その3 再会
玄関をあけると美鈴さんが待っていた。
美鈴さん一人だ。
父に向かって何か言っている様子。
僕にはその言葉はわからない。
でも父にはわかるようだ。
「ああ、ただいま。そうだな、もう三十年以上か」
とか
「そこまでは意図していなかった」
とか何か会話を始めた。
結構あれこれ、一分くらいは話しただろうか。
父は僕の方を見て頷いた。
「大体の状況は聞いた。朝御飯を作ってあるそうだ。行こう」
靴を脱ぎ、美鈴さんの後についてキッチンとリビング代用八畳間の方へ。
リビングには亜理寿さん、真理枝さん、摩耶先輩、小坂井先輩が揃っていた。
父は一瞬足を止め、ちょっと驚いた顔をした後、皆に軽く頭を下げる。
「どうも初めまして。文明の父の進です。文明がお世話になっています」
「こちらこそ色々お世話になっています。ここの部屋や土地等も貸して貰って、色々楽しませていただいています」
これは真理枝さんだ。
「いや、ここが賑やかになるのは私にとっても美鈴さんにとってもありがたい事だ。しかしこんな綺麗なお嬢さんばかりだとは思わなかった。失礼だけれどごつい男ばかりだと思っていた。理系の大学だし文明の性格からして。
しかも初生さんに美亜ちゃんまで揃っているとは思わなかった。玄関には弁蔵君もいたし」
はついさん?
みあちゃん?
弁蔵君?
「初生さんはそこの西洋人形、美亜ちゃんはそこの日本人形です。弁蔵君は玄関に置いてある古い唐傘さん」
亜理寿さんが教えてくれる。
「父さん、話せるの?」
そう言えば美鈴さんとも話していたし。
父はにやりとする。
「ここで育ったんだ。当然だろ」
そうなのか。
「なにせ私が小さい頃は同年代の遊び相手がいなかったからな。美鈴さんの他は今言った面子が話し相手みたいなものだ。大人は仕事だのしているからな」
父の一人称が私になっている。
これは他の人がいるからだろうか。
しかし父が妖怪と仲良かったというのは意外だった。
普段は機械好きのもろ理系という感じなのに。
「それでは朝御飯にしましょうか。冷めると何ですし。あとは話ながら色々と」
真理枝さんがそう声をかけてくれたので、とりあえず朝食開始。
「いただきます」
という事で食べ始める。
「このミニトマトや茄子、それにこのトビマイタケにキクラゲにタモギタケはここで採ったものかな」
「他にこのジャガイモも前の畑で採ったものです。耕運機とかも使わせていただきました」
これは小坂井先輩。
先輩も言葉遣いが丁寧になっている。
「美味しいな。でも大学通いながら畑は色々大変だっただろう」
「小坂井先輩は医学部だから普通以上に大変だよ。週末は泊まり込んで畑の世話をしていた感じだし」
「ずっとやってみたかったんです。でもここまで機会が無くて」




