれど、ダメージは少ない。


「ナイスよ、メテオ!」


 妖魔が吹き飛んだタイミングに合わせて、七海がすれ違いざまに妖魔の首をコンバットナイフで妖魔の首を刎ねる。

 相変わらず、器用だな。


「はい、二人とも。お代わりが来たよ!」

「げっ、マジか」

「うわー」


部長の言葉が響くと同時に、新しく妖魔が地面から出現した。


「もう少し、戦い易い場所に移動したいけれど」

「部長、あそこに見える校舎内に入るのは危険ですよね」

「そうね。ここは妖魔が作った空間だし」


七海と部長の言葉に俺も同意だ。

どこから妖魔が出てくるか、分かったもんじゃない。


「いつまでも、ここにいるのは不味い。脱出するために、この空間を作っている妖魔を探しだすから、二人とも時間を稼いで!」

「うっす!」

「はい!」


 俺と七海は部長を守る様に妖魔達と激闘を繰り広げることになった。



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