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天乃命 1



 気が付けば転生していて、三歳くらいかな? くらいの時から夢を見ている感覚から、しっかりと自分が転生したんだと分かって、俺は周りの環境が分かって直ぐに嫌な予感はしていた。


 男から性別が女になっただけでもショックだったのに、生まれた家が古くから妖魔や悪魔を退治していると聞いて、もしや……と思った。


 結果は、想像以上に酷い家に生まれてしまった。

 この家のことが分かるにつれ、俺は何度も叫びたかった。神様貴方様は私がそんなに嫌いですかと。



 そして、この世界に生まれて十四年が経った。

 俺はそろそろ高校受験を、どの高校へ進学をするか悩んでいたある日の夜。

 ふいに目が覚めた俺は、どうも喉が渇いたので。水を飲もうと台所へ向かった。

公家屋敷の様な自宅の長い廊下を歩いていると、普段は瞑想を行なう専用の部屋から光が漏れていることに気づき、誰か起きているのか? と思い、瞑想を行なう時に使用する専用の部屋の近くまで来ると話し声が聞こえた。

 声からして、俺の今世の母と祖母だった。


「やはりミコトは素晴らしい、歴代の天乃家の中で最高の力を持っていますね」

「ええ、お婆様。それはわたくしも認めております。けれど……」

「分かっています。男性に対して強い嫌悪感を持っていることですね?」


 当り前だ、俺は男だ。身体は変わってもやはり魂は男なのだ。

 天乃家は特殊な家系だ。通常の退妖魔を倒すのであれば、一般的な退妖魔を倒す修行で十分だが、淫妖魔を倒すとなると家独特の修練方法がある。

 まあ、全力で拒否っているが。


「はい、それと淫妖魔との戦は消極的です。仮に戦っても全力で、本来の力を使わずに倒しております」

「淫妖魔は手を抜いて倒せる相手ではありません。ナメクジのように小さな淫妖魔にAランク退魔師が敗れたこともあります」

「ええ、かといって、無理を言えば」

「逃げ出すでしょうね。ですから、とっておきの道具を用意しました」


 二人の話を覗き聞いて、猛烈に嫌な予感がした。

 いっそ、今この瞬間にも俺の最大攻撃技をこの二人に叩き込んだ方が良いのではないか? と本気で検討し始めた直後。

 祖母は自分の隣に置いておいた無駄に高級な大玉スイカが入りそうな桐の箱から、何かを取り出した。


「性的に振動して、快楽で動けなくする貞操帯です」

「死ねぇ!! 腐れババアァァァァッッッッッ!!!!」


 俺は全力で祖母に気を練って作りあげたエネルギーの砲撃をババアの顔面に叩き込んだ。

 この後、天乃家現当主である母。天野桜花。天野家前当主であり祖母の天乃沙耶の二人を相手に激戦を繰り広げ、俺は勝利し。

 高校入学したら、一人暮らしする権利を勝ち取った。


 負けていれば、中学卒業と同時に結婚させられていたかもしれない。

 というのも、天乃家は妖魔や悪魔を退治する名門の退魔師の家系だ。

 有名な陰陽師の安部清明。蘆屋道満。とほぼ同時期に活躍していた。

 でも、一族の数はあまり多くない。家の特殊性から外から嫁を貰うことは難しく、特殊な才能が必要だ。


 だから、沢山一族を沢山増やす為にも、割と若くして結婚して子供を作る。

 特殊性? 一言で言えば、エロだ。


 妖魔にもいくつか種類があるんだけれど。

 天乃家が専門としているのは、淫妖魔なんだ。

 いや、普通の妖魔も倒すんだけれど。転生した世界の日本人も、シャイというか。

 性的なことに過敏に反応するのは前世と一緒で、そういうのは表沙汰にし辛いんだよ。特に淫妖魔絡みの事件は。

だから、家が請け負うことが多い。


 で、問題なのは淫妖魔の退治の仕方。


 天乃家の対淫妖魔の倒し方は、まず敵に突撃。その後、相手と気持ちを高めます。高めます。高めます。一気に解放。


 うん、察しの良い人はおわかりだろう。オブラートに包んだぞ!


 初めてこれを聞いた時、俺は叫びたかった。


アホか!! 前世の某対魔な忍びゲームよりも酷いよ!


 淫妖魔を見つけたら、突撃して、アンアンして、気を解放して吹き飛ばして勝てば良いよ! 勝てばな!!


 負けたら、そのまま肉○○エンドですよ。

 馬鹿か!! いや、それで一族の連中何食わぬ顔で淫妖魔に勝ってくるから、凄いけどさ。


 勝率? 九割だよ。いや、この前行方不明の一族が帰ってきたから、実質は十割か。


たまーに数十年ほど行方不明だった一族の女が当時の若々しいままで帰ってくる時もある。


 親族に「遅かったね。何していたの?」 って、聞かれて「旦那が死んだから戻って来た」っておい、アンタ結婚してなかったか? というか、旦那って……。


 それに何食わぬ顔で、お帰りと言える一族の神経が凄いよ。

その旦那も笑顔で出迎えていたし。

 とんでもないメンタルだなぁ!


 俺? 貞操は守っているよ。

 というか、保有している気の量。外国では魔力と言うけれど。

 チートじゃないかってほどある。だから、強力な淫妖魔でも楽に倒せる。


 そ、それと何回かハプニングが起こって、うっかり感情を爆発させて、気を暴走させたことがある。それが原因で一族からすごい期待されている。


 本当に勘弁してほしい。男の意識が残っているのに、今の俺の容姿は和服が似合う、クール系大和撫子だ。

黒髪ロングヘア美少女だよ? 美脚で黒タイツが似合うから、思わずデジカメでフェチな写真撮りまくってしまったよ。



 ま、そういうわけで、この物語は。

 前世の記憶があやふやなフリーター(男)が、現代TS転生したら、退魔師の家系(担当は淫妖魔中心)に生まれて退魔師になってしまい。どうにか貞操を守る物語だ。



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