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プラスA  作者: 於田縫紀
第15話 遠い日の約束

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その2 この時に備えて

「だから文明が医理大へ行くと聞いた時、チャンスかもしれないと思った。ひょっとしたら文明が僕の代わりにあの家を賑やかにしてくれるかもしれない、そう思った。

 ただ文明には文明の人生があって文明の考え方がある。だから無理強いをする訳にはいかない。


 だから文明にはこのこと一切を話さない事にした。その代わり環境整備は万全にしておいた。家の修理や機械類の再点検。スクーターや免許、車購入の約束等文明があの家から通うようにする為の色々な小細工。まあ事情を知らないお母さんには無駄遣いするなと怒られてしまったけれどな。


 そうして後は何も言わず待つ事にした。文明から『倉庫の機械類を使っていいか』と聞かれた時には思わず色々聞きたくなったけれどな。あえて聞かなかった。文明に僕の夢や約束を負わせる訳にはいかないからな。

 ただ正直、どうにも我慢が出来なくなった。それでこうやって向こうへ行く車に同乗している訳だ。初心者の運転だから不安だという理由をつけてな。

 それでどうだ。向こうの家はどんな感じだ」


 色々理解した。

 何故僕をあの家から通わせたかも。

 何故機械類が使って下さい状態になっていたかも。

 美鈴さんが言っていた『約束』も。

 なら父にはこの答で応えるのが正しいだろう。

 実際きっとそうなのだから。

「賑やかですよ。多分父さんが思っている以上に」


「それは楽しみだな」

 そう言った後に小さく付け加える。

「ただ実はちょっと不安なんだ。待たせすぎと美鈴さんに怒られないかとか、どんな顔をしてあえばいいんだろうとかな」


 何かその台詞が僕の知っている父らしくなくてちょっと笑えた。

「大丈夫ですよ。美鈴さんは時の感覚がきっと一般人と違いますし」

「それはそうだけれどな」


 何が父らしくないか何となく僕は気づいた。

 僕に今父らしくないと見えているのは多分、父の若かった頃の面なのだ。

 僕が知らないまだ若かった頃の父。

 何せさっきの話は今の僕よりまだまだ若かった頃の父の話だから。

 そう思ってふと気づく。


「ひょっとして父さん、美鈴さんが初恋の人だったとか」

「母さんには言うなよ」


 さらっと父は言って受け流す。

 今の台詞からしてきっとそうなんだろうな。

 車は高速道路を北へ北へと進んでいく。


 ◇◇◇


 途中運転を何度か交代。

 朝七時過ぎに高速を降りて二十分ちょっと。

 車は家の近くのトンネルを抜けた。

 なお家の方には美鈴さん亜理寿さん真理枝さんにSNS等で連絡してある。

 特に何もしなくていいと言う事、大体の事情は父も知っているという事。

 そんな感じだ。


「この辺も昔は田んぼだったんだけれどな。バス停も無くなったな」

 そんな事を言いながら父は窓の外を見ている。

 なお運転しているのは僕だ。

 県道から曲がって家の前の道へ。


「畑を作り直したんだな」

 父はすぐ気づいたようだ。


「それだけじゃない。他にも色々やってるよ」

「どんな感じに」

「それは後のお楽しみという処かな」

 美智流先輩達がやっていたように一度家の前を通り過ぎてバックで入る。

 この方が車を入れやすい。

 コンクリ舗装ぎりぎりまで後退させて車を停めた。


「庭も綺麗になっている。あと奥に何か出来ているな」

「その辺はあとで説明するから」

 車を降りて家の中へ。

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