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プラスA  作者: 於田縫紀
第1話 住環境の整備
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その1 眠れない夜

 そんな不安な始まりで迎えたにもかかわらず、暫く僕の大学生活は平穏だった。

 一般教養や語学の授業は無事希望通りに取れたし、自動車学校も通い始めた。


 ここは冬は雪が降るので自転車やバイクは通行困難になる。

 僕の住んでいる家は学校から六キロ離れているので歩きオンリーだとかなり辛い。

 今はスクーターで通っているが冬までには免許を取って車を購入する予定だ。

 この大学に受かった際は免許代も中古車代も出してくれると言っていたし。

 父の実家に住むことが条件だけれども。


 そんな訳で朝から夜まで学校だの自動車学校だのでバタバタしている。

 彼女ともあれ以降話をする機会は無かった。

 学校内で時々見かけるし、同じ授業も三コマあるのだけれど。

 相変わらず大学では夕暮れを過ぎると百鬼夜行が行進していたりもする。

 でも慣れてしまえばそれもまた風景だ。


 そんな訳で今日も教習所経由で夜九時過ぎにくたくたになって帰宅。

 DK続きの八畳間に荷物を置いて、買ってきたコンビニ弁当を食べ始める。

 ちなみにこの家、五DKあるが使っているのはこの八畳間とDK八畳、あとはトイレ洗面所風呂玄関のみ。

 残り四部屋は放置したままだ。

 ちょっと広すぎるなと思うが昔はもっと広かったらしい。

 父がこの家を出た後半分の大きさに減築したそうだ。

 それでも一人暮らしには広すぎるけれど。


 更にこの家、古いせいでがたつきや隙間風がかなり酷い。

 最初は例の件もあり音が鳴るたびすわ妖怪かと毎回怯えていた。

 でももう最近はすっかり慣れてしまった。

 何せラップ音レベルのきしみ音やがたつき音が一晩で数回はある。

 本物の妖怪が鳴らしていても気づかないんじゃないか。

 そういうレベルだ。


 そんな感じの中風呂に入り寝る準備。

 家のあちこちかがガタピシ音が聞こえるが気にしてはいけない。

 今日は風が強いのだろう。

 古い家はとにかく音がするものなのだ。


 部屋の隅に布団を広げて横になり、リモコンで電気を消す。

 ちなみに僕は全部消灯派。

 中途半端に色々見えると何か想像してしまいそうだから。

 全部消すと窓の障子越しの外の光だけになる。

 部屋の中が見える程は明るくない。

 そんな環境で心おきなくぐっすり眠るのが毎日だった。


 でも何故か今日は眠れない。

 羊が一匹、羊が二匹……

 いや羊は想像しにくい。素数を数えよう。

 2、3、5、7、11……

 97、101、103もセーフ、105は駄目で107は大丈夫か。


 ガサッ。

 ふと何か物音がしたような気がした。

 何処かの襖がずれたかな。


 ギシ、ギシ。

 廊下の床がきしむような音がした。

 立て付け悪いよな本当にこの家は。

 何か気配がするとか思ってはいけない。

 こういうのは大体人間の思い込みなのだ。


 今日は風が強くて家がきしんでいる。

 でなければ野ねずみでも悪さをしているのだろう。

 いや、きっと眠れないという夢の中にいるのだ僕は。

 だから廊下のきしみ音が足音だと思ってはいけない。

 だんだん近づいてくるなんて思い込みはもっと危険だ。


 これは夢だ、夢なのだ。

 だから今心なしか廊下に出る引き戸が動いたような気がするのも夢。

 暗くてはっきり見えないからそんなのわかるわけがない。

 そして隙間から感じる視線。

 うん、気のせい気のせい。

 もしくはこれは夢。

 金縛りじゃなくて夢だから身体が動かないだけだ。


 そう、全部夢で気のせいなんだ。

 確かそういう論文も出ていたような気がする。

 だから……

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