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プラスA  作者: 於田縫紀
第13話 変態狸の犯行

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その5 そして僕らは途方に暮れる

 気絶していた筈の狸がすすっと動いた。

 あっという間に姿を消す。


「なんだと!」

「どういう事ですか」

 一瞬の事で誰も対応できなかった。


 そして。

「ふっふっふっふっふっ」

 どこからか声がする。


「嵐山先輩の胸の感触をもう少し味わっていたかったが仕方無い。今宵は負けを認め、ここで引き上げるとしよう」

 間違いなく抜田先輩の声だ。


「まさか、あの威圧が効かなかったのか!」

 イライザ先輩の台詞にふっ、という鼻息と共に返答がくる。


「僕にとってもあの威圧は強烈だ。まともに受けたら半日は動けなかっただろう。だから威圧が来るとわかった瞬間、化狸ならではの伝統技を使わせて貰った。秘技・狸寝入りという奴だ」


「寝たふりで誤魔化せるほど私の威圧は弱くありません」


「狸寝入りは寝たふりではない。しばらくは本当の仮死状態になるのだ。当然意識も無い。意識が無ければ強力な威圧も効果は無いだろう。

 気絶からさめた後はついでだから嵐山先輩の胸の感触を味あわせて貰った。見かけより胸があるのが良くわかったな。前も思ったのだが先輩は着痩せするタイプの様だ。次回狙う獲物は是非先輩のブラでお願いしたい」


 何というか……

 抜田先輩、色々な意味で酷すぎて凄すぎる。


「それでは今宵はこれで失礼しよう。夜更かしは美容に悪いと聞くからね。それでは皆様方、アデュー」

「貴様、これで只ですむと思うなよ!」

「浜の真砂は尽きるとも、世に変態の種は尽きまじ。さらば!」


 声と供にすっと気配が消えた。

 誰ももう追おうとしない。

 無駄だとわかっているのだろう。


 真理枝さんが大きな大きなため息をついた。

「すみません。うちの里の変態がご迷惑をかけまして」

「いえ、こっちの修行不足です。ここまでとは思いませんでした」


「今度は確実な捕獲方法も考えないとね」

 そう言って全員で更にため息をつく。

 場の空気が重い。


「でもまあ、得物が盗まれなかったからいいじゃないですか。抜田先輩も目的は達成できなかった事ですし」

 ちょっとでも場の空気を和らげようと僕はそう口にする。


「そうだな。確かに奴は目的を達成できなかった。攻めてそれを祝うとしよう」

「そうですね」

 美智流先輩が小さい箱を座卓上に出す。

「でも念の為、中身が盗まれなかったか確認してみましょう」


 あ、これはアレだな。

 僕はとっさに首を九十度左にして箱の中を見ないようにする。

 しかし。


「えーっ」

「何なんだ!」


 それらの声に思わず顔を元に戻してしまった。

 視界に入ったのは黒レースのパンツともうひとつ、ヒモパンにしか見えないもの。

 更に白いメモ用紙が折りたたんで入っていた模様。

 真理枝さんがそのメモ用紙を広げる。


「Tバックなのにフリル付きでカバー面積が多いのは潔くない。Tバックというからには布面積も最小であるべきだ。参考までにこれを贈る。だって!」


 はああ……

 何時の間にと言うかもうそう考える事すら疲労を感じる。

 あまりの事にしばらくは誰も動けなかった。

 何というか、完敗だ。

 抜田先輩、恐るべし。

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